軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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来る日も来る日も〈障壁〉の練習を繰り返した。しかし発動しなかった。

九の月に入って、突然シーラが宣言した。

「薬草採取に行くよ」

「シーラ、そろそろスカラベルが来る。もう王都から半分ぐらいの所まで来ているはずだ」

「大丈夫だよ。今回採取する薬草は、一種類だけさね」

「一種類?」

「ターゴ草さ。魔力回復薬の作り方を教えてあげるよ」

翌日、レカンはニケと一緒に町を出た。二泊の採取旅行で、たっぷりのターゴ草を採取して、ヴォーカに戻った。

その翌日から、魔力回復薬の調薬が始まった。

「さてと。ほんとはこれを十日ばかり干しておくのがいいんだけど、ちょっと今回は時間がないので魔法でまにあわせとく」

ターゴ草を机の上に広げると、シーラは両手をかざして魔力を流し込み始めた。

レカンは〈魔力感知〉を使って魔力の動きはみることができたが、正直何をやっているのかわからなかった。

こういう魔力の使い方は、厳密には魔法ではない。しかし、いろいろな分野の最高峰の技術では、魔力を自在に操って物品の完成度を上げる操作をする。レカンも、調薬に関しては、いくつかこういう魔力操作を習っている。

だが、今シーラがやっているのは、どうもそういうレベルではない、ひどく高度で複雑なことであるように思える。

四半刻もたたないうちに、ターゴ草は、ほどよく乾燥させたかのような状態になった。

「さあ、これから魔力回復薬を作る。まずは普通の作り方だ。鍋で二回作るよ。一回目はあたしが作ってみせるから、あんたはそばでみているんだ。二回目はあたしは口も手も出さない。あんたが一人で作るんだ」

魔力回復薬の主原料はザハード苔である。これは二の月の時点で採取してあり、下処理も済ませてある。副材料のうち、ニチア草とシアリギの若芽も採取済みだ。三番目の副材料であるターゴ草を、今回採取した。これは九の月か十の月でないと採れないのだ。そのほか二種類の鉱石を削った粉を触媒として使うが、これも二の月に採取済みである。

今までシーラのもとで研鑽を積んできたレカンにとって、調薬の手順そのものは複雑ではなかった。ただ、二つの触媒を加減して、主材料に副材料が溶け込んでゆくバランスを制御するのがむずかしく思えた。

シーラの手本をみたあと、レカンが調薬に挑戦することになった。

レカンが調薬を行うその横で、じっとシーラがみている。

レカンは、身がしびれるような緊張を味わった。

それは、心地よい緊張感である。

わざのかぎりを尽くした戦いのさなかに、おのれの繰り出したわざが相手のわざをどうしのぎ、どう上回るのかを、じっとみまもるもう一人の自分のような気持ちで、レカンはみずからの作業をみつめていた。

「よし。よくできたじゃないか。褒めてあげるよ」

シーラの言葉は、何物よりもうれしいものだった。

「薬草を使って薬を作るときにはね、やたら高い薬効を目指しちゃあだめだ。ほどのよさがいる。薬草に無理をさせちゃいけないんだ。無理はさせず、その薬草の最高の薬効を引き出す、そこに調薬の極意があるんだよ」

「ああ」

この日はこのあと〈障壁〉の練習をしたが、依然として発動の気配はなかった。

翌日は、魔力回復薬の特別な調薬のしかたを教わった。夜遅くになって、やっと合格を言い渡された。

帰ろうとすると、ドアに手紙が貼ってあった。地下室での調薬に集中して来客に気づかなかったようだ。

手紙は領主からで、スカラベルが二日後に到着する予定だという早馬がバンタロイから来たという内容だった。だから明日のうちに、シーラとレカンとエダとノーマは、領主館に入ってほしいという。

家に帰ると、同じ手紙をエダが受け取っていた。

もともと早くて十日という到着予定だったが、二日も早い。

翌日、四人は領主館の離れに移った。

迎賓館は、すでに完成し、臨時の使用人たちが忙しく立ち働いて準備をしていた。

領主館でも、食料などがあわただしく運び込まれている。

領主は出入りの業者たちに、庭を荒らすなと怒鳴り続けていた。

ここに来ても、シーラは庭でレカンへの〈障壁〉の特訓を行った。

この日の夕食後の特訓で、ついに〈障壁〉が発動した。

翌日は一日中、〈障壁〉の制御を教わった。一度発動すると、あとは簡単で、教われば教わるほど、高度な使い方を学習することができた。最後に、おまけのように、対物理用の〈障壁〉の使い方を伝授された。

「レカン。おめでとうさん。これであんたは卒業だよ。調薬も魔法もね。あたしの長い人生のなかで、この二つを同時に習得して、しかも卒業までいった弟子は一人もいない。あんたはあたしの自慢の弟子だよ」

「シーラ。世話になった。あんたに会えた幸運を、オレは神々に感謝している」

いつのまにか、エダとノーマが離れの外に出て、レカンたちのようすをみていた。

エダは涙ぐんでいる。

そのあと領主がやって来たので、エダに〈浄化〉をかけさせた。

明日、九の月八日、いよいよ〈薬聖〉がやって来る。