軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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12

階段から出て呪文を唱えた。

「〈 図化(コズニット) 〉!」

五十六階層の略図が脳裏に浮かぶ。

ボス部屋は埋まっていた。

「よし。手近な部屋に入って、〈雷鳴剣〉を使ってみよう。オレが先に入る。〈雷鳴剣〉を使うから、オレの横に出るな」

「わかりました」

近くの部屋に入って、アリオスも入ったのを確認してから、〈雷鳴剣〉を振った。

六体の魔獣全部に攻撃が当たった。大型個体より一回り体が小さい。レカンに殺到しようとしていた魔獣たちの足が止まり、やや後ずさった。

だが、それだけだ。一瞬ののち、〈黒肌〉三体は前進しようとした。

レカンはもう一度〈雷鳴剣〉を振った。やはり六体全体に攻撃が当たった。だが一体も倒せなかった。

それからは乱戦になった。レカンはそのまま〈雷鳴剣〉で戦ったが、振るたびにまぶしい光を放ち雷を飛ばすので、うっとうしいことこの上ない。攻撃も何回かくらってしまった。だが、〈赤肌〉が魔法を使う前に倒せた。

「だめだな。この〈雷鳴剣〉は」

「いえ。相手次第でしょう。それなりに威力はあるようです。地上の赤猿や蜘蛛猿なら、一振りで十匹以上倒せますよ。そこらの盗賊でも。ここの迷宮でも上層なら大きな効果があるでしょうね」

「そういえばそうか。剣士が範囲攻撃をできるわけだ。初心者剣士が魔獣や盗賊の群れを相手取れる」

「いい値段で売れそうな気がします」

「お前、いるか?」

「いりません」

ボス部屋はまだ二つとも埋まっている。

その片方の近くまで移動した。

「レカンさん。迷宮の回廊を走るのはやめませんか」

「なぜだ?」

「すれちがった人がびっくりしています」

〈図化〉でできるだけ他のパーティーと交差しない順路をみつけているのだが、さけきれない場合もある。

「びっくりさせてはいかんのか?」

「相手の警戒心をかきたてませんか?」

「ふむ。では今後は、誰かと行き合ったら速度をゆるめる」

「速度をゆるめるということは、結局走るんですね?」

「そうだ。よし。ここに入るぞ」

「これは、ボス部屋、ではないですよね?」

「ああ。実験したいことがある」

その部屋でレカンは、〈吸命剣〉を試してみた。ちょうど傷を負ったので、いい機会だと思ったのだ。〈吸命剣〉で魔獣の首を刎ね飛ばしたら、傷も治り、打撲部分の痛みも治まった。疲れが癒されたような感覚もある。

「しまったな。首を飛ばさずに、軽く傷つけるだけにしておくんだった」

だが白幽鬼は、首を飛ばさないかぎり、ずたずたになっても襲いかかってくる。およそ痛みとかひるみとは縁のない魔獣だ。軽く傷つけるなどという戦い方はできない。

この日は結局六十一階層まで下りた。

恩寵品はもう出なかったが、槍二本と剣四本が出た。いずれもよい品だ。

(さすがにこのあたりの階層で出る武器は上級品だな)

(それにしても武器そのものの性能や完成度は)

(恩寵のついていないもののほうがついているものより上だな)

たぶん恩寵品のほうがずっと高く売れるだろう。

だがレカンが実際に使いたいのはどちらかと聞かれれば、恩寵のついていない品を選ぶ。

(いずれにしてもこんなに多種多様な剣や槍が出るとは驚きだ)

(この迷宮に来てよかった)

エダは今ごろどうしているだろうかというような思いは、このときレカンの脳裏にはない。ましてボウドのことなど完全に忘れ去っていた。

13

探索を終えて〈ラフィンの岩棚亭〉に帰ると、狭い食堂は客であふれかえっていた。といってもテーブルは四つしかないのだが。

いったん部屋に上がってあとで食事をしようかと思ったが、長期滞在の冒険者たちが席を詰めてレカンとアリオスが座れる場所を作ってくれた。

気持ちのよい男たちだった。

〈 ろくでなし(グリンダム) 〉は三人パーティーだ。

短槍使いのツインガー。

双斧使いのブルスカ。

魔法使いのヨアナ。

いずれもこの町の出身である。

食事客の多くは近くの住民たちだったようで、〈グリンダム〉の三人は、気楽に言葉をかわしていた。

14

一の月十五日である。休養日にしようというアリオスの懇請をしりぞけて、この日も迷宮探索となった。

六十一階層のボスを倒し、六十二階層のボス部屋に入ったとき、アリオスが声を上げた。

「左から二番目の黒!」

このときレカンは、ほとんど反射的に呪文を唱えた。相手の動きが止まっており、〈鑑定〉が成功するだろうと直感したのだ。

「〈鑑定〉!」

「えっ?」

「〈 呪印剣(ゾマルシラー) 〉! 傷を受けると徐々に命が失われる」

「うわあ。怖いですねえ」

戦闘に突入しつつ、のんきそうにアリオスが反応した。〈呪印剣〉持ちはごく自然にアリオスが分担している。

(大丈夫かな?)

レカンは何度も白幽鬼の打撃を浴びているが、アリオスは、レカンが〈爆裂剣〉で気絶したときを除いて、一度も相手の剣や槍を体に当てさせていない。万一かすっても、鎧の上からでは無効だろう。

(いや、待て)

(毒ならば鎧を通さないだろうが)

(この剣の呪いはそうじゃないかもしれん)

(この乱戦のなかだ)

(完全にかわしきるのはむずかしい)

レカンは銀色の指輪をはめており、〈ハルトの短剣〉も装備している。〈呪印剣〉の攻撃を受けても重大な結果にはならない。だが、アリオスはそうはいかないだろう。もし外套にかすっただけでも〈呪印剣〉の効果が現れるとすると、危険かもしれない。

「アリオス!」

「何ですか? 今忙しいんですけど」

「〈呪印剣〉の効果は、外套や鎧にふれても発生するだろうか?」

「えっ? わかりません。でも、効果あるかもしれません」

となればレカンの決断は早かった。

「アリオス、相手を代われ!」

「了解」

レカンとアリオスはお互い相手取っている敵を引きつけつつ、部屋の中央部に後退し、くるりと入れ替わった。

相手の攻撃を自分の装備にすらかすらせもしないとなると、レカンは苦手だ。アリオスは得意だ。とはいえアリオスも、もはやすべての攻撃をかわそうとはしていない。特に魔法については、鎧の頑丈な部分で受けるようにしている。

やがてレカンとアリオスは七体の敵をすべて倒し、〈呪印剣〉を手に入れた。

レカンはアリオスと自分に〈回復〉をかけた。