軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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談話室に戻ったあと、問答が再開された。

スカラベルの質問に答えてシーラが知見を示す形で、シーラ独特の生命論が語られてゆく。時折、アーマミールや、ノーマや、コトジアも質問をした。

夕食は早めだった。

夕食が終わり、エダとノーマがシーラに付き添って下がり、スカラベルもカーウィンに付き添われて退出すると、レカンは裏口から出た。

離れの部屋は、目と鼻の先である。

呼び止める者がいた。

「少々お時間を頂きたい」

レカンは立ち止まり、振り返った。

「ザカ王国騎士団副団長ネイサン・アスペルという」

「レカンだ」

「単刀直入に申す。一手お手合わせ願いたい」

「断る」

「これは慮外な。手合わせを挑まれて逃げるとは」

「むしろこっちが驚きだ。どうしてこの状況で決闘ができると思うんだ」

「決闘ではない。試合だ」

「同じことだ。オレもあんたも護衛任務中だろうが」

「貴殿は任務を終え、宿舎に戻るところであろう」

「宿舎にいるときも、オレは護衛任務中だ。たとえ眠っていても、オレはシーラがいる場所をみはりつづけている。異常があれば飛び出して対処する。決闘なんぞをしてたら、みはりにも対処にも支障が出るだろうが。決闘やってる最中に敵が侵入してきたら、どうするんだ?」

「心配は無用。わが部下たちは優秀である」

「ほう。スカラベルの護衛であるあんたたちが、シーラの面倒もみてくれるから、オレは安心して決闘で遊んでいられると、そういうわけか?」

「いかにも」

「じゃあ、明日からシーラの護衛であるオレがスカラベルも護衛するから、あんたたち騎士団は先に王都に帰れと言われたら、帰るんだな」

「そのようなこと、できようはずもない」

「それはオレが信用できないからか?」

「そういう問題ではない。護衛はわれらの任務なのだ」

「オレにとってもそうだ」

「む」

「自分にできないことを、人に要求するな」

「む」

「第一、スカラベルの護衛の筆頭であるあんたと、シーラの護衛であるオレが、スカラベルがこの町に滞在してるときに剣で戦ったなんてことになったら、宰相の顔は丸つぶれじゃないのか?」

「むむ」

「だいたい、スカラベルの旅に護衛として同行したついでにオレと戦おうというのが、虫がよすぎる。スカラベルが王都に帰ってから、あらためて出直してくるのが筋だろうが」

「むむむむ」

「あんたが王都で王族の護衛をしていて、誰かが一手手合わせをと挑んできたら、それは王族を襲撃したことになるんじゃないのか?」

「あ」

「あんたがやっているのは、シーラを襲撃しているのと同じだ。ならばオレはスカラベルを斬る」

「ななな、なんだとっ」

「当然だろう。あんたがオレを襲うのは、スカラベルがシーラを襲うのと同じだ。襲われたら反撃するもんだろうが」

「待て! 襲ってはおらん」

「しっ。声が高い」

こいつはあほうだ、とレカンは思っていた。

だが直情で武人肌だ。

こういう男を、レカンは嫌いではない。

実のところ、レカンとしては、この副団長と戦ってみたい気持ちはあった。

そう思わせるだけの武威をまとっている。レカンに匹敵する武威の持ち主だ。

レカンには魔法という隠し玉があるが、相手にもすぐれた装備品があるだろうし、前に戦った別の副団長から話を聞いて、対策もしているはずだ。戦えばいい勝負になるのはまちがいない。

だが今はまずいと思って自粛しているのだ。

その代わり、言葉でこの副団長をいじることにした。

だがどうも、そんなことをしている場合ではないようだ。

「ネイサン。迎賓館の東側で、妙な動きがある。誰かが魔法を使った。たぶん〈睡眠〉だ」

「なにっ」

「オレは行く。〈隠蔽〉」

「あっ。レカン?」

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レカンの〈生命感知〉は魔法ではなくスキルである。この世界で得たスキルではなく、もとの世界で得たスキルだ。もとの世界でも、このスキルで探知されていることを察知する方法はなかった。少なくともレカンは知らない。

ましてこの世界では、〈生命感知〉で探られているのを察知することは、どんな優秀な魔法使いでもできない。

〈隠蔽〉を自分にかけて気配を殺したレカンは、〈収納〉から〈ラスクの剣〉を取り出しつつ、迎賓館の東側に回り込んだ。

三人の魔法使いと従者二人が、奇妙な形の箱を地面に埋めようとしている。

その脇では、王国騎士団の従騎士が倒れている。

「そこで何をしている」

ぎょっとしたように五人がレカンをみた。

レカンに話しかけてきたのは、一番立派な服を着た魔法使いだ。王国魔法士団の副団長のローラン・バトーとかいう男だ。

「君は、レカン殿か。ここに何しに」

「もう一度訊く。そこで何をしている」

「われわれは宰相閣下のご下命によりスカラベル導師の護衛にあたっている。君の指示は受けないよ」

「〈鑑定〉」

「なにっ?」

〈名前:ヤックルベンドの魔結界(精神系/東)〉

〈品名:魔道具〉

〈効果:範囲内で精神系魔法の効果を増幅する〉

※東西南北の四つで一組

※正しく配置して呪文を唱えると短時間増幅効果が生じる

※増幅するのは結界の外から結界の内に向けて発動された精神系魔法のみである

※増幅された精神系魔法は結界内のすべての生き物に作用する

※結界の大きさと効果の強さは装着した魔石の量と質による

「〈ヤックルベンドの魔結界〉か」

「〈鑑定〉も詠唱省略か」

「ここに東側の魔結界を埋めるということは、迎賓館を魔結界で囲むつもりだな」

「答える必要はないね」

「シーラの護衛であるオレに断りもなくこんな物を埋め込むことは許さん」

「許してもらう必要はないよ」

従者二人と魔法使い一人は、それぞれ魔結界とおぼしき物を一個ずつ抱えている。

魔法使い二人は手があいていて、右手にはそれぞれ杖を持っている。薬師たちが使うような細い杖ではなく、宝玉を埋め込んだ、太い杖だ。

魔法使い三人は、相当な使い手である。魔力量も多く、装備も相当よいものだと思われる。

正直、充分な距離を置いて三人同時に対峙したら勝ち目がみえない。

ただし、この距離なら話はちがう。これは剣士の距離だ。こんな距離にレカンが踏み込むのをみすみす許したのは、油断なのか。それとも自信なのか。

「スカラベル導師の護衛であるわれわれは、不審者を取り締まらねばならない。あの談話室では、何やら不審なことが行われているね」

レカンは返事をしなかった。ローランの意図をはかりかねたからだ。

「君も不審者の一人だ。そちらから来てくれるとは、手間が省けたよ。それにしてもすごい魔力量だね。どんな仕掛けがあるのかな?」

仕掛けとは何のことだろう。

「君の詠唱省略には驚いたよ。わが王国魔法士団以外に、あんなことができる人がいたとはね」

ローランは、杖を構えた。

「もしかすると、ザイファド殿の言う、何十発という〈炎槍〉を立て続けに放ったというざれ言も、少しは事実を伝えていたのかな? 君を取り押さえて装備を調べるのが楽しみだよ。それにあの魔力制御。あんな薬なんかではわれわれは驚かないけれども、あの精密な魔力制御には脱帽だ。いったいどんな恩寵品の助けを借りればあんなことが可能になるのか、王都に帰る前にはぜひ明らかにしなくてはならんと思っていたんだ」