軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゆったりとした夜

日暮れが近くなってきて、ナギがゆっくりと高度を落としていく。

砂漠で暮らすリザードマンたちの住処はもう少し先にあるらしい。無理をすれば暗くなる頃にはつけるはずだが、友好的かどうかはっきりしていないので、明るい時間に訪問することにしたのだった。

何もない砂漠にナギの影が走る。

もうまもなく着陸というタイミングで、砂から大きな蠍が数体飛び出し、慌てて逃げていった。踏み潰されてはたまらないと、待ち伏せをやめたのだろう。

歩いてきていたら、きっと襲いかかってきていたに違いない。

「砂漠には魔物が多いんでしたっけ……」

「うむ、歩いて渡るとなると、なかなか苦労する」

ニルが逃げていった蠍を眺めながら答えた。

やがて滑るように着陸しようとしたナギは、不意に再び上昇をする。

すると真下から、五メートルほどある長い生き物が飛び出してきた。飛び上がり、ナギの腹に噛みつこうとしたそれは、高度が足りず、そのまま砂の上にびたんと落ちる。

「おお、デザートデスワームだ。珍しい」

身をくねらせて地面に潜ろうとしたところで、上からナギが降りてきて、その体を鉤爪でがっしりと掴んだ。

頭をもたげ、無数の歯が生えた口が向いた瞬間、ナギの口ががぱっと開いて閃光が走った。

その一撃はデザートデスワームの頭を吹き飛ばし、砂漠の砂を巻き上げる。

ナギは動かなくなったデザートデスワームの上からどくと、ハルカたちが降りやすいようにベタっと砂の上にお腹をつけた。

ナギの怖がりは随分とマシになったようである。

五メートルくらいなら、餌の範疇として捉えているらしい。

「さすがは大型飛竜だな。小さい個体とはいえ、一撃か」

「これで小さいのか」

飛び降りたアルベルトがデザートデスワームの観察に行くと、首を伸ばしたナギがその胴体を咥えて、ずりっと引きずりアルベルトから遠ざけた。

「とらねぇよ」

アルベルトが呆れたように言うと、ナギは上目遣いでアルベルトや周りにいる仲間たちを観察したあと、そーっとデザートデスワームの死体を元の位置に戻した。

みっちりと中身の詰まったゴムのようなその生き物は、人間が食べるにはちょっと硬そうだ。しかしナギにしてみれば自分で仕留めたご飯に違いないのだろう。

全員が地面に降りると、ナギがよそを向いてお食事を開始する。昔は切り分けてあげていたが、今はワイルドにガブガブいけるようになった。

食べ終わったあとは、ハルカが作った大きな水球に頭を突っ込んで口周りを綺麗にするので、比較的いつも清潔が保たれている。

ちなみに、固いものでもゴリゴリ食べるおかげか、歯はいつも綺麗だ。イーストンによれば、抜けたり折れたりしても生えてくるらしいから心配はないそうだけれど。

ナギが食事をしている間に、ハルカたちは野営の準備を始める。困ったことに砂漠には薪が少ない。枯れ木はたまに落ちているのだけれど、夜の間持つだけの量を見つけることは難しそうだ。

仕方ないので料理は乾いたものを食べて、さっさと休んでしまうことにした。

まだ明るいうちにハルカは睡眠をとる。

そうして夜にはハルカが光源を作るつもりだった。

イーストンは夜目が利き、モンタナやレジーナは、夜でも生き物の纏う魔素を見ることができる。

光源がなくてもなんとかなるのだが、その三人だけに負担をかけるのは、ということで自主的に申し出たことだった。

眠っているハルカに声をかけたのはモンタナだった。頭の上にトーチが乗っていて、薄ぼんやりと光っている。

周りに遮るものもないので月明かりもよく届き、地面の起伏がなんとなくわかるくらいには明るい。

「結構休んじゃいましたね」

「そでもないです」

昼間暑くない砂漠は、夜になるとますます冷えこむ。眠っている仲間たちはみんな、ハルカの周りに集まっていた。途中でナギも近くにやってきたらしく振り返ると静かに呼吸しているナギのお腹が目の前にあった。

大きな火炎袋を体内に持っているナギは、見た目と違って体温が高いのだ。

どうりで快適に眠ることができたわけである。

焚き火がない分、起きている者もぼんやりと夜を過ごしている。

「お、なんかいるぞ」

アルベルトが砂丘の上を指さす。

ぐねぐねと動く、人っぽい妙なシルエットだった。それがゆっくりゆっくりと横へ移動している。

「ありゃあ踊りサボテンだな。夜になると水分が多い場所を探してゆっくり移動する。近づくと棘を発射してくるから気をつけないといかん。ただし体内に水分を溜め込んでいるから、水がなくなったら積極的に狩るべきだ。余裕があるなら、あいつらが移動してる方にまっすぐ向かってみると水場が見つかることがある」

「詳しいです」

「うむ、昔ここのリザードマン共に聞いた。ドルよりも頭が硬い頑固者が多いから、明日は気をつけんとな」

ニルは腕を組んで1人納得している。

「俺がその硬い頭かち割ってやるよ」

「アル、喧嘩しにいくわけじゃないので」

「いいぞ! その調子だ!」

「ニルさんも煽らないでください。アルが王様になったらどうするんですか」

「おもしろい」

「無責任なこと言わないでください」

軽口のやり取りも、互いの仲が深くなってきたからこそだ。

ゆっくりゆっくりと場所を移動していく踊りサボテンを眺めながら、ハルカたちはぽつりぽつりと雑談を続けるのであった。