軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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1

レカンたち一行がニーナエに着いたのは、五の月二十四日のことである。

ヴォーカからの距離はコグルスと同じぐらいだが、大回りしないと着けないので、四日で到着というのは、非常に早い。

そのぶん、アリオスとエダは、へとへとになっていたが。

到着したのは夕方に近い時間だったが、レカンたちは税金を払って町に入ると、冒険者協会を目指した。

シーラの話によれば、ニーナエには大きな冒険者協会があり、迷宮で得た魔石とポーションについては、この町で売る場合には冒険者協会で売るのがルールになっているという。この協会には迷宮の情報も豊富だという。レカンはまずここで、地図と魔獣情報を得ようと思ったのだ。

ニーナエの冒険者協会は巨大な建物で、なかに入ると大勢の冒険者であふれかえっていた。

レカンは、〈魔石〉〈ポーション〉〈採取依頼〉などの看板がかかったカウンターの前を過ぎ、〈迷宮情報〉という看板がかかったカウンターに進んだ。

ちょうど空いている。

「迷宮の地図と出現する魔獣の情報が欲しい」

「十階層ごとに分かれてる。どこの階層の地図と魔獣情報がいる?」

「全部」

「全部だあ?」

カウンターの向こう側の男が、眉をねじり上げて訊いた。

初老というより老人に近い年齢だが、放つ空気には少なくない威圧感がある。

身のこなしには隙がない。おそらくこの老人は、もと冒険者だ。腕利きだったにちがいない。

老人は、じろりとレカンをみたあと、ぶっきらぼうに値段を告げた。

「金貨二枚だ」

えっ、と後ろでエダが小さな声をあげた。

レカンは金貨二枚を取りだして渡した。

老人は、革紙のたばをカウンターに置いた。

レカンは、それを受け取って開いてみた。

「ひどく簡略な地図だな」

「ここの迷宮は、それでじゅうぶんなんだ。白丸は上への階段で、黒丸は下への階段、×印は大型個体の出やすい場所だ。多少は変動がある。念のため言っとくが、大型個体を狩るのは、〈印〉をつけるときだけにしといてくれ。それと、地上階層で野営するときには隅っこに寄ってくれ」

「第四十五階層の魔獣が書いてないが。地図も第四十四階層までしかない」

「迷宮の主の情報は公開してない」

「この〈第一階梯〉とか〈第二階梯〉とかいうのは何だ?」

「すまんが、そういうことは運び屋に訊いてくれるか」

「運び屋に?」

「やつらも食っていかなくちゃならんからな。しばらく前から、魔獣についての細かな情報は、運び屋たちの飯のタネにしてやることになったのさ」

「了解した。うまいものが食える店はどこだ」

「〈ジェイドの店〉だな。この通りを右に二百歩ほど行ったところにある。エールの樽が店の前に積んであるからわかるだろう」

「今夜泊まる安い宿を教えてもらいたい。迷宮から二千歩程度の距離で」

老人から宿の場所を聞いて、レカンは冒険者協会を出た。

「おい、とっつぁん。〈ジェイドの店〉には今〈ベガー〉がいるんじゃないのか」

「かまわんだろう」

そんな会話がカウンターのほうから聞こえた。

2

〈ジェイドの店〉は、建物の造りは非常にしっかりして古めかしいのに、扉は妙に新しく、そして安っぽかった。いかにも冒険者の店である。

レカンは店のなかに入った。エダとアリオスが続く。

わりと店は広い。

一組の客がいる。

丸いテーブルを二つくっつけ、その上に所狭しと料理がならんでおり、五人の男と一人の女が囲んでいる。六人は、にぎやかに酒を飲み、料理を食べている。

広い店のなかに、客はその一組だけだ。ほかのテーブルには、誰も座っていない。

レカンは、奥まった席に座った。

「この 胴長豚(カシーシャ) の揚げ浸しはうまいなあ! もう三人前持って来い!」

ひときわ体格のいいひげ面の男が大声で追加の注文をした。

レカンは注文を取りに来た給仕に言った。

「エールを二杯と茶を一杯。それに、胴長豚の揚げ浸しとかいうのを二人前と、そのほか四皿ほど、お勧めの料理を頼む」

すぐに給仕はエールと茶を持ってきた。

すると騒いでいたひげ面の大男が立ち上がって、レカンのテーブルに近づいてきた。

「お前、みない顔だな」

大男は、レカンを上回るほどの身長を持っていて、横幅ははるかに大きい。たくましい体をしている。

だが、レカンの相棒であったボウドと比べると、ややしまりがない。ボウドは体が巨大であるだけでなく、鉄をねじり合わせたような筋肉を持っており、その威圧感たるや、貴王熊にも負けないほどだ。

レカンは、座ったまま顔を右側に向け、大男の顔をみあげた。

「ああ。今日、この町に来た」

「そうか。おい、この飲み物は、俺のほうにつけとけ」

これは飲み物を持ってきた給仕にかけた言葉だ。

「それから、俺のエールを持って来い」

大男は、ここでレカンに向き直った。

「名前は」

「オレの名はレカン。パーティー名は、〈 虹石(ウィラード) 〉」

「そうか。俺の名はコズウォル。パーティー名は〈ベガー〉だ」

コズウォルは、給仕が持って来た大きなジョッキを高々と掲げた。

「〈ウィラード〉の成功を祈って」

レカンが応じる。

「〈ベガー〉の栄光を祝して」

「 乾杯(ジョー・ジョード) 」

「乾杯」

「乾杯」

コズウォルが、レカンが、エダが、アリオスが、ジョッキを掲げて応じる。

離れたテーブルに座っている五人も、それぞれジョッキを持ち上げたので、レカンはそちらに向かってジョッキをかざした。

コズウォルもレカンも、あっというまにエールを飲み干した。その飲み干した勢いのまま、レカンは給仕に告げた。

「全員に飲み物を一杯ずつ。オレからだ」

新参者であるからおとなしくおごられておこうと思っていたのだが、つい言ってしまった。

それを聞いてコズウォルは豪快な笑い声をあげた。

「うわっはっはっは。お前、いいやつだな。今までどこで潜ってたかしらんが、ここはいい町だ。楽しんでくれ!」

「ありがとう。そうさせてもらう」

「はあーっ、はっはっはっ」

コズウォルは、笑いながら自分のテーブルに帰った。