軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

詳細と人物

「これが依頼書だ。不備はないと思う」

ギーツが持ってきた依頼書は、確かに不備も記載漏れもなかった。びっちり受付の人と一緒に作っていたからそりゃそうである。

依頼額も適正より少し高いくらいだ。この額を提示してくるということは、ハルカ達のランクなどもおそらくギーツは把握していると思われた。

ただこの依頼書には普通と違う一文が追記されている。これが先ほどギーツが言っていた変な条件というやつなのだろう。

『ドットハルト公国に入ってから、ギーツの護衛をしたということを他人に話さない。もし尋ねられた場合、途中で出会ってたまたま同行しただけだと答えること』

これがギーツの提示した変な条件である。

ハルカ達は条件を見て、怪訝な表情を浮かべる。

「……この条件の理由をお伺いしてもよろしいですか?」

「……話さないと受けてもらえないかい?」

できれば話したくないのだろう。ギーツはなんだか情けない表情を浮かべている。大人の男がそんな表情を浮かべているのに聞いていいものか、ハルカは仲間たちの様子を窺った。

「どうしますか?」

「……まぁ、別にいいんじゃないの? だってギルドにはちゃんと依頼達成の報告が行くわけでしょ?」

「俺もシュベートに行くついでに何か依頼があったらラッキーって思っただけだし、別にいいぜ」

「僕もいいです。秘密にしたいことは誰でもあるですから」

仲間たちの承諾を得ると、ギーツの方を向いて、承諾の返事をする。

「というわけですので、これくらいの条件なら構いません。もし話していただける気になれば、いつでも仰ってください。やはり理由は気にはなりますので」

「すまない、助かる」

「いえ、それでは計画を立てますので、明日またこのくらいの時間にここでお会いできますか?」

「わかった、ではまた明日ここに来ることにするよ。受けてくれてホッとしたよ」

ギーツはそう言うと、ギルドの外へ出ていった。

口だけでなく本当にほっとしたようで、表情も最初に会った時より幾分か穏やかになっている。そんなに護衛が見つからなくて困っていたのだろうかと、疑問はあるが、引き受けて喜んでもらえるのであれば、気分は悪くなかった。

「とりあえずギーツさんについての聞き込みしてー、それから計画たてよっか?」

ハルカなんかはすっかりあのギーツの表情にほだされて、調査のことなんかもういいかなと思っていたが、コリンはしっかり覚えていたようである。流石商人の娘だけあってしっかりしている。

「あ、はい、そうでしたね」

ハルカの気の抜けた声に、コリンが「あー!」としかめ面をしてハルカを指さした。

「ハルカもう気が抜けてる! 気を許すのが早いんだってば」

「いや、はい、すみません」

コリンに叱られるのも当然であるから、ハルカは頬を掻きながら、へこりと頭を下げるのだった。

調査の内容は結果から言えば悪巧みをするような人物ではない、というものだった。年上の兄弟がいる学院の子達をあたり、そこからチラリと聞いた程度の情報ではあるのだが。

成績は普通、実技より座学が得意。あとナンパをよくしているが、特定の相手がいない。顔は良く、性格も穏やか、別れても後腐れないタイプなので、結構女性人気が高い、らしい。

割とどうでもいい情報だった。

「もしかして俺たち指定してきたのもナンパみたいなもんだったんじゃねーの?」

アルベルトがものすごくどうでも良さそうな顔で呟く。

「あー、私が美少女だから……、仕方ないわね」

「お前じゃねーよ……いってぇ」

コリンの言うことに間髪入れず余計なツッコミを入れたアルベルトは、後頭部を無言で叩かれる。相変わらず考えなしにずばずばものを言う様子に、ハルカは感心していた。ああいう関係は自分には作れないので、羨ましいような、そうでもないような、微妙な感覚だ。

「でも、それなら多分変な条件つけたりしないので、違うと思いますよ」

「そうねぇ」

訓練場で円座を組んで地図を真ん中に話し合いをしているのだが、相変わらずサラがハルカの隣にいる。

魔素の感知力を鍛えるために、それぞれの背後にはウォーターボールを浮かべながらの会議だ。

「あの人、本当に不安そうだったので、そういう変な気持ちは少ししかないと思うですよ」

「少しはありそうなのかよ」

モンタナは表情を変えないままハルカとコリンを順に見て、アルベルトに答える。

「確かに二人とも美人ですから」

いつものことだが、ハルカは容姿を誉められて複雑な気分になっていると、バンっと少し大きな音がして、アルベルトが「いてぇ、なにすんだ!」と声を上げた。

どうやらコリンがアルベルトの背中を平手で叩いたらしい。

「ほら、ほらほら! あんたホントにモンくんを見習いなさいよね!」

ハルカがコリンを見ると、ほんのり赤面している。嬉しかったのか照れ隠しなのか、そんな理由で思い切りアルベルトの背中を叩いたらしかった。

「俺何も悪いことしてねーじゃん」というアルベルトの拗ねたような呟きが聞こえてくる。ちょっとかわいそうだった。