軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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出口から出た場所は岩で覆われた小さな部屋で、すでにほかの四人はそこにいた。

ここまで来れば地上階層へは一人でも転移することができる。全部の穴が踏破されていれば、次の階層に転移することもできる。

「遅かったな」

相変わらずウイーがレカンに向ける視線は冷たく鋭い。

「ああ、待たせた」

「ユリウスは、怪我などしなかったろうな」

「はいっ。大丈夫です、ウイーお姉さん」

「お姉さん、だと?」

「あっ、すいません。失礼でしたか」

「いやっ。失礼ではない。失礼であるものか。その呼び方で、何の問題もない」

「よければ次に進みたい」

「ほう。やる気はあるようだな。まあもっとも、浅い階層は剣の攻撃だけで戦えるし、剣士のほうが魔法使いより連戦ができるものだがな」

七人は手をつなぎ、二階層に転移した。

そのあと三階層に進み、四階層に進んだ。

魔獣は相変わらず灰色の〈魔狼〉が一頭出るだけだが、体の大きさは少しずつ大きくなっており、動作も少しずつ速くなっている。

ユリウスの動作は相変わらずぎこちない。狼の首筋を狙うというのは意外に難易度が高いようだ。

(不思議なことだな)

(ツボルト迷宮ではあれほど見事な動きをみせたのに)

だが考えてみると、ツボルト迷宮の深層では〈黒肌〉としか戦わせなかった。つまり武器を持って戦う人間型の魔獣としか戦っていない。そういう戦いならユリウスは存分に力を発揮するのだ。

狼型だとそうはいかない。牙でかみついてくる攻撃は間近で接すれば恐ろしい。その恐ろしい攻撃をかわして首に剣で斬り付けるのは、対人戦とはまたちがうむずかしさがあるのだ。

レカン自身の迷宮探索は、はじめのうちは動物型との戦闘が圧倒的に多かった。昆虫型や植物型にも苦労した。人間や人間型の魔獣との戦いを覚えたのは、かなり大型の迷宮に潜るようになってからだ。だから狼型が戦いにくい相手だとは全然思っていない。

「〈回復〉」

「ありがとうございます、師匠」

「見事な勝利だった」

「ありがとうございます」

「特に、〈魔狼〉の右前足の攻撃を剣で払って首筋に斬り付けたのは見事だった」

「はいっ」

「だが首筋に斬り付けたとき、刃筋が通っていなかったぞ」

「あ」

「お前の父親は、どんな状況であっても、敵に斬り付けた刃筋は通っていた。オレのように力任せに剣をたたき付けるような戦い方をするならともかく、剣のわざで相手を斬ることを目指すなら、刃筋の意識を忘れるな」

剣筋が甘かったから一撃で相手を絶命させられず、反撃を受けてしまったのだ。

「は、はいっ」

「うん。爪で右頬を斬り裂かれたのに、ひるみもせず敵にとどめをさしたのは見事だった」

「はい」

ジザという老魔法使いに〈回復〉をみせてしまったが、これは当初から予定に入れていたことだ。この程度の能力は知られてかまわない。

「弱い敵と戦うときも恐れを忘れるな。強い敵と戦うときも怯えるな」

「弱い敵にも恐れを忘れず、強い敵にもおびえない」

「そうだ」

「わかりました、師匠」

ジザはにこにこしながら二人をみている。

そのあとほかのメンバーと合流して昼食を取ることになった。

レカンが〈収納〉から薪を取り出して〈着火〉で火をつけるとウイーと魔法使いたちはあきれたが、ぱちぱちと火が燃え始めると、たき火を取り囲んですわった。

驚いたことに、ウイーも魔法使いたちも〈自在箱〉を持っていた。

だが、あちらはあちらで驚いた。

「レカン殿もユリウスも〈自在箱〉を持っていたとはな。これはパルシモでも、魔法騎士か魔法研究所の上級職員しか持っていないのだ。よそには数えるほどしか売っていないはずなのだが。いや、これは余計なことだったな」

レカンが求婚決闘で得た〈自在箱〉はエダに譲ったのだが、エダはユリウスの迷宮行きに必要だろうと、ユリウスに〈自在箱〉を貸してくれたのだ。

レカンのほうは、〈自在箱〉を持っているわけではない。レカンが胸元に手を突っ込んでいろんなものを取り出すのをみて、ウイーは勝手に〈自在箱〉を持っているのだと思い込んでいるのだ。

「ユリウス。この煮物を食べないか」

「はい。ウイーお姉さん」

「ユリウス君。この果物もおいしいよ」

「ありがとうございます、ミールお姉さん」

「このお菓子こそ食べるべき」

「フアンお姉さんが食べてください」

「団子、甘いぞ」

「キム姉さんの好きな物をいただけません」

「スープ温まったから、よそってあげるね」

「ありがとうございます、ミールお姉さん。あ、師匠の分は残しておいてください」

鍋を取り出してスープを温めているのはレカンなのだから、勝手につぐのは余計なお世話なのだが、女たちはみんなユリウスの面倒をみたがった。

「それにしても、迷宮のなかでたき火をしてスープを温めるとは。レカン殿は変わっているな」

「そうか。オレのいたところでは、迷宮でだろうが森でだろうが、野営のときはたき火をするのが普通だったがな」

「それは迷宮内で薪の材料が拾える迷宮の場合だろう。うん? ユリウス、血が」

「えっ」

「なにっ」

「なんてこと」

先ほどの戦闘で頬に傷を受けたとき、血が肩から胸にかけて散った。それにウイーは気がついたのだ。

「あ。大丈夫です。かすり傷でしたから」

「どこを。どこを怪我したのだ」

「右頬です」

「みせてみなさい。傷は残っていない……か。ちゃんと赤ポーションは準備していたんだな。あ、ここにも、ここにも血が」

「それは魔獣の血です。返り血ですよ」

「レカン殿。ユリウスも戦わせているのだな」

「もちろんだ。というか、今のところオレは戦っていない」

「なにい」

ウイーが眉にしわを寄せてレカンをにらんだ。ほかの女魔法使いたちも厳しい視線を浴びせてくる。

「レカン殿。よければこれからは私がユリウスに同行しよう。貴殿はこの程度の階層なら一人で探索できるのではないか。おばば様もついていてくださるしな」

「断る」

「なぜ断る」

「ユリウスの修業をみるのもオレの目的の一つだ。それをあんたに代わってもらおうとは思わん」

「だが」

「ウイー」

ずっと黙って食事をしていたジザが、女魔法騎士の名を呼んだ。ウイーは物言いたげにジザの顔をみたが、大きく息を吐いてレカンに謝罪した。

「失礼した、レカン殿。出過ぎた申し出だった」

「ああ」