軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌日は、町をぶらぶら歩いたり、茶を飲んだりしながら、〈障壁〉と物理攻撃を両立させる方法を考えた。

魔法攻撃をなかから撃っても対物理〈障壁〉は消えない、とシーラから聞いている。実践は難しいが、そのうちできるようになるだろう。だが物理攻撃をしようとすると、たちまち消える。こちらのこぶしが当たっても消えてしまうのだ。これはどうしようもない。

いろいろ考えてみたが、最も有望な手だては、消えたらすぐ張るというものだった。

つまりあらかじめ対物理〈障壁〉の準備をしておいて、その発動呪文を唱えながら剣をふるって相手を攻撃するのだ。

幸い、〈炎槍〉のように込める魔力によって威力が増減する魔法とちがい、〈障壁〉は正しい手順さえ踏めば確実に発動する。つまり、練り込みの作業が不要だ。その代わり、魔力が発動する形をうまく整えてやらないと失敗する。

考えてみれば、〈障壁〉を準備しているときは、ほかの攻撃行動も防御行動も必要ないのだ。そして準備が調ってから剣戟をふるえばいい。

「よし。行ってみるか」

この日は修復の済んだ軽鎧を引き取り、帰って寝た。

次の日、四十階層に行った。本当なら百十七階層の敵の速度を考えた場合、九十階層の魔獣と戦ってもまだ足りないぐらいだが、まずはできるところから始めるべきだ。

部屋に入った。最初はうまくいったが、いったん攻撃したあとうまく〈障壁〉が張れず、袋だたきにされて出入り口から逃げ出した。

自分に〈回復〉をかけたあと、魔力を練って再度部屋に突入し、〈雷撃〉で魔獣を皆殺しにした。

そしてもう一回部屋に入り直したが、次々敵が攻撃してくると、つい気が散ってしまい、うまく〈障壁〉の再展開ができなかった。

しかたがないので二十階層に下り、練習した。今度はうまくいった。だが、荒い。敵の攻撃が遅いことにいらいらしながら、十回練習してこの日の探索を終えた。

翌日は三十階層で二十回練習した。

その次の日は四十階層で二十回練習した。

翌日は、五十階層で二十回練習した。

その次の日に六十階層に行ったところ、うまくいかなかったので、五十五階層で二十回練習した。

さらにその次の日は六十階層で二十回練習した。

下に下りる階層数はだんだん小刻みになっていったが、順調に練習は進み、あと二日で休養期間が終わる四の月の八日には、九十階層に達していた。

八回戦闘を行い、空き部屋で休んでいると、冒険者たちが入ってきた。

「先客がいたか。おっ。レカンか」

「かかかかか。こんなところで何しとるんじゃ?」

「迷宮で会うの久しぶりだね」

〈グリンダム〉の三人だった。後ろに冒険者五人を引き連れている。

三人は、後ろの五人をレカンに紹介し、五人にレカンを紹介した。

「アリオスはまだ帰っておらんかったのう。レカン、まさか、一人か」

「ああ」

「おい、ちょっと待て。一人で九十階層を探索してるってのか?」

「ははは。いくらレカンでも、そりゃ無理だよ」

「かかかかか。レカンならやりそうな気もするがの」

「馬鹿言ってるんじゃないよ、この坊主頭。そんなわけがないだろ」

「少し肩慣らしをしているだけだ。じゃあな」

レカンはそう言い残して訓練に戻った。

その夜、夕食のとき、〈グリンダム〉の三人に詰め寄られた。

一人で九十階層でいったい何をしていたのかと。

「一人で探索していた」

事実を話したのだが、どうしても信じてもらえない。

「レカンのことだからなあ。もしかして、秘密の依頼でも受けてるんじゃ」

「そういうことなら、わしらには明かせんのう」

「そうなのかい、レカン?」

「だから明かせんというとるじゃろう」

「うるさいね、このタコ」

「お前たちも九十階層は珍しいんじゃないか?」

「それが、迷宮管理事務所から頼まれちまってね」

「若い冒険者のお守りをか?」

「そ、そ。あんなかの一人が町の有力者の息子らしいよ」

「なるほど。大事な客のお守りを任されるほど信頼されてるわけだ」

「そういうわけでもないけどね。この前の依頼は断ったから、今度は断りにくくて」

「この前の依頼?」

「もう、けっこう前のことじゃがな」

「〈蝙蝠魔人〉の噂を聞いたことないかい、レカン」

「こうもり魔人? 魔人はわかるが、こうもりとは何だ?」

「おいおい、あれだよ、ほら。夕方になるとひらひら飛んでるやつ」

「悪魔みたいな羽があって、顔や体は鼠に似てるやつだよ」

「ああ、わかった。蝙蝠だな」

「だからそう言ってるだろう」

「で、〈蝙蝠魔人〉というのは、新種の魔獣なのか?」

「かかか。魔獣ならよかったんだがの」

「正体は不明なんだ。というか、いるかいないかもわからない」

「よくわからんな」

「あのね、レカン。今年の一の月の十日前後ぐらいから、ツボルト迷宮の階段で、何かが頭の上を飛んでたり、ばさばさと音がしたっていう報告が相次いでるんだ。浅層から中層にかけてまんべんなく」

「深層でも報告はあるぞ」

「怪しい黒い魔獣の姿をみたという冒険者もいるんだ。人型で蝙蝠みたいな羽があったっていうね」

「ほう」

「深層のほうでは、姿をみたという者はおらん。怪しげな影をみたとか気配を感じたとかじゃな」

「なるほど」

「そんないるかどうかもわからないものを確認しろっていわれてもねえ。しかも範囲が広すぎるよ。それこそ階段を飛んでゆくスキルでもないと、受領できない依頼だ」

「頭の上を飛んでいかれたら不安だろうな」

「かかか。襲われたと思われてもしかたあるまいよ」

「レカンがその外套を着て、人の頭を跳び越したら、ちょうどそんな感じかもね」

「まったくだ。かかかかかか」

「そんなはずはないよね。今年の一の月の中旬じゃあ、レカンはとっくに深層組だったろうし。あれ?」

ブルスカが、何かを思い出したように振り返ってカウンターのナークをみた。

厳しい顔をして会話をみまもっていたナークは、ぷいと視線をそらした。

レカンは静かに杯を重ねた。

22

この日の夜遅く、アリオスが帰ってきた。

目からは疲労感が消え、全身から静かな覇気がただよっている。

「準備はできたようだな」

「ええ。レカン殿も」

「よし。明後日、百十七階層に挑戦する」

「はい」

翌日はゆっくり休んだ。

そして四の月の十日、二人は百十七階層の〈守護者〉の部屋の前に立った。