軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レカンは満足していた。

実に有意義な取引だった。

今のレカンがまさに欲した情報を少年は与えてくれた。そして少年は、今まさに必要であったろう赤ポーションを得た。

お互いにとり、まことに好都合な出会いだったといえる。

それにしても長い階段である。長いだけではない。横幅も非常に広い。びっしり並べば二十人は並べるだろう。

それほど広い階段のあちこちに人がいる。地上から第一階層の、そして第一階層から地上への階段に比べればずっと少ないが、それにしても人が多い。

だからあまり速度が出せない。レカンとしては少しでも早く下の階に降りてゆきたいのだが。

到着した第三階層でレカンは驚きを感じた。

(魔力持ちが二十人以上いる)

先ほどポーションを与えた少女も魔力持ちだったが、それを含めて第一階層と第二階層では三人しか魔力持ちをみかけなかった。

隅々までを念入りに探索したわけではないから、みおとしがあるかもしれないが、そうちがわないはずである。

ところが、この階層には、一度に探知できる範囲だけでも二十人以上の魔力持ちがいるのである。これには何か理由があるはずだ。

ところで、〈生命感知〉によれば、今レカンの目の前には魔獣がいる。ところが、肉眼に映るのは、ごつごつした岩の塊だけだ。

レカンはその岩を蹴飛ばした。

それは岩を蹴った手応えではなかった。

岩はぐにゃりと崩れて緑色に変じ、どろりと流れ落ちた。

(ほう)(不定形型の魔獣か)(しかも擬態もできるようだ)

剣を抜いて、この奇妙な敵を斬った。

確かに斬ったのだが、その傷は瞬時にふさがってしまう。

どろどろとした魔獣は、ぶわりとふくれ上がってレカンを襲った。

今度は横に剣を振り、敵を上下に両断し、後ろに飛びすさった。

だが二つに分かれた敵は、すぐにまたくっついてしまう。

「ふむ」

レカンは大きく飛びのいた。

すると魔獣は、しばらくぐねぐねうごめいていたが、やがて再び岩に擬態した。

レカンは、ほかの冒険者がどう戦っているのかみてみようと思った。

ちょうど近くに二人組で戦っている冒険者がいる。一人は魔力持ちだ。

曲がりくねった通路を進んで、かすかにその二人がみえる位置で止まった。

冒険者は二人とも女だった。

一人は弓使いだ。だが弓は使わず、石をどろりとした魔獣に投げつけ、追ってくる魔獣をかわしては、また石を投げつけている。

もう一人は魔力持ちだ。右手に持った短剣を、離れた位置から魔獣のほうに向け、何かの呪文を唱えている。

「……の力よ、われに降りたって怒りの炎となりて、敵を討ち滅ぼせ。〈 火矢(ベイアーツ) !〉」

炎の玉が出現し、すうっと魔獣に向かった。当たると、爆発するように燃え上がり、魔獣は燃えた。

魔獣が燃え尽きるのを待って、弓使いの女が魔石を取り出した。まだ熱いと思うが、たぶん左手の手袋は断熱性が高いのだろう。

「ほいよ。四つめだ。魔力はまだ大丈夫かい?」

「今日は順調ね。魔力はもう二発分ぐらいかなあ」

「よし。あと一匹倒したら休憩しよう」

「うん」

レカンはここまで聞いてから、そっと後ろに下がり、そのまま別の道を進んだ。

どうもこの階層の不思議な魔獣は、剣の攻撃では殺せず、火の魔法なら殺せるようだ。

そういえば、この階層には魔法使いが多かった。たぶんこの魔獣は、物理攻撃では傷つかず、魔法攻撃はよく効くのだ。

レカンは剣を収納し、代わりに一対の籠手を取り出した。

〈雷竜の籠手〉。

むかし共に戦った冒険者の形見である。大きさがレカンの手に合っていたので、その冒険者が死んで以来〈収納〉にしまい込み、時々使っている。

〈雷竜の籠手〉を両手にはめると、レカンは〈生命感知〉で次の敵を探した。

敵は今度も岩に擬態していた。

いきなりレカンは右の拳を敵に打ちつけた。

すさまじい音がして電撃がはじけ飛び、敵は一瞬で消滅した。

〈雷竜の籠手〉には、雷竜の骨が仕込んであり、魔力を流しながら打ちつけると、電撃を発生するのである。この種の武具には魔石を消費するものが多いが、〈雷竜の籠手〉は使い手の魔力だけで発動でき、しかも流し込んだ魔力量によって電撃の強さが変わる優れた品だ。

レカンは、にやり、と笑った。

調子に乗って走り回り、不定形の魔獣をたたき殺した。

小さな魔石が残ったが、レカンは見向きもしない。宝箱が出たら開けた。

わずかのあいだに相当の数を殺し、飽きたので下に降りた。

宝箱の中身は、青の小ポーションが二つと、杖が一つだった。

杖が出たときには長細い宝箱が出現した。中身によって宝箱の形状は変わるようだ。

階段に下りる直前、これまでの階層と同じように、倒した魔獣たちに礼をした。

そのとき、フードをかぶった魔法使いの姿が目に映った。

フードのなかの顔は、驚くほど年老いていた。