軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌日は十九階層まで進んだ。十五階層で一度ユリウスに戦わせたが、まだこのあたりの階層ではまともな戦いにはならなかった。

エダはそのほかの戦いを全部一人で引き受けた。〈浄化〉一発で相手を消し去るのを戦いと呼んでよければの話だが。そのうえでエダはレカンとユリウスに〈浄化〉をかけてくれた。

「お前、すごいな」

「えへへ」

「すごいです、エダ先輩」

「ユリウス君。先輩じゃないよ、お姉さん、だよ」

「はいっ、エダ姉さん」

「かわいいっ」

エダはユリウスを抱きしめた。身長からいえば、わずかにエダが高くはあるが、ほとんど同じだ。だがまとう雰囲気は、なぜかエダがだいぶ年上にみえる。

「いいかげん放してやれ」

次の日は二十九階層まで進んだ。やはりユリウスにとっては物足りない敵だ。エダには魔力回復薬を渡した。エダの〈浄化〉発動は異様に速く、三体の敵をまたたくまに倒してしまう。

「狩りをしながらの野営のたき火は格別だね、レカン」

「ああ」

狩りというより蹂躙なのだが、もう少し下に下りれば手応えが出るだろう。

「師匠はすごいです。エダ姉さんもすごいです」

「えへへ。でも、レカン」

「うん?」

「ほかのパーティーは夜になると帰ってない?」

「気にするな」

次の日は三十九階層まで進んだ。三十階層台では、エダが二体を倒し、レカンとユリウスが一体ずつを倒した。恩寵品は出ていない。青ポーションはエダに渡し、赤ポーションはユリウスに渡し、魔石はレカンのものとしている。

〈浄化〉持ちがいると、この迷宮の攻略は嘘のように簡単だ。なにしろ、ごく小さな〈浄化〉でも、足止めどころか完全に相手を消滅させてしまう。エダには〈赤肌〉を優先的に倒すよう言ってある。

レカンは〈ラスクの剣〉を使っている。前回この迷宮に来たときと比べ、切れ味がはるかに高い。つまりレカンの攻撃力が上がっているのだ。

この日は少し早めに攻略を終え、空き部屋でユリウスに稽古をつけた。

ワズロフ家での立ち合いが嘘のように、ユリウスは粘り強い攻撃をみせた。

(ほう)

(体力がちょっと上がっただけで)

(まるで別人のような剣さばきだな)

(もともと技術はあったんだが)

やはり迷宮に来て正解だった。これで少し本格的な稽古をつけてやることができる。

(もう迷宮を出るか?)

(いや、ここで探索を終えたのではエダが伸びないな)

(もう少し潜ろう)

レカンはこの迷宮でユリウスを危険にさらすつもりはなかった。

無理に深い階層に潜る必要はないのである。

「師匠、ありがとうございました」

「ああ」

「剣が軽いです」

「そのようだな」

「今までしようと思ってできなかったことが、簡単にできるようになりました」

「そうだな。それは迷宮探索によって得られた力だ」

「はい」

「だが、勘違いするなよ」

「はい?」

「迷宮で深い層に潜れば、体力の底上げはできる。しかしそれにみあうだけわざを磨かなければ、力に頼った剣になる。お前の父の剣は、そういう剣ではない」

「はい! 心いたします!」

翌日は四十九階層まで進んだ。

レカンは二体を倒そうとしたのだが、エダが三体目を倒すほうが早かった。だから、五体の魔獣のうち、三体をエダが、レカンとユリウスが一体ずつを倒している。

一日二個、エダに魔力回復薬を渡すようになった。

翌朝起きて、ふと気になって魔力回復薬の残りを調べた。まだたくさんあることはある。だがそのときレカンは自分が大失敗をしたことに気づいた。

(しまった!)

(今年は年頭からツボルト迷宮にこもっていたから)

(魔力回復薬の原料を採取していない!)

魔力回復薬の主原料であるザハード苔は、年中採取可能だ。だが、副材料であるニチア草は一の月から三の月、シアリギの若芽は四の月、ターゴ草は九の月から十の月でないと採れない。今はすでに八の月だ。ということは、今年はもう魔力回復薬は作れないのだ。

体力回復薬の主原料であるキュミス草の採取時期も過ぎてしまったが、今のレカンには〈回復〉があるから、これはそう問題ではない。使っていないからたくさん残ってもいる。

だが、魔力回復薬がないのは問題だ。レカンは戦いのときには魔石から直接魔力を吸うこともできるが、小刻みに魔力を消費し続けるようなときには、やはり魔力回復薬が重宝する。そしてエダと一緒に迷宮に潜るなら、魔力回復薬はかかせない。

(まあ過ぎてしまったことはしかたがない)

(エダにも一日一度か二度は青ポーションで魔力回復をしてもらおう)

大青ポーションもあまり数がないが、これはいずれ手に入るだろうし、多少は買うこともできる。

〈インテュアドロの首飾り〉をエダにかけさせるという方法もないではないが、エダには〈吸収〉が使えないため、首飾りをずっとかけたままにしておかなくてはならない。それは不都合だ。

(待てよ)

(錦嶺館の受付でなら)

(優先的に売ってくれたような気がする)

(地上に出たら寄ってみるか)

この日は五十九階層まで進んだ。

「レカン」

「うん? 何だ」

「一度外に出ようよ」

「どうしてだ」

「どうしてって。休憩のためだよ」

「エダ。この迷宮に入って何日目だ」

「え? ええっと。六日目」

「よく聞け、エダ」

「うん」

「人間は、集中したとき大きな力を発揮できるが、集中できる時間には限りがある。戦うのでも、薬を作るのでも、人に何かを教わるのでも、あまり小刻みにやると効率が悪いが、あまり長く続けすぎると集中力が保てない」

「ああ! それだよ、それ! だからいったん外に出て、休憩してまた入れば、もっと集中できるんじゃないかな」

「そこだ」

「どこ?」

「集中するにも訓練がいる。一日しか集中が保てないやつと、三日のあいだ集中が保てるやつでは、どちらが有利だと思う」

「三日のほうだよね」

「そうだ。つまり集中できる時間を長くするような訓練を積んでおく必要があるんだ」

「そうだったんだ」

「確かに六日というのは、普通の冒険者が迷宮に潜るには、一区切りにしていい長さだ。だがここは、もう少しだけ頑張ってみようじゃないか」

「うん! わかった」

隣でユリウスもうなずいている。

(こいつらが素直でよかった)

それに何といっても、エダもユリウスも若い。その肉体的な回復力も精神的な回復力も並外れて高い。そしてレカンはこの程度の階層では疲労しない。まだまだ迷宮を出る理由がなかった。