軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「すまん! ほんとにすまん! この通りだ」

警備隊詰め所に引っ張られたレカンは、前と同じ部屋に案内された。

そしてダグは、椅子に座るなり、机越しに頭を下げたのだ。

「謝られるようなことをされた記憶がない」

「いや! あんたを不審者扱いした。配慮の足りないやつだと決めつけた。配慮が足りないのはわしのほうだった。すまん!」

「ふむ。よくわからんが、あんたがそう思う理由を聞かせてくれ」

「最初のきっかけは、ブラバじいさんだった。魔法使いで、むかしはそれなりに活躍した人なんだが、最近は孫に小遣いをやるために時々潜るぐらいだ。そのブラバじいさんが、あんたをみかけたんだ。第三階層からの降り口で。あんた、倒した魔獣たちに、そして迷宮に、手向けの礼をしていたそうだな。ブラバじいさんが、しみじみ言っていた。あのお人はただ者ではないとな」

そう言われてみると、第三階層から降りるとき、老人をみかけたような気もする。

「それに、あんたが迷宮に入ってしばらくして、噂が一気に広がった。浅い階層に魔石の残った魔獣の死骸が山ほど転がってるってね。それはほんとだった。おかげで数日間、上層は、すごい人出だった」

前回来たとき、レカンは早く深い層に潜りたかった。浅い階層の魔石など興味がなかったし、取り出すだけ面倒だから、死骸をそのままにして行ったのだ。

「そして、ジョンとソリスから聞いたよ。ああ、名前を言ってもわからんか。若い剣士の男と魔法使いの女だ。ジョンの父親は戦争で功績をあげた男で、わしも面倒をみてもらったことがある。ジョンが言ってたよ。黒衣の魔王が来てくれなかったら、二人とも死んでいたところだったって。しかもあんた、ソリスの顔の傷を治すために、赤ポーションを置いていってくれたそうだな。それだけじゃない。迷宮の心得をジョンに教えてくれたんだな。あいつはほんとに感謝してたぜ」

「そんなことを教えた覚えはない。人ちがいだろう」

「人ちがいだって? はっはっはっはっ。そうだろうとも。あんたみたいなやつがもう一人いるならの話だけどな。はあっはっはっはっ」

何がおかしいのか、ダグ隊長は大声で笑い、机から身を乗り出してレカンの肩をばんばんと音を立ててたたいた。

「ジョンは心から反省してた。いくら高くてもポーションは持っておかなくちゃならない。その当然のことを守らなかったために、自分たち二人は死ぬところだったし、そうでなくてもソリスは一生残る傷を負うところだったってな。もちろん偶然大型個体に出遭うなんてことがなければ問題はなかった。だが迷宮ってのは、いつ何が起きてもおかしくない場所なんだ。そのことをあんたは、懇々と教えてやったんだそうだな」

どこかに行きちがいがあるのはまちがいない。だが、誤解を解こうとすれば時間がかかる。レカンは早く迷宮に入りたかった。

「よかったな。じゃあ、オレは行くぞ」

「あ、ちょっと待ってくれ。あんたが来たことを領主館に知らせたんだ。もうすぐ誰か騎士が来るから」

「領主にも騎士にも用はない」

「そう言うなよ。あんたがこの前、中層と下層の迷宮品をごっそり売ってくれたことを、お偉いさんが聞いてな。ひと言礼を言いたいというんだよ」

「そんな礼はいらん」

そう言いながらレカンは立ち上がったが、ふと気になっていたことを思い出した。

「ダグ」

「おお、何だい」

「ポーションの標準価格とやらが、ずいぶん高い気がした。あれでは買える者が限られてしまうんじゃないか。それと、今あんたが言ったことからすると、中層以降の品は、あまり出回らないのか?」

ダグ隊長は苦しそうな顔をした。

「ほんとうは農民や職人や、町に住む普通の人が買えるような金額に落ち着くといいんだけどなあ。そりゃ、無理だ」

「なぜだ」

「冒険者が買うからさ。迷宮探索にはポーションは不可欠だ。しかも冒険者は稼ぎがいい。だから、大金払ってでもポーションを買って迷宮に潜る。そしてお宝をつかんで金を得る。その金でポーションを買い、装備を調える。中層以上から出る迷宮品なんて、金のある冒険者が取り合いさ。そのお余りが競りに回って、貴族や金持ちのものになる。ポーションの値が下がったら、それこそ冒険者が根こそぎにしちまう。標準価格が高いから、売ろうと考える冒険者もいて、多少は冒険者以外も買えるってわけだ」

言われてみれば、レカン自身、よい剣やよい防具は、どんなに金を積んでも手に入れた。その果てに今の装備がある。

「そういえば、ヴォーカの町に商人の知り合いがいるが、迷宮品はあまり回ってこないような口ぶりだった」

「ヴォーカの町には売らんさ。あんたもいきさつを知って……いや、知らないのか。あのな、ここに迷宮が発見され、発見者から王家が権利を買い取ったとき、最初に迷宮管理者にと声がかかったのは、ヴォーカ領主クリムス・ウルバン様の父君なんだ。だが断った。それでガイオニス・ドーガ様の父君が迷宮管理者に任ぜられ、伯爵に叙せられた。それから三十年以上がたち、両方の領主は代替わりしたが、二つの町の仲の悪さは変わらない」

「そうだったのか」

「そうさ。迷宮管理者が王家に払う礼金の年額も、伯爵が国庫に納める税額も、目の玉が飛び出るような金額だ。伯爵は、どうしても金を稼がなくちゃならん。ところが二十階層まで潜れるようになった冒険者は、この町を出てっちまう」

「隊長!」

兵士が飛び込んできて、ダグ隊長に何事かを伝えた。

「第一応接室にお通ししたな? よし」

「客が来たのか。オレは迷宮に行く」

「ま、待ってくれ。わしと一緒に来てくれ。領主のご次男、ヘンジット様がおみえだ。あんたに会いたいと言ってる。やれやれ。まさかご次男が直接来るとはなあ。配下の騎士か、いっそご長男のほうだったらよかったんだが」