軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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こういう感覚を味わわせてくれた魔法使いは、今までにもいた。ジザがそうであり、ツボルトの筆頭魔法使いとかいう女性がそうだった。

レカンはもともと、剣の腕が立つ人間は、みただけである程度わかる。歩き方や気配、周りへの反応などをみれば、その人間の強さが推定できる。

魔法の訓練を積み、魔力に対する感覚を磨いてからは、魔法使いの練達の度合いもある程度わかるようになった。

この老人の魔力量は多くはないが、身にまとう魔力は研ぎ澄まされている。

(テルミン老師に似ているな)

体型はまるでちがう。テルミンはやせぎすで身長が高かったが、目の前の男は、身長が低く、肉付きがいい。骨格はしっかりしている。盾戦士といわれたら信じるかもしれない。だが、それでいて、どこか似たところがある。

「なんじゃあ。大勢で押しかけよって」

「だから客だって、おやじさん」

「ふんっ」

悪態をつきながら、店主の視線はレカンに向けられている。何かを感じ取っているのだろう。

「この大男はレカン。腕利きの剣士だが、おっそろしく威力の高い〈炎槍〉の使い手でもある」

「魔法剣士だとう?」

店主の顔が憎々しげにゆがんだ。魔法剣士を快く思っていないのかもしれない。

「魔法の威力が上がる杖を出してみてくれないかな」

「ふんっ。ちょっと待ってろ」

店主が奥に入った。

レカンはカウンターをみていた。カウンターそのものに何かの魔法がかけてある。カウンターの後ろ側の、客側から肉眼ではみえない位置に、何本もの杖が置いてあり、そのそれぞれにも何かの魔法がかけてある。

それがどういう効果を持つ魔法であるのかレカンにはわからないが、その張り巡らせかたには感心した。ゆがみがなく、すっきりとしていて美しい。店主の魔法の腕はなかなかのものだ。

(どんな杖が出てくるか楽しみになってきたな)

それほど待つこともなく、店主が出てきた。

「ほらよ。とりあえず、こんなもんだ」

三本の杖をカウンターの上に置いた。いずれも拳ほどの大きさの頭部と、おとなの腕ほどの長さを持つ中型の杖だ。魔石が三個埋め込まれている。

「三本とも火魔法の威力が上がる杖だ。一番右は威力重視、まん中が速度重視、左側は精度重視だ」

「なに? 火魔法の威力だけが上がるのか?」

「トルーダ。このでかぶつ、何をぬかしてるんだ?」

「レカン。火属性の魔石を使ってるんだよ」

「火属性の魔石というのは何だ?」

「驚いたなあ。まだ出くわしたことがなかったのか? ここの迷宮の魔獣からは属性効果を持つ魔石が出るんだよ。火系の魔法の威力を高めたり、電撃系の魔法の威力を高めたり、移動系の魔法の効果を高めたりとか」

「そんなものがあるのか。はじめて聞いた」

「まあ属性魔石はそのままじゃ、ただの魔石としてしか使えないからな。この町の職人が、杖や指輪や首飾りにして売ったものは、それなりにいろんなところに出回ってると思うよ。あと、魔法の効果を弱める魔石を埋め込んだ防具とかね」

「ほう」

そのことについては、またあとで詳しく聞くとして、まずは目の前の杖だ。レカンは右端の杖を手に取った。威力重視と説明された杖だ。

奇妙な感じがした。杖の周りを何かの魔力の膜のようなものが取り巻いているのは気づいていたが、手に取ってみると、その膜がレカンを拒否しているように感じる。

「これは試し撃ちはできるのか」

「ばか言うな。杖の試し撃ちができる店なんかねえ。直営店以外にはな。魔力を通してみたいんなら封印を解いてやる」

「頼む」

「その杖をカウンターに置け」

レカンが中杖をカウンターに置くと、店主は懐から細杖を取り出し、杖先を中杖に向けて魔力を練った。

「ジラード」

すると膜が消えた。

「今の呪文は何だ?」

「レカン!」

トルーダが鋭い声を発したので、レカンはトルーダのほうをみた。トルーダは首を横に振って言った。

「だめだ。その質問はだめだ」

何かこの町の掟のようなものにふれたようだ。

「そうだったか。すまない」

店主はむすっとしたまま何も言わなかった。

封印の解けた中杖をレカンは持ち上げた。手になじむ。というより、魔力が杖になじむ。

(そうか。先ほどの封印は、魔力を遮断していたのか)

「レカン。一応注意しておく。杖に魔力を流し込むときは、いったん杖を置いて、いちいち店主に了解を取るんだ。そうすれば、魔力を流し込むのは、大抵の場合許される。絶対に呪文を唱えるんじゃないぞ。準備詠唱も発動呪文もだ。というより、封印の解けた杖を持ったまま何かしゃべるのはルール違反だ。わかったな」

レカンはうなずいて、一度杖をカウンターに置いた。

「店主。この杖に魔力を流し込んでみていいか」

「ああ。魔力を流し込んでみなきゃ、合う杖かどうかわからんからな」

レカンは中杖を持ち上げて、魔力を流し込んだ。

杖のどこにどういう順路で魔力が入るか、あらかじめ設定されていたようで、魔力はするすると杖に入っていった。だが反応が少しにぶい。そしてすぐに魔力が入りにくくなった。レカンはいぶかしげに杖とそのなかの魔力をみつめ、さらに圧力を上げて魔力をそそごうとした。

細杖をかざしたままそのようすをみていた店主が制止の声を上げた。

「ま、待てっ。そこまでだ」