軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

遺跡お馬鹿

青い顔をしたヨンがようやく静かになって、ハルカたちはぽつりぽつりとシーグムンドと話し始める。

「ジーグムンドさんはこの辺りで活動されているんですか?」

「遺跡のある場所ならどこでも行くが、必然的に〈アシュドゥル〉に滞在する期間が長くなる」

「ふーん、それで遺跡発掘ばっかりしてて、いつも金欠なんだー」

「……まぁ、そうだ」

経済状況を詳らかにすることを恥ずかしいと思っているのか、ジーグムンドは少しためらってから肯定した。先ほどそのようなことをすでに言っていたので、今更ごまかしはきかない。

「もしかしてさー、武闘祭も賞金目当てで出たの?」

「……そうだ」

ジーグムンドはアルベルトをちらりと見てから頷く。

「遺跡発掘ばっかしてる割に強いよな」

「元は普通に冒険者をしていたのだ。遺跡発掘に携わるようになったのはここ五年か。ヨンはこんなだが、遺跡の魅力を教えてくれた恩人でもある」

「そうだぞ……、それを無茶苦茶に振り回しやがって……うぇえ……」

黙っていればいいのに口を挟んだヨンは、すぐに両手で口を押さえた。

「遺跡発掘楽しいです?」

「楽しい。出てきたものが何に使われていたのか、かつてはどんな街がここにあったのか。今とはずいぶんと違った暮らしをしていたようだからな。できるのなら当時の光景を見てみたい」

低い声で饒舌に語る姿は、ジーグムンドの印象からはやや離れたものだった。

しかし、本当に遺跡の発掘が楽しいのだということだけは十分に伝わってくる。

「いいですね、熱中できることがあるのって」

ジーグムンドがちゃんと年下に見えてハルカは思わず表情を柔らかくした。

これまでは真面目で強い、くらいの印象だったのだが、一気に人間らしさを感じられた。

「こんなこと言ってるけどな……、こいつ最初、遺跡の中で大槌ぶん回して遺跡ぶっ壊しかけたんだからな……」

「……昔の話だろう。それにアンデッドからヨンたちを守るためだった」

「つまらなさそうについてきて、敵が出たからって張り切って振り回したくせに……、あー、やめろやめろ」

くいっと体が持ち上げられて、ヨンは慌てて手足をばたつかせた。

ようやく調子が戻ってきたのに、またグルんグルん振り回されたら、今度こそ胃の中身を噴き出しかねない。

「……ねぇねぇ、遺跡で珍しいもの見つけた時の販売経路とか確保出来たら嬉しい?」

ふと思いついたことがあったコリンが、ほっと息を吐いたヨンに話しかける。

ヨンはコリンの方を向いて、訝し気な表情を浮かべる。

「そりゃそうだよ。そうしたら無駄に露店開いたり、依頼受けたりしなくてよくなるからな。でもどんなのが欲しいか言ってくれないと難しいけどな。遺物ってひとくくりにしても、歴史的な資料だったり、魔道具部品だったり、美術品だったり、まぁ色々だからな」

「美術品は……いいかなぁ。前の二つの方が大事かも」

「……遺物って結構値が張るものもあるけど大丈夫か?」

「うーん、今は聞いてみただけだけど、そのうちお願いするかも。うちの拠点って飛竜便の拠点があるから、直接それで送ってもらってもいいし……」

「拠点? 飛竜便? ……おい、ジーグ下ろせ」

ジーグムンドがパッと手を離すと、ヨンはしっかりと着地して自分の足で歩き始める。

「どこの 宿(クラン) なんだ?」

「【 竜の庭(ドラゴニックガーデン) 】って 宿(クラン) 」

「……どっかで聞いたような」

「〈オランズ〉の東にある森の中の……」

「あああー!」

ヨンが突然大きな声を上げて、立ち止まった。

「思い出したぞ、お前ら〈忘れ人の墓場〉に拠点作った奴らだろ! な、ななな、あそこ遺跡あるんじゃないか? 文献によるとかなりでかい街があったはずなんだよ。それも神人時代だけじゃなくて、その前の時代にもだ。ちょっと遊びに行ってもいいか? ちょっとだけでいいから、あんまり穴とか掘らないから」

あんまりとか言ってる時点で掘る気満々だ。

少年のような姿とは言え、詰め寄ってくる勢いにさすがのコリンも少しだけ体を引いたし、アルベルトは武器に手をかけていた。

そんなヨンの体が、ふわりと宙に浮きあがる。

親猫に運ばれる子猫のように、襟首をジーグムンドにつかまれていた。

「あああ、ジーグ、邪魔すんなって。あそこずっと気になってたけど、危ないからっていけなかったんだ。さっきまでの態度なら謝る、悪かった、土下座もする、な? ちょっとだけ、ちょっとだけ!」

「ヨン」

「おい、お前からも頼んでくれジーグ、仲がいいんだろ!?」

「見苦しいからやめろ」

「あああああ」

ブルンブルンと先ほどより勢い良く振り回されたヨンは、最後には「ぐえぇ」と声を出して体の力を抜いた。意識を保てなくなってしまったらしい。

「悪かったな」

「いえ、あの、ヨンさんは大丈夫ですか?」

「たまにやってるから問題ない」

たまにこんな扱いをされている割には仲がいいし、ヨンが懲りた様子もなかった。

罰とか仕置きとかそういう意味合いではなく、本当にここまでしないとヨンが黙らないということなのだろう。

ある意味あっぱれな遺跡馬鹿である。