軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

偉いらしい

ハルカは話を聞くときの最低限の要員として、コリンとモンタナを招集するように頼んだのだが、お茶が出てくるのを待っているうちに次々と応接室の扉が開いて人が入ってくる。

この応接室には、一応高そうに見えるソファとか、一通りのそれっぽいものが揃えられている。ただ残念なことに、本棚は空っぽだし、使い込めば渋く光りそうな木材で作られたデスクも未だに新品さながらだ。

一応ハルカが使うことを基準に作られているのに、本人が高い椅子やデスクを使うことにしり込みして使わないのが悪い。宝の持ち腐れである。

最初に呼んだ二人プラス、戦闘大好きアルベルトとレジーナ、それにちゃっかりユーリがくっついてきた時点で応接室は手狭になる雰囲気が出始めていた。ハルカ・モンタナ・コリンがお客人に相対するソファに座り、ハルカの膝の上にはユーリが座っている。後ろに腕を組んだレジーナと暇そうに窓の外を見るアルベルト。

興味がないならば外にいればいいのに、仲間外れが嫌だったようだ。

やがてノックの音の後に、眠たそうな顔をしたイーストン。立場的に来ないほうがいいだろうに、わざわざ誰かに聞かされてやってきてくれたようだ。寝ぐせなのかほんの少しだけ髪が跳ねている。その後ろには珍しくカーミラが、こちらはほぼ目が閉じたままついてきた。

カーミラはふらりと部屋に入ると、ユーリの姿を確認してふらりと寄ってくる。そうしてハルカの膝から抱き上げ、そのままデスクの前にある椅子に腰かけた。膝の上にはユーリをのせて抱きしめ、そのまま眠りそうな態勢だ。何をしに来たかわからない。

窓の外には様子を見に来たのかカーミラを見に来たのか、元犬たちとフロスがそーっと顔を覗かせている。

好き勝手にやってくる面々にシュートはいらいらとしているようだったが、早い段階でテロドスに口を出すなと言われたからか、拳を震わせながらおとなしくしていた。

それからようやくお茶がきたのだが、増えた人数分足りずに、ダリアは再びその準備に戻る。

「ええと、なんだかいっぱい来てしまったのですが、大丈夫でしょうか」

しかも誰一人として武装解除していない。ハルカからしたら自分たちの家だから当たり前なのだが、公的身分のある人物に対してやることではない。問題があるとすれば、レジーナがちゃんと説明しないせいで、全員になんかめんどくさそうなのが来たからとりあえず集まった、という認識しかないことである。

「……聞かれて困るような話はない」

「すみません、次々と」

ハルカが軽く頭を下げたところで、ずりずりと何かを引きずる音が聞こえて、ゆっくりと扉が開いて顔を出したのはノクトだ。途中まで障壁に乗って飛んできたくせに、歩かないとみんなにいろいろ言われるので、わざわざ廊下の途中から尻尾を引きずって入ってきた。

子供みたいな捻くれた手を使う百数十歳である。

「たくさん人がいますねぇ……」

「あ、師匠も来たんですか」

「なんか変な人が来たって聞いたのでぇ、面白いかなぁと。よいしょっと。あ、暖かい季節になったのに、本当に全身鎧きてるんですねぇ」

ノクトはそのまま障壁を空中に作り出し、掛け声とともにその上に座った。尻尾をだらんと垂らして、足はプラプラしている。

「テロドス様……!」

ノクトの変な人という言葉がテロドスを指していることは明白だった。テロドスに上申するようなふりをしながら、シュートの目は明らかにハルカ達、特にノクトを責めている。

「シュート、何度言えばわかる。外へ出るか?」

流石に自分の味方をしてくれるだろうという思惑が外れ、シュートはこぶしを握る。オラクル総学院を優秀な成績で卒業し、栄誉ある神殿騎士第三席の付き人になったというのに、馬鹿にされてばかりいるのが許せなかった。

テロドスが馬鹿にされるというのは、すなわちその付き人であるシュートが馬鹿にされるということに他ならない。

それでもテロドスに言われれば黙って座っているしかない。

名門の子息でプライドの高いシュートが黙らされるくらいには、【神聖国レジオン】において、神殿騎士第三席という身分は重たいものだった。

「うちの者が失礼した。人が増えたので改めて名乗らせていただこう。私は【神聖国レジオン】神殿騎士第三席のテロドス=ジュベイルだ。この度はいくつかの質問と提案を持ってやってきた」

その身分を名乗られてピンときているのはハルカたちの中には半分もいない。

ノクトが微笑み、コリンが気を引き締め、イーストンが目を細めた。それからお茶を持って入ってきていたダリアが驚いた顔をしてみせたぐらいか。

そしてなぜかアルベルトが先ほどからテロドスの鎧をじろじろと見始めた。

「……神殿騎士第三席というのはですねぇ、ハルカさん。大陸全土に散らばるオラクル教会所属の騎士の中でぇ、三番目に強い人という意味ですねぇ」

「なるほど、数字がついているということはおそらく身分のある人なんだろうと思っていましたが」

「貴殿らは、あまり我々の組織に詳しくないようだな。コーディ卿と懇意にしていると聞いていたのだが」

ハルカが何と答えようかなと思っていると、アルベルトが口を開いた。

「おい、思い出したぞ。その鎧、あいつも着てたじゃん、あのー、テト……さんに、特級冒険者になるために挑んで窓から投げ捨てられたやつ」

「……ああ、確かに似ていますね」

記憶を手繰ると、ハルカの脳内のその時の映像が思い出される。鎧をぼこぼこにへこまされて、シルキーにポイッと放り捨てられた全身鎧の人物だ。

「……この鎧は国から支給されているものだ。そちらの【鉄砕聖女】の着る修道服と同じだな。挑戦者はおそらく聖人の称号を与えられている一級冒険者【 通せんぼ(ブレイスマン) 】だろう」

聖女とか聖人とか言われる割に、なんだか物騒だったり意地悪そうだったりする通り名だ。称号を得るのに人格は考慮されないのかもしれない。