軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

巨人族とのお話合いwithコボルト

「聞いてくること、何がありましたかね。ええと……、吸血鬼との接触……」

「それが一番だけどー、縄張りとか言ってるし、今のこの辺の勢力バランスとか聞いてもいいかも?」

「ああ、そうですね……」

相手を威嚇するような対応をした直後で、やや気持ちが興奮しているのか、ハルカもとっさにうまく頭が回っていない。コリンの提案にハルカはただ頷く。

「あとはねー……、話しながら考えよっか」

「陛下よ、話をするっていうなら、もう少し近づいてもいいんじゃないか? ここじゃあ声を張り上げないと聞こえんぞ」

今まで静かにしていたニルが提案をしてくる。

確かに交渉事を大声でするのも変な話ではある。

問題は近づいてもいい相手なのか、まだはっきりとしないところだ。攻撃の範囲内に入ったことが巨人たちへの刺激となって、戦闘に発展しても困る。

ハルカが悩んでいると、同じ懸念を持ったカナがニルに言う。

「無暗に刺激する必要もないと思うが……」

「いいや、話をするんだから、奴らがどれくらい信用できるかを測っておいたほうが良くないか? 不意打ちするような奴の言葉は信用に値せん。この先どう付き合っていくかの参考にもしたい」

ニルは武人であり、元々王である。

リスクとメリットを考えた戦場や政治での判断力は冴えている。

ただの気のいい老リザードマンではないのだ。

「……わかりました、距離を詰めましょう」

「よしきた、それじゃあ儂とコリンが護衛だな」

「え……、巨人相手かぁ……。……うん、まぁいいけどね。いざってときは訓練の成果を見せたいし」

ハルカ、ニル、コリンと人選が決まったところで、当たり前のように一歩前に出たアルベルト。

「じゃあ俺も護衛だな」

「儂としては、王っぽい威厳があるといいと思ったのだがなぁ」

「なんだよ、俺がいるとダメなのかよ」

「全員で行けばいいですよ」

アルベルトに続いてぴったりハルカのすぐ近くに寄ったモンタナ。

当然のように後ろにいるレジーナ。

カナが苦笑してフォルの頭をなでると、フォルは「ヴォ」と呆れたような声を出した。

眠たそうな目をしたイーストンがたらたらと歩いてくると、置いてかれては困るとナギも立ち上がる。

当然身構える巨人に、ハルカは告げる。

「話をするのには遠すぎるので、もう少し寄りますね!」

そこでいいと言いたい気分の巨人だったが、そんなことを言って怖がられていると取られてもしゃくだ。プライドが邪魔して言いだせずに、結局「好きにしろ!」と返事をした。

ハルカ達がぞろぞろと歩き出すと、困ったのはコボルトたちだ。

そっとマントの下から顔を覗かせてこそこそと相談し、追いつけなくなる前に慌ててマントを手に取ってたったか走りだした。

「待って待って!」

「おいてかないで!」

黙ってついてくればいいのに声を出したせいで巨人に見つかったコボルトは「ひゃっ」と声を上げたが、それでもおいてかれるよりはと、一生懸命短い足を動かして、ナギを除く最後尾にいたイーストンの足元にまとわりつく。

「ちょっと、危ないでしょ。足踏んじゃうからもうちょっと離れて」

「守って守って」

「巨人怖い」

「一緒にいて」

「なんで僕がこの子たちの世話しなきゃいけないの……?」

ただ流れに身を任せているだけなのに、いつの間にかコボルトたちに頼られているイーストンである。ハルカは振り返っていいなぁと思ったけれど口には出さない。

ちなみにコボルトたちだが、ハルカが魔素の塊であることを認識しているし、先ほどの魔法を見たせいで、改めてとても怖いと認識したので、おそらくはしばらくの間、近づいてくることはないだろう。

普通に暮らしていると、自分より小さなものが間合いに入ってくることがまずない巨人たちは、ハルカ達が遠慮なく距離を詰めてくるのを見て、色々なことを考えてしまう。

一人の魔法に圧された自分たちが勝てる相手なのか、何を話すつもりなのか、なぜおつまみ感覚で食べることのある弱いコボルトを連れて歩いているのか。

普段思考から行動までにほとんど時間差がないタイプだからこそ、じっくり考えるとだんだん訳が分からなくなってくる。

まさか近づいて攻撃してくるのではないか、そこまで考えたところで、自分たちが相手を恐れていることをようやく自覚して、ぎりっと奥歯を噛みしめた。

「ここなら声が届きますか?」

そんな気持ちを整理している巨人たちの前で、ハルカは足を止めて声を発した。

張り上げるほどでなくても声が届く距離だ。

「聞こえる。俺たちに何の話があるっていうんだ」

巨人もこの距離になれば声は張り上げない。それでも大きく聞こえるのは体格上仕方のないことなのだろう。巨人同士で話すことはあっても、ちび共と話すことに彼らは慣れていない。

ブロンテスがいかに紳士で気を使っていたがわかるところだ。

「最初に大事なことを。最近吸血鬼がやってきたりしたことはありますか? あるいは戦ったり」

「知らねぇな。こっちから縄張りを侵してきたのは最近じゃお前らだけだ」

「反対側からは?」

「あっちはな、違う部族が住んでんだよ。俺たちの戦争相手は同じ巨人族だ。ちび共の相手なんかしねぇ」

「……戦争されてるんですか?」

「戦争、そうだ、戦争だ。ここ数百年ずーっとやってんだよ」

攻撃的な種族であるという認識はあったが、まさか巨人同士でずっと戦争しているとはとハルカが驚いていると、カナが少し声のトーンを落として呟く。

「人と一緒だなぁ……」

嘆くような呟きだった。

長年生きて、多くの人同士の戦争を見てきたカナの、重たい一言である。

そしてそれにハルカも気づかされる。

そういえば元の世界でも、人同士はよく戦争を起こしていたなと。

むしろ数百年戦い合って、未だに決着もつかずに元気にやってる辺り、人同士の戦争よりは、ルールやら秩序がある可能性すらあった。

「だから反対側の話が聞きてぇなら、俺達じゃなくて向こうの部族に聞け。川挟んであと二つ部族があるからな。話はそれだけかよ」

「ああ、えっと……」

ハルカはちらりとコボルトたちの方を振り返り、僅かに体を震わせているの確認してから巨人へ問いかける。

「他部族と戦争をしているのなら、コボルトを攻撃する必要はないのでは?」

「攻撃……? 俺たちの縄張りでうろついてるから、つまんで食ってるだけだが」

あ、やっぱり食べるんだ、となったハルカはこの後どう言葉を続けていいのかまた悩んでしまうのであった。