軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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一の月二十五日である。

この日の朝、レカンはもう一度斡旋所に行こうかと思ったが、やめた。

そもそもここの施設は気に入らない。

石造りの仰々しい受付と案内所。

やたら大規模な買い取り所と販売所。

何より、立ち並ぶ宿泊施設。

ごく安い宿から信じ難いような高級宿まで取りそろえてある。

それ自体はべつに悪いことではないのだが、一目みてレカンは嫌悪感が込み上げてくるのを抑えられなかった。

これでは奴隷の扱いだ。

働きに応じて食事の質と量はよくなり、ベッドも上質なものになりはするが、結局管理されて働かされるという点では奴隷と同じだ。

何がそう感じさせたのかは自分でもよくわからない。

淡々と手際よく冒険者たちをさばく職員が、家畜小屋の番人にみえたのが原因かもしれない。

もちろん冒険者たちは、自分の意志でここにいるのであり、自分の意志で迷宮探索をしているのだ。そうではあるが、その冒険の進め方も取得品も一手に扱い機械的に処理していく職員たちをみると、なんだかやりきれない気持ちになってしまう。

もともとレカンは石造りの建物がきらいである。そんなところで安らげるとは思えない。だから距離は離れていても、少々高くても、〈ラフィンの岩棚亭〉を選んだのであり、その選択を今日まで後悔したことはない。

そうとして斡旋所だ。

この迷宮では、行き当たりばったりでパーティー同士が共同探索をするというのは困難であるようだ。共同探索をしたいパーティーは斡旋所に申し込む。共同探索の相手を持たずに迷宮に来るのは、共同探索をしようとは思っていないパーティーなのだ。

やはり、より深い階層に進むなら、パーティーの斡旋を受けなければ無理だ。

だが、どうにも気が進まない。

それに、今すぐ行けば、あの職員の目についてしまうだろう。

取りあえず、もう数階層はアリオスと二人で進んでみることにした。

〈転移〉で二人は八十六階層に転移したが、いきなりボス部屋に突入するのはやめて、普通個体の部屋に入った。

〈黒肌〉五体に〈赤肌〉四体が出た。

八十階層以降はすべてこの比率だ。

昨日と同じく最初に〈炎槍〉を撃ち込む戦法で戦った。〈炎槍〉は貫通力より衝撃力に重きを置いて撃っている。槍というより攻城槌のような攻撃だ。

そのあとはまずレカンが〈黒肌〉の機動力を殺し、アリオスが〈赤肌〉を重点的に倒し、やがて戦闘は終わった。

どういうわけか、最初に〈黒肌〉に〈炎槍〉を撃ち込むと、〈赤肌〉四体もレカンを攻撃対象に認定するようなので、アリオスは都合のよい位置に無傷で移動できる。アリオスが攻撃を始めると近くの白幽鬼もアリオスに注意をそそぐので、うまく敵を分散してたたくことができる。

〈黒肌〉の一体が奇妙な武器を持っていた。手首にはめ、手で握り込んで使う四本爪の鉤爪で、そこそこ重量もあり、長さもある。そして恩寵武器だった。アリオスは、それが恩寵武器だとは言わなかった。アリオスの眼力も剣以外の武器には通じにくいということなのだろう。

〈鑑定〉をかけたレカンは思わず、あ、と声を上げた。

「どうしたんです?」

「この武器は、〈 掻山爪(シェルグラージン) 〉。攻撃力が異常なほど高いな。恩寵は、〈威力付加〉だが、付加の量がすさまじい。十倍以上あると思う」

「えええっ」

「それだけじゃない。〈武器破壊〉という恩寵がついていて、この鉤爪と接触した武器を三分の一ほどの確率で破壊するようだ」

「ああ。その手の恩寵は、力関係によって、効果を現したり現さなかったりしますよ」

「力関係?」

「恩寵品として格上の相手には通用しないんです」

「恩寵品として格上?」

「ええ。でもここは迷宮の八十階層台ですからね。そこらの恩寵品では対抗できないでしょう」

「恩寵品としての格というやつは、どうやって比べればいいんだ?」

「さあ。〈鑑定〉でわかるはずですけど」

レカンは、五十階層で手に入れた〈吸命剣〉を取り出し、恩寵品としての格を比べることを意識して〈鑑定〉をかけた。鉤爪も同様にしてみた。

「ほう。鉤爪のほうが格上だな」

「わかるんですか?」

「こういう鑑定項目もあるんだな。勉強になった」

「いい武器が手に入りましたね」

「だがオレは使わんな。売り払うか」

「ええっ?」

「お前、使うか?」

「いりません」

「だろう? あ、そうだ」

レカンは〈ラスクの剣〉と鉤爪を、どちらが格上かを比べるようなイメージで鑑定してみた。

「どうでした?」

「ちがいがよくわからなかった」

「そうですか。でもたぶん、相手が恩寵品でなければ、〈武器破壊〉の恩寵はそのまま有効だと思いますよ」

「そうなのか」

三分の一の確率で破壊ということは、三度打ち合わせたら破壊されてしまうと思わねばならない。

〈ラスクの剣〉は、いい剣だ。打ち手の魂がこもった剣だ。それが迷宮から出た恩寵品に簡単に打ち砕かれてしまうというのは、どうにも理不尽に思えた。

そのあと、普通個体の部屋を二つ攻略した。恩寵品は出なかったが、高品質のロングソードが出た。

空き部屋で食事をした。食事をしている途中で冒険者が入ってきたが、レカンとアリオスがいるのをみて、何もいわずに出ていった。