軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「まず、ひそかに城内の様子を調べます。決して敵に 気取(けど) られてはなりません。気づけば敵は城内を荒らし回って密偵を探すでしょう。罪もない使用人たちも殺されてしまうかもしれません。敵が占拠しているからといって、城内にいるのは敵ばかりではないのです。領民もいます。行きずりの者や商人もいるかもしれません。彼らをむざむざ殺させてはならないのです」

「まことに、そうだ」

「そして囚われている味方に食料と武器を届けます。少しずつ少しずつ、あやしまれない程度にひっそりとです。そして時が来たら一気に敵を殲滅し、城を奪い返すのです」

「よっくわかった。して、反撃のときはいつ!」

「今の時点では申し上げられません。一日二日して城の様子がわかってきたら、ある程度の見通しはつくでしょう。この戦、十日や二十日では終わらぬものとご覚悟ください」

「心得た、軍師殿! リオル様。ただいまの軍師殿のお言葉、ただちに領主様にお伝えします」

「うむ。頼む」

「ははっ」

「今は真夜中ですよ。人を連絡に出すにしても夜が明けてからのことです。さて、患者の病状とその原因を突き止めるため、また治療の予定を立てるため、今度はこちらから何点かお伺いします。まず、患者は何歳ですか」

「そのようなこと、治療に関係は」

「いやいや、リオル様。味方の戦闘力を測るのは軍師の役目。そのためには年齢を知ることも必要かと。お答えになられたほうがよいですぞ。先ほどのエダ殿の〈回復〉の手並みをみて、これはただ者ではないと気づきました。これなら一気に城を奪い返すという軍略も立とうというもの」

「八十一歳だ」

「えっ? あたい去年、ザックさんが元気なときに会った、お会いしたけど、そんな年にはみえなかったですよ?」

「ザック殿は、いつも健康には気をつけておられた。アテルナ殿をはじめ優秀な施療師をやとい、赤ポーションや健康によい薬をいつも服用し、時々に〈回復〉を受けた。また、生命力を強化し、寿命を延ばすアイテム類を買い集めておられた。普通の八十一歳ではないのだ」

「病の兆候が現れたのは、いつごろですか?」

「それは……」

答えにくい事情でもあるのか、リオルは後ろを振り返って騎士ジャコフと目線を合わせた。

「およそ十五年ほど前でしょう。はっきり症状に現れたともいえない期間を含めれば十七年ほどになるかもしれません」

そう答えた施療師アテルナを、リオルは少し困ったような目でみた。

「最初にはっきり現れた症状は、どのようなものでしたか」

「めまい。幻覚」

「どのような幻覚ですか?」

「それは治療には関係ない!」

いきなりリオルが強い言葉を発した。

「あ、いや。その件は、高度に政治的な内容を含んでいるので、できれば追及しないでもらいたい」

ノーマは静かなまなざしを向けた。

「可能な範囲で構いません。幻覚の内容や、その幻覚に患者がどう反応したか、教えてください」

「幻覚の内容は、ご自分の行ったことが自分に跳ね返ってくるような種類のものでした。ザック様の反応は激しいものでした。表面は怒っておられましたが、内心ではおびえておられるのではないかと思えました」

「その幻覚の内容は、現実に起こった何かと連動していましたか?」

「現実には何も起きていません。しかし将来何かが起きるのではないかと、ザック様はお考えだったかもしれません。そこはよくわかりません」

「その幻覚は、その後どうなりましたか?」

「数年、そうですね、四、五年のあいだ、思い出したように幻覚をごらんになっていたようですが、その後幻覚は治まりました。少なくとも、ザック様が空中にみえないものをみて追い払えとお命じになったり、いもしないものに対して、消えろとか、あれはもうわしのものだと叫ぶようなことはなくなりました」

「アテルナ殿!」

リオルがとがめる声を上げたが、アテルナは感情の読めない顔で話を続けた。

「その代わり、ザック様は食欲が衰え、痩せ細りました。もとは大変な健啖家だったのです。陰気になり、無口になり、疑い深くなり、短気になりました。はっきり健康の衰えがみられたのは、この十年です」

「ふむ。続けてください」

「時々、急に硬直して倒れるようになりました」

「硬直は頻繁に起こったのですか?」

「はじめは年に一度か二度でした。段々と頻度が高くなり、昨年は七度、いや八度ありました」

「倒れたあと、どうなりますか」

「〈回復〉の魔法をはじめ、さまざまな手当を行ううちに、四、五日で起き上がれるほどに回復するのです」

「あなたは、それはどのような病気によるものだと思いましたか」

「いろいろな病気を疑い、文献を調べ、薬草を処方しました。その結果、これは病気ではないという結論に達しました」

「なるほど」

「ええっ? 病気じゃなければ、いったい何なんですか?」

施療師アテルナは、人形じみた顔をエダに向けて、質問に答えた。

「呪いです」