軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

報告めぐり

ハルカはテロドスが帰った後、拠点に暮らす人々を集めて会談の内容を共有した。

話したから不安がなくなるかといえばそんなことはないのだろうけれど、秘密にされていては気になって仕方がないだろうとの判断だ。

基本的にはハルカがやってきたことなどへの確認。それから混沌領の 破壊者(ルインズ) を警戒して、ここに戦力をおきたいという提案だ。

前者は滞りなく済んだし、後者はお断りした。

目に見える結果だけを見れば、これまでと何も変わらないということになる。

そもそもある程度覚悟をしてここで暮らしている者たちばかりだから、現状では何の混乱も起きなかった。テロドスの提案を思い出しながら、人が増えてくればそうもいかないのだろうなと、ハルカは一人考える。

ヴィーチェから提案されている【金色の翼】から洩れたような女性たちをこちらで、という話も改めてどうするか考えなければならない。ハルカとリザードマン達の関係を知らないにしても、大きな勢力と広い情報を持っているはずのオラクル教が、この拠点と混沌領に対して不安を抱いていたわけだ。

もし実現するようなことがあれば、オラクル教の懸念はきちんと伝えるつもりだった。

「モンタナ、私の説明変じゃありませんでしたか?」

「大丈夫です。それに、みんな心配してないですよ」

「命の危険にさらされているんですから、普通は心配だと思うんですが……」

「街に暮らさない時点で、ある程度覚悟してるです。ハルカがいつも拠点に戦力を残して出かけてるのも分かってるですよ」

「……そうですか」

もし話をしてここから離れるというものがいれば、ハルカはどこへでも送ってやるつもりでいた。

しかしモンタナの言う通り、今回の話を聞いたところで皆ここから離れる気持ちはまるでないようだった。

自らの力に自信のあるタゴスは当然気にしない。カーミラに心酔している元犬たちも同様で、フロスは他に行くあてもないからこれも同じ。

不安に思うかなと思ったサラの両親も、帝国から来たナディムとシャディヤも、二言三言交わしただけで済んだのは、ハルカにとって意外だった。

ただ、他の面々にとってはそうではなかった。

ハルカが気にしすぎて鈍い部分があるのと同時に、街で暮らした経験が短いせいで判断材料が足りていない。

ハルカは街で暮らす人が、そこを出て得体もしれない僻地に移住すると決める覚悟の量を理解していないのだ。 破壊者(ルインズ) が攻めてくるかもしれないぞ、なんて脅しは今更である。

柵がないような場所に暮らしているのだから、野生動物だろうが魔物だろうが賊だろうが 破壊者(ルインズ) だろうが、何がこようがリスクはさほど変わらない。どれが来たところで自分たちだけでは命を落とすことには変わりないのだから。

そして意外だったのはドラグナム商会の従業員まで気にしていないことだった。

いつもスコットとばかり話をしていて挨拶ぐらいしかしたことのなかった彼らは、ハルカの話を聞くと、はははと笑い飛ばした。

「竜といっぱい触れ合えてうれしいんですよ! こんないい場所 破壊者(ルインズ) なんかのために絶対に出て行きませんよ!」

「そ、そうですか……」

「これからもっと増えるかもしれないんですよね!」

「まあ、可能性は、あるかもしれませんが……」

「楽しみにしてます!」

これはこれで元犬たちにも劣らぬ狂信者である。ハルカも竜を見るのは好きだが、彼らからはそれ以上の執着じみたものを感じた。

最近飛竜たちの鱗がつやつやと輝いているのは、おそらく彼らの愛情によるものに違いない。

そこからもここぞとばかりにナギは大きいから磨きがいがあるとか、卵から育てたいとか、それはそれは情熱的にお話しされたのだが、とにかく彼らが気にしていないということが判明したので退散することにした。

拠点をぐるりと回って全員に話を通してから応接室へ戻る。

「先ほどのテロドスさん、実直な方でしたね。私が選んでもいい選択肢を教えてくれていたようにも思えます」

「落ち着いた人です。嘘もつかないですし、色々考えてたです。コーディさんがあの人をよこした理由、なんとなくわかるですよ」

「なんです?」

「周りが文句言えないですし、ハルカと僕たちとも相性がいいです」

「……そうですか?」

「同じことを嘘を弄して話されたらどうなってたです? もしシュートって人みたいな使者だったらどうなってたと思うですか?」

どちらだったとしても、途中で乱闘騒ぎになる可能性は十分にあっただろう。

そう考えると本当にうまい人選だった。

「そういえば、アルベルトやレジーナが珍しく手合わせしたいと言い出しませんでしたね。なんででしょう?」

モンタナは歩きながらやや間を空けて答える。

「……難しい話いっぱいされて、それを考えていたのかもしれないです」

「……二人が成長しただけかもしれませんね」

モンタナの言うことももっともだと思いつつ、ハルカは一応別の可能性について示唆して応接室の扉を開ける。