軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

045 VSトライデントテイル

俺、リーベ、ガレルはまず、トライデントテイルを取り囲むような位置につく。

敵の意識と攻撃を分散させるためだ。

「グルルゥゥゥ」

トライデントテイルは鋭い眼光を左右にちらつかせながら、俺たちとの間合いを図っていた。

そして、

「バウッ!」

力強い咆哮とともに、三者に向けて一本ずつ尻尾槍が放たれる。

とはいえ先ほどと同様、注意さえしていれば対処は難しくない。

俺たちは簡単に刺突を躱すことができた。

「グルァァァァァ!」

「――――!」

トライデントテイルが変化を見せたのはその後だった。

ヤツはその場でぐるりと体を回転させ、伸ばした尻尾槍を鞭のようにしならせる。

円を描くような形で、尻尾槍が俺たちに襲い掛かってきた。

だが――

(直線的な軌道に比べて速度は半分以下! 今なら――)

俺は木剣を力強く握りしめると、タイミングを見計らい尻尾槍に斬りかかる。

「――【 纏装(てんそう) ・ 風断(かぜたち) 】!」

振動する風を纏った刃が振るわれる。

それは真っ直ぐ吸い込まれていくように尻尾槍へと命中するも、キンッ! という甲高い衝撃音を鳴らしただけで、両者ともに後ろへ弾かれる結果となった。

「……やっぱりかなり頑丈だな」

岩石を貫く程の強度に加え、しなやかな動きのせいで衝撃を逃がされたというのもあるのだろう。

どうやら今の攻撃で尻尾槍を斬り落とすのは、なかなか難しそうだ。

方針を変える必要がある。

「ガァァァアアアアア」

俺が思考を深めている途中、トライデントテイルは力強い雄叫びを上げる。

そして再び、尻尾槍を鞭のようにしならせ、縦横無尽に攻撃を仕掛けてきた。

天井が、壁が、床が、次々と強力な攻撃によって粉砕されていく。

それを回避する中、リーベが慌てた様子で声を上げた。

「ちょっと、ここからはどうするつもり!? 刺突より破壊力は低いにしろ、これはこれで躱すのが面倒よ!?」

リーベの主張はもっとも。

ボス部屋全体を網羅するように振るわれる三本の尻尾槍は、ある意味で刺突以上に厄介な攻撃手段だった。

トライデントテイルがこの対応に切り替えたのは、直線的な刺突は避けられると判断したからだろう。

(なら俺たちは、その思考を逆用してやればいい)

こちらの取るべき作戦が決定する。

俺は声を張り上げて、リーベとガレルに指示を出した。

「問題ない、考えがある! 二人はこのまま回避に徹してくれ! あとは俺が、隙を見て攻撃を仕掛け――」

その直後。

俺はトライデントテイルの尻尾鞭によって生じた地面の凹みに躓いたふりをし、 わ(・) ざ(・) と(・) 体(・) 勢(・) を(・) 崩(・) し(・) た(・) 。

「グルァァァ!」

そんな俺を見たトライデントテイルは、これが好機だと判断したのだろう。

嬉しそうに唸り声を上げながら、一本の尻尾槍をこちらに放ってくる。

軌道はまっすぐ、そして速い。

このタイミングなら俺の体を貫けると判断したのだろうが――

「悪いな、フェイントだ」

「――ッッッ!?」

俺は素早くステップを刻むと、軽やかに体勢を整える。

尻尾槍は紙一重で俺の横を通過し、真後ろの壁に深く突き刺さった。

――――狙うなら、ここだ!

流れるように木剣を上段に構えた俺は、目の前にある尻尾槍を見下ろす。

先ほどまで、尻尾槍はしなるような動きをしていたため斬り落とせなかったが、今は話が別。

張り詰めた糸が切れやすいように、限界まで伸びきったこの状況なら耐久力は低くなっているはずだ。

さらにダメ押しを追加する。

先ほど、風断が弾かれた時の感触で俺は理解していた。

この素材相手なら、切断よりも打撃の方がダメージが通りやすいはずだと。

俺は木剣に渦巻く風の奔流を纏わせる。それはかつてリーベにトドメを与えた時と同種でありながら、より小さく圧縮した破壊の剣。

すなわち――

「――――【 纏装(てんそう) ・ 颶風剣(ぐふうけん) 】!」

「ガァァァァァァァァァァ!?」

振り下ろされた渾身の一撃が、見事に尻尾槍を叩き割った。

痛みに悶えながらも、トライデントテイルは鋭い眼光をこちらに向けてくる。

その目からはまだ、闘志は失われていない。

「ガルゥ!」

恨みを晴らすように、残る二本の尻尾槍が俺に向けて放たれる。

だが、ここでその選択は失敗だった。

「あら、いいのかしら? 私から目を離しても」

「――――ッ!?」

遷移魔力によって複数の鎖を生み出したリーベが、そのまま尻尾槍を捕まえる。

彼女はそのまま二本の尻尾槍を限界まで引っ張り、強制的に伸びきった状況を生み出した。

リーベが得意げな表情で俺に視線を向ける。

「要するに、こういうことでしょう?」

「ああ、完璧だ」

俺は颶風剣を継続して発動し、この隙を利用して残る二本を断ち切った。

これで全ての準備は完了。

あとは敵にトドメを刺すだけだ。

「ルァァァアアアアアアアアアアア!」

ここに来て、一番の咆哮を上げるトライデントテイル。

虎の尾を踏む――ではなく、獣の尾を斬り落とすとでも言うべきか。

追い詰められた獣は限界を超えた力を振り絞り、こちらに襲い掛かろうとする。

だが――

「一体、大切な存在を忘れているぞ」

「ガルゥ!」

「――ッ!?」

俺とリーベが尻尾槍の相手をしている間に、ガレルは敵の背後に回り込んでいた。

トライデントテイルは慌てて振り返ろうとするが、既に手遅れ。

「ガルァァァアアアアア!」

纏装・風断。

ガレルが持つ最大火力の一撃が振り下ろされる。

それは見事に、隙だらけだったトライデントテイルの胴体を深く斬り裂いた。

「――ッ、ルゥゥ……」

血塗れになりながらも、何とか崩れそうな体を支えるトライデントテイル。

そんな敵目掛けて、俺とリーベは同時に手を伸ばした。

「エアロバースト!」

「爆ぜなさい!」

風の奔流と、炎の砲弾が放たれる。

それらはトライデントテイルに着弾すると、激しい爆発を引き起こした。

吹き荒れる爆風と砂塵。

十数秒後。砂塵が晴れたその場所には、トライデントテイルの死体だけが横たわっていた。

「よし、無事に勝てたな」

かくして、初めてのボス攻略は俺たちの完全勝利で終わるのだった。