軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

先行き不安

この時期になると北方大陸には、本格的な冬が訪れる。とはいえ、平地を移動するのに困るほどの雪が積もることはごく稀だ。高い山を越えるとなると警戒する必要もあったが、幸いルート上にはそこまでの高山は存在しない。

神聖国レジオンを北に行くと、少しずつ寒さが厳しくなってくる。王国の北方などは冬になると、大雪でどこにも出掛けられなくなる。

ドットハルト公国の首都シュベートは、レジオンやプレイヌよりも南方に位置しており、冬になってもチラホラと雪が降るくらいで、北の二つの国と比べるとやや穏やかな気候だ。

教都ヴィスタに到着した頃は、まだ広葉樹の葉が色づきはじめた頃であったが、ここ一週間ほどで、樹木も随分と寂しげになってきている。

寒さが厳しくなってきたものだから、ハルカ以外の三人は最近厚手のマントを購入していた。羽織る時に何度か折り畳んで使うタイプのもので、水も弾くように加工されている。広げて端同士を結び、木の棒でピンと張れば、簡単なテントを作成することもできるものだ。値段は多少はったが、旅をする上では便利な代物だった。

旅をする上ではできるだけ荷物は少ない方がいい。

竜車や馬車を使えるようなお金のかかった旅であれば、そんなことをいちいち気にする必要もなかったが、一般的な旅においては荷物が多いと嵩張り、疲労も早くなる。

一つの品物で、いくつもの役割をこなせるアイテムが重宝されるのは、そういった理由からだった。

例えば食器は火にかけられるものしか持たないし、食べ物も乾燥させたものを持つようにしている。

飲料水に関しても最低限の入れ物は持っているが、ハルカが魔法で出せばいいのでたくさんは持ち歩かないようにしている。

ところでハルカだけが新しいマントを買わなかったのには理由がある。

みんなが季節に合わせて服装を調整する中、ハルカはいつもヴィーチェにもらったローブを羽織っている。このローブ、どうやら魔法のかかった品物であるようで、着ていると外気の影響を受けにくい。

薄々普通の品物ではないような気がしていたが、狼の牙で傷ついた部分を繕っている時にモンタナがそのことに気がついた。その時はほつれを簡単に直したくらいであったが、ヴィスタについてからきちんとした店に依頼して修繕をしてもらったところ、えらく高くついた、らしい。

らしいというのはコーディが経費で払ってくれたおかげで、正確な値段がわからなかったからだ。「魔法の品なら先に言ってほしかったなぁ」と返却の時に言われたが、本人も普通の品物と修繕費が大きく異なることなんて知らなかったものだから、すみませんと謝ることしかできなかった。

元々の値段がいったいいくらだったのか、ヴィーチェに聞いてみないとわからないのだが、その返答を聞くのが少し恐ろしかった。

話は戻るが、できるだけ軽装で、という観点から見た時、ギーツの準備はダメダメだった。明らかに必要のないものをたくさん持っているように見える。馬車に揺られて帰るような装備だ。

絶対にそれに気づいているはずの仲間達はというと、自分で運ぶんならいいんじゃない?とでも思っているのか誰も注意をしようとしない。

自分が言うしかないようだと悟ったハルカは、諦めてギーツに話しかけた。

「ギーツさん、荷物が多くないですか? いらないものが入ってませんか?」

「いや、そんなことはないが?」

何を言っているんだという顔をして、ギーツが不思議そうに返事をする。

「馬とか、連れて行きませんから、ずっとそれを背負って歩くんですよ? 大丈夫ですか?」

「ははは、そんな心配か。大丈夫だとも。私も武門の家柄、フーバー男爵家の嫡男だ。そんな心配は逆に失礼だぞ」

「……では、せめて靴だけは替えましょう。新しい靴で旅をすると、足を痛めます」

「……使い古した靴ではあちらについた時に見窄らしくはないかな?」

「どうせ旅をしている間に靴は傷みますから……。せめてそれを荷物にしまって、いつもの靴を履いてください」

「なるほど、それは名案だ。では靴を履き替えてくる」

ギーツは自分の部屋へ歩き出そうとして、それから少し考えて、リュックサックを一度その場に下ろした。

「重いからね、一旦下ろすから見ておいてくれたまえ」

語るに落ちるとはこのことだ。やはりこのリュックサックは重いらしかった。しかし忠告したのに直さないのだから仕方がない。さっていくギーツの後ろ姿を見ているハルカにコリンが話しかける。

「あの荷物ねー、私もさっき注意したんだけどおんなじようなこと言われたの。もう仕方ないわよ」

ただ突き放していたわけではなく、彼らもちゃんと注意してくれていたらしい。繰り返し言われて直さないのなら尚更処置なしだった。

機嫌よく靴を履き替えて戻ってきたギーツは、先ほどまで履いていた靴をリュックサックに引っ掛ける。一瞬中身が見えたが、土産物が入っているように見えたのは気のせいだと思いたかった。

「よし、それでは出発しようじゃないか、諸君!」

元気よく先を歩き出したギーツに一行は不安を隠しきれない。元気のない四人組の後ろ姿をサラも心配そうに見送るのだった。