軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

025 魔物退治と一つの影

城下町の探索を終え、そろそろ屋敷に戻ろうかとしていた頃。

俺たちのもとにこの上ない凶報が響き渡った。

「魔物の襲撃だ! 誰か戦える者はいないか!?」

「「「――――――」」」

その一言を聞いた瞬間、俺たち三人の意識は見事なまでに切り替わった。

俺たちが腰元の剣に手をかける中、さらなる情報が入ってくる。

どうやら町の中心部に、突如として複数の魔物が出現したらしい。しかもその数は10体以上。

城壁には門番もいるため、こんなことは普段なら絶対にありえない。

(というかそもそも、いきなり町の真ん中に魔物が現れるだなんて……いったいどうなってるんだ?)

何者かの作為を感じる。

普段と違う部分といえば、王女のシャロが街中にいることくらいだ。

となると、やはりシャロが狙われていると考えるのが自然。

そう考えたのはエステルも同じだったようで、俺たちは視線を合わせて軽く頷き合った。

「お嬢様を危険に巻き込むわけにはいきません。私とレスト様の一方がお嬢様の護衛、もう一方が魔物の対処に当たりましょう」

「ああ。それなら俺が――」

魔物の対処に当たる。

そう言おうとした直後、シャロが真剣な表情で告げる。

「いいえ、私も戦います」

「お嬢様!? しかし、それは……」

「魔物の数を考えれば、ここにいる三人全員で当たるのが確実です。違いますか?」

そう言い切るシャロの瞳には揺るぎない意志が宿っていた。

主張としては正しいし、こうと決めたら彼女の意見は変えられない。

俺は意識を切り替え、エステルに指示を出す。

「二手に分かれよう。俺とシャロがペアになって、退治にあたる」

「っ、かしこまりました。お嬢様をよろしくお願いいたします」

「ああ、もちろんだ」

これ以上の打ち合わせは必要ない。事態は一刻を争う。

俺たちは二手に別れ、魔物たちの退治に赴いた。

出現した魔物はほとんどがE~Dランク。さほど強力な個体はいない。

とはいえ、一般の人々にとっては十分な脅威だろう。中には戦える者も混じっているようだが、長くは持ちそうにない。

「行くぞ、シャロ!」

「はい、レスト様!」

俺とシャロは剣を抜くと、素早く魔物たちを切り伏せていく。

それを見た人々が、驚愕の声を上げた。

「おお、助けが来たぞ!」

「だけど子どもだぞ!? 大丈夫なのか!?」

「子どもってか……あれはもしかしてレスト様じゃないか!?」

そんな彼らの声は、俺たちの意識には届かない。

全神経を魔物の殲滅に集中させているためだ。

こちらにいる魔物たちをようやく倒しきったと思った、その直後――

「「ガァァァアアアアア!」」

――獰猛な叫び声と共に、二頭の魔物が出現した。

鋭い爪と、口から飛び出した巨大な二本の牙が特徴的な虎型の魔物。

ファングタイガー。Cランク下位に指定される強力な相手だ。

(今度はファングタイガーまで? しかも、明らかに狙ったようなタイミングで……)

頭の中で疑問が渦巻くが、事態はそれどころではない。

二頭のファングタイガーは、それぞれ俺とシャロのそばに姿を現している。

早くこちら側を片付けて援護に向かわなければ。

「ハアッ!」

「ガァッ!?」

俺は 纏装(てんそう) を発動し、近くにいた一頭を素早く切り伏せる。

そしてすぐさまシャロに視線を送った。

「くそっ!」

距離が少し離れている。ここから剣での援護は間に合わない。

(本当は隠しておきたかったが、もう風魔法を使うしか――)

しかし次の瞬間、俺の心配が杞憂だったことを思い知らされる。

ファングタイガーを正面に捉えたシャロは、剣を右手一本で構えたかと思うと、空いた左手を前方に突き出した。

そして、

「ホーリーアロー!」

「グゥゥ!?」

その言葉と同時に、彼女の左手から光の矢が飛び出す。

その矢は見事、ファングタイガーの右肩を貫いた。

(あれは、神聖魔法……?)

間違いない。

前回のガレウルフ戦では、神聖魔法の発動が間に合わず敗北を喫したシャロ。

その時の反省を活かし、わずか二週間でここまで使いこなせるようになったのだ。

先ほどの立ち合いは剣のみで行ったため、気付けなかったが……

(改めて、とんでもない才能の持ち主だな)

あとは一方的だった。

魔法の一撃でよろめくファングタイガーに対し、シャロは怪我をした側面から容赦なく斬りかかる。

「――セイッ!」

一刀両断とまではいかないが、高速で振るわれる刃が次々とファングタイガーの肉体を切り刻んでいく。

そして、ほんの数秒後には、

「グ、グルゥゥゥゥゥ」

力尽きたファングタイガーが、断末魔を上げながらその場にゆっくりと崩れ落ちていった。

俺の助けを借りるまでもなく、シャロは単独でCランクの魔物を仕留めたのだ。

勝利を手にしたシャロは、こちらを振り返ると満面の笑顔を見せる。

「やりました、レスト様!」

「ああ、見事だったよ」

その後、魔物が全滅したことを知った人々は、大きな歓声を上げるのだった。

◇◆◇

突如としてアルビオンの城下町を襲った魔物の襲撃。

それはレストたち三人の手で見事に退けられ、人々は安堵と喜びに包まれていた。

そんな喧噪の中、離れた場所からその様子を見つめる一つの人影があった。

フードに顔を隠したその女性こそ、今回街中に魔物を呼び出した張本人である。

シャロが狙われているのかもしれないと危惧したレストやエステル。

だが実際のところ、彼女の狙いはシャルロットではなくレストその人にあった。

その目的は、レストにまつわる あ(・) る(・) こ(・) と(・) を確かめるためだったのだが……残念ながら今回、そこまでは確認できなかった。

「【テイム】しか持たないはずの少年が突如として強くなり始めたと聞いて、もしかしたらと思ったのだけれど……杞憂だったのかしら? それとも、うまく尻尾を隠されている?」

彼女は首を傾げつつも、少年の実力自体は本物だったと見定める。

まだ結論を下すには早い。

「これは、もう少し踏み込んで調べる必要がありそうね」

そう笑みを浮かべると、彼女はするりと雑踏の中に姿を消していくのだった。