軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

穏やかな人柄

「すまない、話が重たくなってしまったな」

表情を柔らかくして謝罪したカナは、エニシとユーリのことを気にしているようだった。子供に聞かせていい話だったのかを未だ気にしているのかもしれない。

「いえ、私が聞いたことですから。仲間達にも情報を共有しておきます」

「ああ、そうしてもらえると嬉しい。ただ、ラルフ支部長にも伝えたことだが、あまり話を広めないでほしい。それによって街の人々が不安に思うことは避けたい」

「強力な吸血鬼なんて、知っていたところで避けようのない災害みたいなものですからね」

エリの同意にその場にいる者たちが首肯する。

「力は振るうものの意思次第の部分はあるのだけどな……。さて、話を変えよう!」

ぽつりと呟いてから、カナは明るい顔を作って声のトーンを高くした。

「実は街へ入る前に大きな飛竜を見たんだ。あれはハルカさんのところの仲間だろう? 近くへ寄ったら頭を下げて撫でさせてくれた。賢い良い子で羨ましい」

「ナギですね。大きく育ちましたが、本当におとなしくてよく話を聞いてくれる子なんです。撫でてくださってありがとうございます」

「愛されて育ったのだろうな。実は私も地竜を相棒にしていてな、名をフォルというんだが……、今はナギと一緒に外で待ってくれているはずだ」

「カナさんも竜を! 後で見せてもらっても?」

「もちろん、ぜひ撫でてやってほしい。私の百年来の相棒なんだ。ナギと何か話しているようだったから、気は合うのだと思う」

この会話を普通に聞いている者が半分、おかしな話だと思っている者が半分。

前者はノクトとユーリ、後者はエリ・カオル、それからエニシだ。

常識の指標がどこにあるかがなんとなく見て分かる。

「南方大陸には地竜が多いんだ。飛竜にも乗ってみたいのだけど、浮気をするとフォルの機嫌が悪くなるからなぁ……」

「それなら、フォル君も一緒にナギの背に乗ってみたらどうでしょう?」

「いいのか? ああ、楽しみだ、ありがとう」

キャッキャと女性らしく楽しい会話をしているように見えるのに、中身は少年のような色気のないものだ。冒険者としては正解かもしれないけれど、傍から見て想像するような内容になる気配は一切ない。

しばらく竜の話を楽しそうにしてから、はっと思い出したようにカナがノクトへ話しかける。

「そうだ、ノクト。なんでハルカさんを弟子にしたんだ? 今まで志願者がいても断り続けていただろう?」

「別に大したことじゃないですよ」

「それが聞きたいんだ」

ハルカとしてもちょっと興味があるので、大人しく話の経過を見守る。

椅子をずりながら近づいてくるカナに、ノクトは苦笑した。

「クダンさんがね、変な奴がいるって僕に言ってきたんですよ」

「クダンが? ああ、私もクダンからハルカさんの話を聞いたんだった」

なんと言われていたのか気になるけれど、話の腰を折るわけにもいかず、ハルカは逸る気持ちを抑え込んだ。

「それで実際に見てみたら、この姿で、治癒魔法をつかえてって……、興味は持ちますよ」

ノクトは出会ってすぐの頃、ハルカに獣人の信じる神の話をした。

太陽と生の神オラクルと、月と死の神ゼスト。

そして、ハルカがそのゼストにそっくりな見た目をしているとも話している。

「……尋常ならざる力を秘めている。でも、中身はなんというか、全然釣り合ってなかったんですよ。あとは、話して人柄を見て、まぁ、面白そうだなと」

「なるほどな。ハルカさん達はクダンも知ってるんだな。北方で冒険者をやっているのなら、テトにも会ってるだろう? 私は昔クダンとテトと、それからユエルと、四人でチームを組んでいたんだ。ユエルに会えば全員だな」

「会ったこと、ありますよ?」

いきなり戦闘になって惨敗したとまでは言えないけれど、事実は事実だ。

「そうなのか! ユエルは美人やかわいい子が好きだから優しかっただろう?」

「……はい、ええと、はい、多分」

「……あ、あの、あれだ。ちょっと変わってるけど、悪い奴ではないんだぞ、本当に。価値観は独特だし、言葉は足りないけど……、ええと、頼めば言うことを聞いてくれることもあるし……」

だんだん怪しくなってくる保証は、ユエルの人柄をよく示したものであると言えよう。悪口は言えないし嘘もつけない、カナという人間らしいフォローだった。

「わかります、ええ、結果的には悪いことは何もなかった……と思いますし、はい」

「そうか……、なんだかすまない……」

「いえ、こちらこそ……」

二人して項垂れてる姿が面白かったのか、ノクトがふへっと噴き出すように笑った。他の面々も笑いをこらえていたし、ユーリはニコニコとハルカのことを見守っている。どっちが保護者かわかったものじゃない。

そんな微妙な空気の中にノックが聞こえてくる。

「あ、はーい?」

「入るですよ?」

「ああ、モンタナ、お帰りなさい。早かったですね」

「なんか、すぐ全部売れちゃったです」

心なしかほくほくと嬉しそうな表情に見えてハルカも微笑む。

「良かったですね」

「です」

モンタナの視線がちらりとカナに向いたのを確認して、ハルカは慌てて紹介をする。カナはというと、もう立ち上がって挨拶を待っている状態だった。

「こちら、特級冒険者のカナ=ルーリエさんです。冒険者ギルドで出会いました」

「カナ=ルーリエです」

「モンタナ=マルトーです。【竜の庭】の一級冒険者です」

この後、同じようなやり取りは、最後に警戒心丸出しのレジーナが帰ってくるまで何度も繰り返されることになる。

その都度立ち上がって丁寧にあいさつをするカナは、やはり特級冒険者には似つかわしくない腰の低さをしていた。