軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5.賭けの結果は

「ねえ、マルク。ミュリエルって私の妹なの?」

「……ブランシュ様はご存知ないのですか」

「ジョアンナ先生と話していて知ったけど、お母様達からは何も聞いていなくて」

本当にふざけた話です。さすがにマルクが驚いた顔をしています。

「……ミュリエル様はブランシュ様の妹君です」

「お母様はうっかりしていたのかしら。それとも私なんかに話す必要を感じなかったのかな。ねえ、マルクはどう思う?」

まずは使用人を掌握しなくてはね。

妹の存在すら教えてもらえなかった私はどのような立ち位置になるかしら。

「ブランシュお嬢様。ご自分のことを『なんか』などと言ってはなりません」

「……ごめんなさい」

マルクはメイド長と違って私をミュリエルより下には見ていないみたいね。

「……妹は私に似てる?」

「どうでしょうか。ミュリエル様は金髪に緑の瞳なので印象は違いますが」

私は銀髪に水色の瞳です。そう、妹は父の瞳の色と母の髪色を受け継いでいるのね。だから余計に可愛いのかしら。

「………私は 他所(よそ) の子なのかしら」

「ありえません。お嬢様が誕生した日、私は屋敷にいましたから、夫人がお生みになったと証言できますよ」

「でも、お父様もお母様も銀髪ではないし」

「前伯爵夫人が銀色の髪をお持ちでした。本館に肖像画がございますので間違いありません」

マルクはどうやら誠実な質みたい。真っ直ぐな言葉に嘘は無いのだと信じられます。

「マルク、ありがと」

「本当のことを申したまでです」

ただ、言葉に飾り気が無さ過ぎて女性にはモテなさそう。

ふと気が付くと、こんなにも雨が降っているのにまったく私達には雨粒が当たっていません。

「雨を防いでいるのはマルクの魔法なの?」

「はい。弓矢などを防ぐのは無理ですが、雨程度なら問題ありません」

「侍従ではなくて護衛騎士みたい」

「……」

「マルク?」

「騎士は高位貴族の子息を殴ったせいでクビになりました」

「あら、やっちゃったわね?」

「……何をしたか聞かないのですか」

「あなたが悪いわけではないのでしょう?でも、周りに話すなと圧を掛けられたのではなくて?本当の話が聞けないなら何も言わなくていいわ」

本当にマルクに非があるなら、伯爵家の侍従になどなれるはずがありません。

「……お嬢様は本当に9歳ですか?」

「レディーに年齢の話をするのはマナー違反よ?」

「失礼いたしました」

「ふふっ」

意外にも楽しい会話をしているうちに、本館にたどり着いてしまいました。

「あ」

初めての本館に若干緊張していた私に気付くことなく、マルクがあっさりと館に入るので思わず声が漏れてしまいます。

「どうされました?」

「……マルクはもう少し乙女心というものを学ぶといいわ」

「申し訳ありません?」

いいの。私の繊細な気持ちなんてマルクにはきっと理解できないから!

使用人達が私を抱えて歩くマルクに驚いています。

私の存在を知ってはいるけど、見たことがない人達ばかりだからでしょうね。

2階に上がり奥に進む。そして、

「マルクです。ブランシュお嬢様をお連れしました」

ノックをしてから私を連れて来た旨を伝える。

ガチャリと凄い勢いで扉が開かれました。

「ブランシュ、ミュリエルを助けて!」

涙に濡れたお母様が悲痛な叫び声をあげています。室内を見渡せば、お父様と、見知らぬ少年が2人、訝しそうな顔で私を見ています。

「ごきげんよう、お母様。それと、お父様に……そちらにいらっしゃるのはお兄様なのかしら」

マルクに下ろしてもらい、カーテシーで挨拶をする。

「何を悠長なことを!」

「だって、お兄様達とは初めてお会いしたのです。挨拶をするのは当たり前でしょう?

それに、ミュリエルとは誰ですか?」

「…あっ」

お母様はようやく状況が見えてきたみたい。

兄達と初めての顔合わせ。伝えてすらいない妹の存在。

「ブランシュ、すまない。言いたいことはたくさんあると思うが、まずはミュリエルを助けてやってほしい。君の妹なんだ」

お父様はお母様より図太い性格みたいね。

「何を仰っているのか分かりません。

私がどうやってその子を助けるのです?私は医者ではありませんよ?」

だって私はまだ9歳よ?そんな子供に何をさせようというのかしら。

「あなたは治癒魔法が使えるでしょう?!」

「まさか。私はまだ魔法を習える年齢ではありません。そのようなことができるはずないわ」

ね。皆聞いているわよね?私はちゃんと伝えた。年齢的に無理だと、習ってすらいないと伝えたの。

マルクやメイド長が信じられないものを見るような顔をしています。

ナタリーは今にも怒鳴り出しそう。

それを目で合図する。絶対にしゃしゃり出ては駄目だと。

「……そうよ、おまじない。あの時のおまじないをこの子に掛けてあげて!」

「それがお母様の望みなのですね」

やっぱりあなたはその道を選ぶの。

私は賭けをしていました。私の治癒魔法を知ったお母様がどう出るか。

優秀で優しい娘に今までのことを謝罪し、本館で暮らすように言ってくるか。

それとも、魔力過多症に苦しむ妹のために私を利用しようとするのか。

私はもちろん利用する方に賭けました。当然のことです。

「分かりました。では、 お(・) 母(・) 様(・) の(・) た(・) め(・) に(・) 、その子におまじないをいたしましょう」

『どうかミュリエルが元気になりますように』