軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ノーマが杖の構えを解き、後ろを振り返ってポーリンに言った。

「私とエダに飲み物を」

「かしこまりました」

手際よくポーリンが準備した飲み物を、その場で立ったままノーマは飲んだ。エダも飲んだ。

「ふう。どうやってかけたのかわからないが、実に念入りな〈仮死〉だった。もう〈仮死〉は完全に解除された。だが患者の体内には、生きるために必要な力がほとんどない。わずかな果汁さえ、吸収するのに残された体力を総動員しなければならない状態だ」

この言葉は、エダに語りかけているようであり、周りでみまもる人たちにかけているようでもある。

「果汁の水分が体に取り込まれ、体が生きようとする働きが活発になっている。ここからしばらくは、時々弱い〈浄化〉を施しつつ、自立した生命維持が可能なところまで、生命力を引き上げる施療を行う。ポーリン。患者の汗を拭いて」

「かしこまりました」

それからは地味な治療が続いた。

ノーマは杖を患者に向けて容体を確認しつつ、時々魔力を流し込んでいる。

そして時々エダに指示を出す。

「エダ。胸のあたりに弱い〈浄化〉を」

「今度は頭全体に弱い〈浄化〉を」

「右腕に〈浄化〉を」

「左腕に〈浄化〉を」

「右足に〈浄化〉を」

「左足に〈浄化〉を」

時はとどまることなく流れ続け、夜はしんしんと更けてゆく。

この静かな病との戦いは永遠に続くかと思われた。

「よし。容体がやっと安定した。ポーリン。患者の近くに立って、しばらくのあいだ容体を見守ってほしい。私は談話室にいるから、何かあれば呼んでもらえるかな」

「かしこまりました」

ノーマはリオルのほうを向いて言った。

「別室で、患者の容体と治療の見通しについて説明します。説明を聞くかたは一緒に来てください」

そして出口に向かった。

リオルと、騎士ジャコフと施療師アテルナが、ノーマのあとを追う構えをみせた。

護衛の冒険者は動こうとしない。

廊下にいた領主家の使用人にノーマは言った。

「看護人のために椅子を二つ、部屋に入れてください。病床の脇にも二つ椅子を置いておいてください」

「はい、ノーマ様」

ノーマが歩いてゆくと、後ろでリオルが廊下にいた護衛たちや使用人たちに指示を与えた。

応接室にたどり着いたノーマは、倒れ込むようにソファーに座った。その隣にエダも座る。

テーブルを隔てた反対側にリオルが座った。

「お前たちも座りなさい。疲れただろう」

施療師アテルナはもごもごと何事かつぶやいて、リオルの隣にすわった。

騎士ジャコフは、油断なくリオルの後ろに立った。その後ろにコグルスから来た使用人のうち四人と、護衛のうち二人が立った。

(あれ?)

(この人、女の人だったんだ)

施療師アテルナは女性だったのだ。名前からして女性だろうかとも思ったが、骨格はがっしりしていて顔は大きく、手のゆびも長く大きい。顔が骨太というのは奇妙な形容だが、アテルナの顔の造作は部分それぞれがしっかりとして力強く、その引き締まった表情といい、きわめて男性的だ。

だが、もごもごとつぶやいた声は、男性にしては甲高い。しわがれた声だったので定かには判定できないが、そのつもりでもう一度全身をみわたしてみると、確かに女性であるように思われた。

そして正面に座ったリオルの顔をみて、エダは驚いた。

(ザックさんにそっくりだ)

以前コグルスに赴いたときに会ったザック・ザイカーズ。

その印象と、今目の前に座るリオルは、年齢も顔かたちもちがうが、不思議とよく似ている。

(ということはコグルスの領主様とザックさんは血縁?)

ザイカーズ家と領主家の関係については、以前聞かされたことがあったはずだが、はっきりしたことをエダは覚えていない。ただ、親戚だというようなことではなかったはずだ。

(まあザックさんとリオルさんがどんな関係だろうと)

(治療には関係ないけどね)

一同は、供された飲み物を飲んだ。リオルと施療師アテルナは、むさぼるように飲んだ。後ろに立つ騎士も、一気に飲み物を飲み干し、お代わりを渡されると礼を言った。

「まずはじめにおわびします。本来ならば診断を行って皆さまとお話をし、病状についての見立てを申し上げ、治療計画を説明してから施療に取りかかるべきでしたが、あまりに重篤な状態でしたので、ただちに施療に入りました。この点をおわび申し上げます」

「いや。拝見させていただいたが、ノーマ殿の施療がただごとでない水準にあることは明らかだ。また、エダ殿が何度も〈浄化〉を、しかも長時間にわたり発動したのにも驚かされた。ザック殿のためお二人が真摯に施療に当たってくださっていることは疑いない。礼を言う」

リオルが頭を下げた。施療師アテルナも騎士ジャコフも、後ろにならぶ使用人たちも頭を下げた。二人の護衛は頭は下げず、油断なく部屋の様子をうかがっている。

(なんかあたいに浴びせる視線が)

(妙に厳しいような気がするんだけど)

(気のせいかなあ)

気のせいではなかった。二人の護衛がエダをみるとき、そこには強い光が宿っていた。