軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

セッティング

「よーし、お前ら! 今日一日がんばりゃ終わりだ、気合入れていけ!」

【旋風団】のボンドが朝早くから気合を入れると、それにこたえて雄たけびが響く。二日間も作業をしていたら慣れてきたのか、いつの間にか草むしりも随分様になっていた。

心なしか人も増えているように見える。

初日居なかった待機組も連れてきているようだ。

「朝から元気だよね、ほんと」

正面玄関にある階段に腰を下ろしたイーストンが、ぼんやりと庭を眺める。

その言葉は半分【旋風団】に、半分は仲間たちに向けられていた。

昨晩訓練ができなかったというので、モンタナとハルカが朝早くから張り切って訓練をしている。空に魔法がうごめく様は、普通見られる光景ではない。

その魔法をユーリとナギが、イーストンと同じようにぼんやりと眺めていた。

【旋風団】の一行はそんなハルカの訓練風景を視界に収めないようにしながら黙々と作業を開始する。戦いの場に身をおく者にしてみれば、規格外の魔法を馬鹿みたいに発動し続けるハルカの存在には言及したくなかった。

触らぬ神に祟りなしを地でいっている。

情けなく負けたと思われていたボンドだったが、あんなのに喧嘩を売ったのだと知られてからは、良く生きていたとむしろ尊敬の念を向けられるようになっている。

怪我の功名というやつだろう。

一方で一晩檻の中に放置されたのは【砂の蜥蜴】の一行だ。

なんとか脱出できないかと暴れたが出ることができず、ハルカが訓練に来た時はひそかに隙をうかがっていた。

そして今はもうあきらめたようである。

檻の中で座り込んで、己の不運を呪うのが今の主な仕事だ。

一通り訓練を終えてから、ハルカは草むしりをしているボンドの近くへ歩み寄っていく。ボンドはぎりぎりまで顔を上げずに草をむしっていたが、近くで止まったのを確認すると、諦めて手を止めて顔を上げた。

「なんだ、なんか用か?」

「ええ、少しお時間をいただきたいのですが」

「構わねぇよ、そりゃああそこに閉じ込められてるやつら関係か?」

親指で指示した先には【砂の蜥蜴】の面々が項垂れている。ボンドは見ないようにしていたが、こうして話を振られれば無視しているわけにはいかない。

「ええ、そうです。彼らは護衛の契約に違反して、護衛対象をさらい、闇魔法で洗脳、国の乗っ取りを企てていました」

「……ずいぶんな話だな」

「その場合、傭兵側にはどのような罰が与えられることになりますか? この街で裁くことは可能ですか?」

「いや、この街じゃ無理だな。でも裏切った奴がいたなら、雇ってたやつの国の法で裁くもんだろ。だいたい死刑だがな。もし逃げ出したとしても信用がた落ちで、賊に身を落とすのがせいぜいだ」

「つまり彼らをどうにかする方法はないってことですか。だからといって、野放しにするわけにもいきませんよね……。すみません、ありがとうございました」

「いや、俺にわかることならなんでも言ってくれ」

ボンドは気を付けて接しているつもりだったが、ハルカの方に気負いがないのでどうも会話が気安くなってしまう。

今だってやらかしたからこそ草むしりをしているはずなのに、それがそんなに嫌ではなくなってきてしまっているのが不思議だった。

街の住人たちにもなぜか気安く声をかけられるようになったし、【旋風団】の仲間たちとの絆も深まっている。

最後のセリフはボンドの心からの一言だった。

やがてカトルが屋敷から現れた。

「ハルカ、傭兵のところへ案内してもらえるかしら」

「ええ、構いませんよ。いきましょうか」

「ところでこの人たちは……なに?」

「【旋風団】の方々です。庭の整備をしてくれています」

「造園の人?」

「いえ、傭兵ですよ」

カトルはしばらく顎に手を当てて考えてから、【旋風団】の方を見るのをやめた。

「よし、じゃあ行きましょ!」

「そうだな、行くか」

思考の放棄である。

色々とやることがあるのに、特級冒険者のもつわけのわからない人間関係に振り回されている場合ではないと考えたのだ。

ちなみにしれっと同意したのはアルベルトだ。

今日はアルベルトとレジーナが一緒に出掛けるつもりらしく、いつの間にか後ろについてきていた。昨日暴れそこなったのを気にしているようだ。

どうやらそれぞれカトルが動き出すのをこっそり見張っていたらしい。

昨日に比べると威圧感が段違いなので、まず間違いなく絡まれることはないだろう。

顔に傷があり、背中に巨大な武器。鋭い目つきであちこち睨みつけているレジーナ。

人混みで頭一つ背が高く、鍛え抜かれた体に大剣を差したアルベルト。

どちらもカモには見えないはずだ。

「これから【雷鳥の気まぐれ】という傭兵団を訪ねます。私たちもこの街に来てから縁ができた方々なので、信頼できるか、依頼をするかどうかの最終判断はカトルさんがしてください。私ができるのは紹介までです」

「十分! その傭兵団って結構強いの?」

「……どうなんでしょう、レジーナ」

「根性はあんじゃねぇの」

「……団長のトルスさんは、一級冒険者のレジーナに一矢報いるくらいの実力者ですよ」

こんな時冒険者の階級というのは強さの指標になってわかりやすい。

実は便利な階級システムに、ハルカはひそかに感心していた。