軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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5

レカンは、胸を押さえてうずくまっているブルスカに駆け寄った。

「〈回復〉」

次に、やはり手傷を負ったツインガーのもとに急いだ。

「〈回復〉」

エダのように離れた対象に〈回復〉を飛ばすことは、レカンにはできない。

対象にほとんど手がふれるほどの距離に近づく必要がある。

ヨアナが急ぎ足でやってきた。

「大丈夫かい、ツインガー。ブルスカも」

「ああ、大丈夫じゃ。ほんのかすり傷じゃ。それももう治った」

「俺もたいしたことはない。鎧の一番厚い所だったからな。一瞬息が止まるかとおもったけど」

「そうかい。それにしても」

ヨアナは死んで倒れ伏す敵をみわたした。

「あたいたち、やったんだねえ」

「ああ、やった」

「そうだな」

〈グリンダム〉の三人は、感慨深げな顔をしている。

先ほどまで彼らを包んでいた高揚と狂気はもはやどこかに消え去っている。

ヨアナはそのあと、レカンの右手をじっとみた。先ほど強力無比な魔法を放った右手を。

だが、口に出しては何も言わなかった。

「レカン殿。これが落ちました」

宝箱からシミターを取り出したアリオスが、いつものように飄々とした表情で、それをレカンに差し出した。

レカンは剣を受け取らず、アリオスに持たせたままで、〈鑑定〉をかけた。

〈名前: 吸命剣(ヴードシラー) 〉

〈品名:シミター〉

〈攻撃力:大〉

〈硬度:中〉

〈ねばり:小〉

〈切れ味:大〉

〈消耗度:なし〉

〈耐久度:万全〉

〈出現場所:ツボルト迷宮百階層〉

〈制作者:〉

〈恩寵:体力吸収(大)、破損修復(大)、剣速付加(大)〉

「何だと?」

「すげえ」

「すごいのかい?」

レカンから鑑定結果を聞いた〈グリンダム〉の三人が興奮している。

「恩寵それぞれもいいが、組み合わせがいいのう。シミターはもともと切れ味のいい武器じゃが、それでいて〈剣速付加〉があればますます威力が出る。そのうえ弱点である刃のもろさが〈破損修復〉でカバーされる。ははは。〈破損修復〉は百階層以下でなければ出ない恩寵なんじゃ」

「〈体力吸収〉も魅力的だな。切れ味のいい剣にこれがついていれば、もう最高にご機嫌だ」

「ほう。使うか?」

「えっ? いや、レカンかアリオスは、どうなんだ」

と言いながら、ブルスカはレカンの腰の剣に視線を送った。

聖硬銀の剣の異常な切れ味を目の当たりにしたばかりだ。いくら優れた恩寵のついた剣でも、これには及ばない。それはブルスカにもおよその見当はついているはずだ。

「これは斬ることに特化した剣だ。頑丈だといってもシミターはシミターだしな。オレは使わん。アリオスも使わんだろう」

「ええ。私にはこの剣があります。ほかの剣が欲しいとは思いません」

「わしは使わん。というか、剣は使えん」

「俺も斧専門だからなあ」

「売ればいいさね。そんなにいい武器なんだったら、さぞ高いんだろうね。五人で分けていくらになるのか、楽しみだよ」

「よし。では部屋を出て階段に入ったところで地上に戻ろう」

レカンはそう言って、四体の魔獣から魔石を抜いた。

五人は部屋の奥に向かった。

岩壁に穴が開いていて、その先には下に下りる階段がある。

戦闘が始まる前からここには穴があったのだが、灰色のもやがかかっていた。今はそのもやが晴れている。

事前に聞いていたところによれば、この百階層からは、階段のある部屋の魔獣を全滅させなければ下に下りることができないということだった。今や五人は階段に足を踏み入れる資格を得たわけだ。

階段の横を通り過ぎたところに出口がある。この出口を通ると回廊に出るのだろう。

レカンとアリオスが戦場に向き直って礼をすると、〈グリンダム〉の三人もそれにならった。

そして五人は百一階層に続く階段に足を踏み入れたのである。

6

「おいおい。今日はレカンも一緒に来てくれよ」

買い取り所の入り口で、魔石八個と剣二本をブルスカに渡そうとしたら、一緒に来るように言われた。

「一人で持てるだろう」

「そういう問題じゃねえ! 頼むよ」

「わしからも頼む、レカン。今日は一緒に行ってくれ」

「記念すべき百階層の恩寵品だぜ。みんなで行こうや」

〈グリンダム〉には世話になったので、頼むと言われれば断りにくい。

しかたないのでレカンとアリオスも一緒に建物に入った。

まだ早い時間だが、買い取り所のカウンターは、どこもそれなりに混んでいる。

一番奥のカウンターにテルミン老人が座っている。そこの列が一番長い。

一番手前の人が少ない列に並ぼうとしたら、ブルスカに言われた。

「手前は浅層組の場所だ。奥のほうに行くぞ」

一番奥から二番目に並んだ。並ぶのはブルスカとレカンだけだ。ほかの三人は後ろの壁際で話が弾んでいる。

列が前に進むのをぼうっとして待っていると、若い職員がやってきた。

「テルミン老師がお呼びです」

みればカウンターに座ったテルミンがこちらをみている。

レカンは小さく舌打ちをして、テルミンのところに歩いていった。

「何の用だ。今忙しいんだ」

「取得品の鑑定と買い取りであろう。わしが担当してやる」

「こんな長い列に並ぶ気はない」

「並ばなくてよい。ここに座れ」

そんなわけにいかないだろうと、レカンは列の先頭にいるいかつい顔をした男のほうをみた。その男は、どうぞどうぞという身ぶりをしている。その後ろに並んでいる何人かも同様だ。

一つため息をついて、レカンはブルスカを呼び寄せた。

「依頼者はブルスカ。所属は〈グリンダム〉だ」

鑑定士テルミンは、鑑定表に依頼者と所属を書いた。

ブルスカはカウンターに八個の大魔石を置いた。

「これは鑑定は不要だ。八個で金貨十二枚だ。買い取るか」

「頼みます」

なぜかブルスカが低姿勢だ。

テルミンは、手元の紙に何かを書き付けた。

「次」

ブルスカに目線で促されて、レカンはショートソードを出した。先ほど百階層の普通個体から落ちたものだ。

鑑定士テルミンは、ショートソードを鑑定して、鑑定結果を紙に書き付け、職員に渡した。職員が帰ってきて紙片をテルミンに渡し、それをみたテルミンは、手元の木板に名前と恩寵と値段を書き入れてこちらに差し出した。

大金貨八枚だった。

「買い取ってくれ」

ブルスカがそう言うと、テルミンは手元の紙に何かを書き足した。

そして若い職員を呼び寄せると、鑑定表を渡した。それをみた職員は、鑑定表を、中央奧の立派なテーブルに運んでいった。前に座っていた女ではなく、騎士が一人座っている。

「ほかにもあるのか」

レカンはシミターを出してカウンターに置いた。

鑑定士テルミンはシミターを鑑定し、鑑定結果を紙に書き付けて職員に渡し、値段が返ってくると、木板の字を布で拭き取って、名前と恩寵と値段を書き入れてよこした。

白金貨三枚と大金貨二枚だった。

「う、売る!」

そう言ったブルスカは、後ろを振り返って立ち、大きく三本指を突き出した。

それをみてヨアナとツインガーは、抱き合って喜んでいる。

「買い取り品は以上だ。金をくれ」

「少し待て」

若い職員が戻ってきた。鑑定士テルミンは、手元の紙にさらに何かを書き足し、その紙とシミターの鑑定表を若い職員に渡した。

若い職員は、レカンとブルスカに言った。

「お金はすぐに準備します。迷宮事務統括官代理がお会いしたいとのことです。別室にご案内いたします。パーティーの方々もご一緒にお越しください」