軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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その翌日である。

レカンはゆっくりと起きて、ぼんやりと考え事をした。

そんなレカンのようすをみて、アリオスはどこかに出かけていった。

レカンは工房エリアの盾専門店に行って、〈ウォルカンの盾〉の修復ができるか聞いてみたが、割れた盾をつなぐことは不可能ではないものの、恩寵は戻らないといわれた。

レカンは奇妙な脱力感を味わっていた。

あれほど熱心だった迷宮探索も、今はあまり気が乗らない。

(〈彗星斬り〉が手に入ったんだから)

(もう目的は達したといっていいしなあ)

この迷宮に来た最大の目的は、よい剣を手に入れることである。よそでは手に入らないような名剣を。

それからいえば、〈彗星斬り〉以上の剣が、おいそれとあるとは思えない。期待を上回る成果といえる。

だが、ここで中断するという気にもなれない。

そんな中途半端な気持ちを持て余していたのである。

この日は気持ちが定まらなかった。

夕刻になって騎士バイアド・レングラーがアリオスを訪ねてやってきた。

領主からアリオスの父に宛てた手紙をバイアドはアリオスに渡した。どんな内容なのかアリオスはレカンに説明しようとしなかったし、レカンも聞かなかった。

翌日は朝から体調がよかった。

気分も落ち着いてきた。

朝の食事を食べているうちに、急に元気が出てきた。

(そういえば)

(ゾルタンはどこまで潜ったんだろうか)

(この迷宮が〈眠らない迷宮〉と呼ばれているということは)

(迷宮の主を倒したわけではないということだ)

ゾルタンは、この迷宮を踏破したかったのだろうかと考えてみると、たぶん踏破したかったのだろうと思えた。迷宮の主と戦ってみたかったはずだと思えた。

(よし)

(ゾルタンへの手向けだ)

(迷宮の主の顔を拝んで)

(それからヴォーカに帰ろう)

「アリオス」

「はい」

「今日から迷宮に潜るぞ」

「はい」

二人は迷宮に向かった。

入り口の列に並ぼうとすると、レカンをみつけた冒険者たちに声をかけられた。

「お、蝙蝠魔人じゃないか」

「やあ、蝙蝠魔人!」

五日前、大食堂で宴会をしたとき、ブルスカが、蝙蝠魔人は実はレカンなんだろう、と聞いてきた。疲れと酔いで思考力が鈍っていたレカンは、ああ、と答えてしまった。その呼び名が、その場にいた冒険者たちにあっというまに広まってしまったというわけである。

「先に行ってくれ、蝙蝠魔人」

「おい! 蝙蝠魔人に前にいってもらうぞ! 道を空けろ」

「あとから来たやつを先に行かせるのか?」

「何言ってんだ、お前。蝙蝠魔人は第百二十一階層に到達した新しい英雄なんだぞ」

「な、何だって?」

「あの〈骸骨鬼ゾルタン〉を倒して秘宝を受け継いだって話だ」

「あれ? ゾルタンの弟子だと聞いたぞ」

「息子だって言ってたやつがいたなあ」

「なるほど。そういうことだったのか」

「いや、孫だろう」

「息子とか孫じゃないらしいが、かなり近しい関係らしい」

噂とは無責任なものだが、時々妙に真実を突いているのが不思議だ。

見張りの兵士までがレカンを特別扱いした。

「冒険者レカン。お前は鑑札をみせなくていい。入れ」

こうして、ありがたくはあるがうれしくはない扱いを受けて、レカンとアリオスは再び迷宮へと入ったのである。

二人は第百二十一階層に来た。

もうゾルタンの亡骸も装備も何も残っていなかった。

階段部屋以外の四つの部屋のうち、右手前の部屋は前回魔獣を倒した部屋だが、この部屋には魔獣がいない。ほかの三つには一体ずつ魔獣がいる。

試しにレカンは一番奥まで進み、階段部屋の侵入通路に入ってみた。

だが、しばらく待っても魔獣は湧かなかった。そして、部屋のなかに入ることができない。

「やっぱり、そういうことか」

「何のことですか?」

「たぶん、四つの部屋の魔獣を全部倒さないと、〈守護者〉は現れない。そもそも部屋に入れない」

「そうなんですか」

ある一定条件を満たさないと進めない迷宮が、もとの世界にもあった。だからレカンはすぐそうと気づくことができたのだ。

「戻るぞ」

「はい」

二人は左手前の部屋に向かった。

レカンは左手に〈ハルフォスの杖〉を持ち、魔力を練った。そして部屋のなかに飛び込んだ。

部屋の中央には大剣を持った〈鉄甲〉が立っている。

「〈障壁〉!」

対物理障壁を張った。十歩ほど前に歩いた。あとからアリオスが部屋に入ってくる。

「〈炎槍〉!」

右手から特大の〈炎槍〉を撃った。以前は〈障壁〉を維持したまま魔法攻撃をすることができなかった。しかし今なら、そしてこの〈ハルフォスの杖〉の力を借りればできるような気がしたのである。

魔獣が〈炎槍〉をかわそうとするが、完全にはかわしそこね、右肩に着弾して体勢が崩れる。

「〈炎槍〉! 〈炎槍〉! 〈炎槍〉! 〈炎槍〉!」

続けて撃った四発の〈炎槍〉はすべて命中し、四発目の攻撃で魔獣は死んだ。だが死体が消えない。

「うん? 剣は? 宝箱は?」

しばらく待ったが死体は死体のままだ。魔獣が持っていた剣は消えてしまった。

しかたがないので魔石を取ったが、これはこれで値打ちがある。ここらあたりの魔獣の魔石となると、ニーナエの女王蜘蛛の魔石に匹敵する大きさと魔力の強さを持っているからだ。

最近わかったのだが、魔力を吸った魔石に魔力を補充すると、二度三度なら問題ないのだが、段々魔力を受け付けなくなる。六度目になると、大ざっぱにいってもとの半分以下の魔力しか入らない。完全な状態で使えるのは、たぶん三度程度だ。

だから最も賢いのは、一度魔力を吸った魔石に魔力を補充したら売り払ってしまうことだ。ただしレカンは金には困っていない。だから魔力を受け付けにくくなったら捨てることにしている。

(それにしても)

(全然怖くなかったな)