軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

更なる来客

会議が終わり三々五々に人が散っていくのをハルカはぼーっと見送っていた。

あの後発言をすることは殆どなかったけれど、騎士が来てからの商売のことや、騎士のための家の場所、ドラグナム商会の竜が離着陸する場所などで、商人たちが論戦を交わしたものだから、聞いているだけで頭が疲れてしまったのだ。

さて、何のためにここへやって来たのか、本来の目的すら忘れてしまった。

人が減っていく中、ハルカの知人ばかりがその場に残ったのを見て、ラルフが尋ねる。

「ハルカさん、俺に何か用事があったんじゃないですか?」

「ええ、まぁ、一応そんな感じです。私はただ、街にナギの離着陸する場所を作ってくださると言うので、そのお礼をと。それから、サラは元気にしているかなと思いまして」

「あら、私に会いに来てくださったんじゃないんですの」

「ヴィーチェさんもお元気そうで何よりです」

いつもの調子に戻ったヴィーチェに軽口を叩かれて、ハルカも気を抜いて笑って返事をする。隙あらば体を触ってこようとすることを除けば、彼女とは概ね良好な仲だ。

「お礼なんて結構ですよ。いつもナギちゃんが街の外で待機しているのがかわいそうだと、街の住人からも声が上がっていたので。それから、サラさんのことですね。俺はあまり関わっていませんが……」

「うちのアルビナが気にかけてるみたいですわ。ね、エリ?」

ヴィーチェが引き継いでエリに話を振る。

「そうね。ちょっと発破をかけてやったら、なんか勝負をして、仲良くなったみたいよ」

「勝負、ですか?」

「同い年でもそれなりにできる子は他にもいるって教えてあげたの。実力を認めた相手だからって、冒険者の先輩として気にかけてるみたいね。サラちゃんもちょっと頑固だけど基本的には穏やかな子だから、相性は悪くないみたいよ」

先ほどまで少し緊張しているようだったエリも、今はいつもの調子に戻っていた。

発破をかけてやった、というのがちょっと気になるところだったが、結果的にはうまくいっているわけだからと、ハルカは無理に納得をする。

過保護なばかりではだめなのだと、この間反省したばかりなのだ。

手段についてはあまり問わないことにした。

「気にかけてもらってありがとうございます」

「いいのいいの、一緒に勉強した仲だし。……あ、ノクト先生、またそちらに行って魔法の話を伺っても?」

「構いませんよぉ。ユーリとの勉強の片手間になりますが」

「まったく、最近はそっちばかりですわね」

ヴィーチェが肩をすくめながら冗談めかして言うと、エリも笑って答える。

「機会は逃したら次があるかわかりませんから」

「ま、その通りですわね」

そんなやり取りをしていると、人がたくさん出てきたことで、中の話し合いが終わったのを察したカオルたちが、そーっと扉を開けて中へ入ってくる。

咎められないのを確認したエニシは、やや早足でハルカの近くへ陣取り、静かに話に耳を傾けた。

「あのー、すまないんだけどね、ちょっといいかな」

話の流れを切るように声を上げたのは、コリンの父であるショウ=ハンだ。

「うちの娘も街に来ているかな? あれ以来顔を出してくれていないんだけれど」

「あー……、はい、来てますけど」

「怒っている?」

「ええ、まあ」

街に来たのに話題にも出さないのがその証拠だろう。

アルベルトと籍を入れられたことはともかく、勝手にされたことには相当お冠だった。

「そうかそうか、ま、元気ならいいんだ。それくらいは覚悟していたからね」

「とりなしておきましょうか?」

「あはは、いらないいらない。あれはどう考えたってこっちが悪いからね。うちのお姫様のご機嫌が直るのを待つさ。でも何か手が必要になったら声をかけてほしい。協力はするからね」

「ありがとうございます、覚えておきます」

ちゃっかりと付き合いの強化を図るショウと、それをさほど意識することなく受け入れてしまうハルカ。この辺が街の商人達が気にしている部分であるが、関係上どうしようもないことだとも言えよう。

仲間の親族と良好な付き合いをするのは普通のことであるし、信頼できる商人と縁を築くのは冒険者として必要なことの一つである。

このように、場に残った者たちで、情報交換や近況の報告を続けていると、またも会議室の分厚い扉がノックされた。

「どうぞ」

支部長であるラルフが入室を促すと、先ほど受付に戻ったはずのドロテが顔を出す。

「報告です。地竜に乗った冒険者がギルドにいらしています。身分を確認したところ、どうも特級冒険者のようで……、支部長にお会いしたいと」

「クダンさん、ではないんですよね」

表情をひきつらせながらラルフが問い返すと、ドロテは頷いて答える。

「カナ=ルーリエ、と名乗っておられました」

「……ええっと……、聞き覚えがあるな……」

ラルフが記憶を手繰っているところに、ノクトが助け舟を出した。

「南方大陸を拠点とする冒険者です。【 深紅の要塞(クリムゾンフォートレス) 】と言った方が有名かもしれませんねぇ。一応この【独立商業都市国家プレイヌ】の建国にもかかわっていますよ」

「……すぐに会います。この場……、でいいか。皆さんは一度この場の解散をお願いします」

話の途中だったけれど、ラルフのお願いを聞いてその場に残っていた者もぞろぞろと会議室から出ていく。ハルカも合わせて出ていこうとすると、後ろから「ハルカさん」と声をかけられる。

「はい?」

「申し訳ないのですが、同席していただくことは可能でしょうか」

チラリとノクトを見ると、椅子に座ったまま立ち上がるそぶりすらない。

「……師匠は残るんですか?」

「顔馴染ですからねぇ、出ていけと言われなければいますよ」

特級冒険者は変な人物ばかりだ。

しかしこれまで聞いた話によると、今来ているカナ=ルーリエという人物はかなり真っ当であるような気がしている。

「わかりました、残ります」

ラルフには来たばかりの頃に散々お世話になっている。

これぐらいのお願いは聞くべきだろうと、ハルカは首を縦に振った。