軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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レカンは翌々日朝から領主館に詰めることになった。

エダの金級冒険者推薦が正式に決まった。ただし、冒険者章授与式は、王都からの使者が帰ってからということになった。

夜が明け、朝が来た。

エダは出かけている。近所の婦人に縫い物を教わるとか言っていた。

レカンはどこかに出かける気にもならず、自宅で体力回復薬を作った。

一昨夜シーラから教わった特別な作り方の練習だ。

二の月以来シーラに教わってきたことを、一つ一つ思い出しながら、丁寧に丁寧に作り上げた。

こうしてみると、今までばらばらに教わった個々の技術が、実は全体としていろいろ関係し合い、つながり合っていることがわかる。

ある薬草から薬効成分を抽出するための手順とこつが、別の効果を持つ薬草の成分抽出の複雑な手順の基礎となる。成分同士を混ぜ合わせるときに、主となるべきものが何で、従となるべきものが何か、あらためて教わらなくても、今まで学んだことから考えれば、おのずと明らかだ。

同じ薬草を使って同じような効果を持つ薬を作ることは、たぶんそんなにむずかしくない。

しかし、ここまで厳密に、精緻に、絶妙な仕上げをするには、複雑な手順を覚えるとともに、一本一本個性が微妙にちがう薬草と対話するわざを学んでおかなくてはならない。

分量の比率や加熱時間は、一つの目安だ。その目安をもとに、そのときそのときの薬草の状態をみきわめ、最適な調薬方法を、そのつどみつけださねば、本当に優れた薬はできない。

薬を分析する能力を持った薬師なら、できあがった薬をみて、素材を言い当てることはできるだろう。似たような薬を作ることさえ可能かもしれない。

しかし、この手順と、その加減のこつは、わからない。

たぶんそれは、目の前で調薬をみていても、学習不可能だと思える。この調薬を理解するには、基礎となるわざを体得しておく必要がある。

そして本来なら、気の遠くなるような繰り返しのなかで、調薬技術の精髄を習得してゆくことになる。

しかしレカンには、もとの世界で得た特殊で精密な探査能力がある。

その能力は、こちらの世界に来て一段と向上している。

全力をかたむけてその能力を発揮すれば、今目の前で何が起きているかを正確に知ることができるのだ。

もちろんシーラは、それをみぬいたうえで、レカンにこの技術を習得させたのだ。

ここまで高度なわざで作り上げた薬そのものに、必ずしも需要があるとはいえないだろう。ずっと少ない手間で作れる薬で充分役に立つ。

しかし、薬とは何であり、調薬とは何であり、治るとは何であるかを突き詰めてゆくには、こうした薬を作るわざを練り込んでいく必要がある。

人の命とはどういうものかについて、今までにはなかった知見を得るためには、こうした究極の調薬こそが役に立つ。

まったく新たな薬。

まったく新たな治療法。

この調薬の先には、そういうものがかいまみえる。

かすかにでもレカンにそれがみえるのは、シーラからの教えのおかげであることはもちろんだが、ノーマのもとでの研修の成果も大きい。

さほど長く研修を受けているわけではないが、ノーマという優れた教師のもとで、人の体の働きを実地に学んだことは、レカンの薬師としての知識や感覚を飛躍的に成長させた。

気がつけば夕方になっていた。

昼食をとるのも忘れて、調薬に熱中していたのだ。

おかげで、ずいぶんこの技術に磨きをかけられた。

エダが帰ってきて、夕食を作ってくれた。

少しの酒を飲みながら夕食を食べ、エダに〈浄化〉をかけてもらって、この日は早く寝た。

明日は王都からの使者が来る日だ。

4

領主館に来てみると、たった二日でまるで雰囲気が変わっていた。

まず、いつもうるさく吠えかかる木狼がいない。

どこもかしこも奇麗に整理され、磨き上げられ、飾り立てられていた。

「あ、レカン殿。その敷物は踏まないようにしてくれ!」

「テスラ隊長か。ご苦労さんだな。この屋敷、こんなに使用人が大勢いたか?」

「臨時雇いが半分以上だ」

「なるほど」

「結局シーラ殿はみつからなかった」

「まあ、そうだろうな」

「あんたが来てくれて、ほっとしてる」

領主が出てきた。

「おお、レカン! よく来てくれた。来てくれると信じていたぞ」

それは裏返せば、来ないかもしれないと心配していたということである。

「使者は、もう着くのか?」

「いや。昼過ぎになるだろう。先触れもあると思うし、こちらからも偵察を出す」

「早すぎたな。出直そう」

「帰るな! 帰らないでくれ。さあさ、奥に通ってくれ。今、茶を出す。テスラ、正面に飾った鎧の右腕に曇りがある。その花は少し端に寄せたほうがいい。それから」

「レカン様。こちらへどうぞ」

「ああ」

小間使いに連れられて奥の部屋に向かった。

出された茶と菓子は上等のものだったが、それだけでいつまでもは間が持たない。

レカンは通路に立って、口元をさりげなく手で隠しながら、通る人の衣服や持ち物を〈鑑定〉して時間をつぶした。

意外な値打ち物を持っている使用人もいたりして、なかなか楽しかった。

早めの昼食が供された。

これだけ大勢の人間が集まっていると、食事の準備だけで大変だろうなと思った。

人々が準備に走り回っているのを、ほとんど人ごとのようにみていた。

領主は忙しかったのか、レカンは放り出されていたので、使者が着く直前まで、レカンは使者の動向を知らなかった。