軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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たった今戦った部屋のすぐ隣の部屋が空き部屋だった。入り口にもやがなく、回廊から部屋のなかがみえる。ブルスカはその部屋に足を踏み入れ、それから入り口の外に向かってうなずいてみせた。なかでほかの冒険者が休憩していないか確認したのだろう。

一行は部屋のなかに入り、腰を下ろして休んだ。

休憩は大事だ。戦闘の最中には思わぬ緊張から、体の一部に負担がかかる。その疲れを落とし、体がよく動く状態を取り戻してから、次の戦いに向かうのだ。レカンとアリオスも、五十階層からは戦闘と戦闘のあいだに充分な休憩を挟んでいる。

レカンは今の戦いを振り返っていた。

一番参考になったのはヨアナの動きだ。

考えてみれば、レカンはこの世界での魔法使いが、迷宮探索パーティーでどのような立ち回りをするかを知らない。もっとも、もとの世界でも深く理解していたとは到底いえないが。

ヨアナはまず、戦闘の前に威力の高い魔法の準備詠唱を完了させていた。いつでも撃てる状態を維持するのは、それなりにむずかしい技術だが、練習すれば習得することはできるはずだ。

そして指揮官であるブルスカも、ヨアナの準備が整うのを待って突入の合図を送った。

次に狙いの的確さと正確さには驚かされた。

おそらくこの世界の標準的な魔法使いは、レカンほど魔法の連発はできない。その代わり、一撃一撃を慎重にかつ最大限の効果を上げるよう放つのだ。

そして戦闘が始まってからは、準備詠唱の必要な魔法は撃たず、威力は弱いが素早く撃てる魔法を使った。

二本の杖を使ったのには感心させられた。右手に威力の高い魔法を撃つ杖を、左手に発動の早い魔法を撃つ杖を持つというのはいいやり方だ。たぶん、戦いが長引いていたら、もう一度準備詠唱を行って、威力の高い魔法を使ったにちがいない。補助魔法に使った細い杖を入れれば三本の杖を効果的に使い分けていた。

ツインガーの戦い方にもみならうべき点がある。

短槍というのは取り回しのいい武器だと、あらためて思った。ツインガーは両手でくるくる短槍を回しながら、刃先と石突きと柄の部分を自在に使って相手の動きをうまく封じていた。そしていざというときには、威力のある攻撃を放って相手を倒していた。手数の多い攻撃をすることで〈赤肌〉の脅威度を格段に下げた手際は見事だ。

ブルスカは、斧の横腹で魔法を受けきっていた。度胸と目のよさがなければできないわざだ。ただ、今しがたの戦いでは、双斧の強力な攻撃力が充分に生かされていたとはいえない。

「ブルスカ」

「何だい?」

「さっき、部屋に顔を突っ込んでいたな」

「ああ。なかに誰かいて戦闘中だったら入るわけにいかないからね」

「危なくないか?」

「戦闘中なら、入り口から顔を出しても誰も気にしないよ。それに入り口前は退路だからね。戦闘中なら、たいてい誰かが真ん前に立ってる」

「戦闘中でなかったらどうなんだ」

「さっと顔を突っ込んでさっと出せば、なんてことはないよ。ただ、さすがに九十階層台になると魔獣の反応も早いから、ほんとに急いで顔を引っ込めないといけないけどね」

レカンとブルスカが話し込んでいる横で、ヨアナがぶつぶつ呪文を唱え、魔力を練っている。そしてその魔力を、短いほうの杖にそそぎ込んでいる。

(ははあ)

(ああやって術を杖にためておいて)

(いざというときは発動呪文だけで魔法を撃つのか)

ヨアナのほうにも意識を向けつつ、レカンは考えていた。

(〈グリンダム〉とはしばらく共同探索をしたい)

(オレの探知能力について完全に隠しておくのはまずい)

「ブルスカ。オレには人間や魔獣を探知するスキルがある」

「へえ?」

たとえ共闘する相手であっても、自分の能力はできるだけ隠したいのが冒険者というものだ。いきなり能力を暴露したレカンに、ブルスカはとまどっている。

「オレは外から、部屋のなかに魔獣が何体どういう位置にいるかがわかる。人間がその部屋に入っているかどうか、何人入っているかもわかる」

一瞬、ブルスカが黙り込んだ。

ヨアナが呪文を唱える声だけが妙に響いている。

「それが本当なら、とっても役に立つスキルだ」

「次の部屋で試してくれればいい」

「そうだな。そうしよう」

ヨアナは杖への仕込みが終わったようだ。

たぶんさっきの部屋で魔獣の足止めに使った〈雷矢〉とかいう魔法だろう。

「ヨアナ。その杖には魔法をためておけるのか?」

「えっ? 〈コルディシエの杖〉を知らないのかい? あんたも魔法使いなのに。といっても、そうか。あんた、〈回復〉にしても、〈移動〉にしても、準備詠唱もなく杖もなしに、速攻で連発してたね。そんな人にゃ、〈コルディシエの杖〉なんざいらないか」

「その杖には、どんな魔法でもためておけるのか?」

「まあ、そうだね。〈コルディシエの杖〉にはそれぞれ入る数が決まってる。こいつは五発魔法が入る優れもんさ。めったに出回らない品だよ」

「ほう。いい品なんだな」

ヨアナは、わが意を得たりとばかり、にやりと笑った。