軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

時代の流れ

外へ出ると捕虜にしていた男は既にザクソンの手から離れ、兵士が監視をしていた。

「送ります」

「お忙しいでしょうからお構いなく。戻るくらいならできますから」

「いえ、問題ありません」

固辞するのも失礼かと思ったハルカは、頬をかいてから「ではお願いします」と頭を下げた。

「あちらに着いたら私は国へ戻ります。ザクソンさんは……任務にも成功しましたし、これから忙しくなるんでしょうね」

「ええ、そうだといいのですが」

「何かとお世話していただきありがとうございました」

ハルカが礼を言うと、ザクソンは恐縮して答える。

「いえ、礼を言うのはこちらの方ですよ。ハルカ様がいらっしゃらなければ、私は生きてここにいないかもしれませんからね」

「どうでしょう? 一人でも勝算があったから志願されたのでは?」

「終わってから考えれば、そんな勝算は吹けば飛ぶようなものでした。ですから私の方こそ、本当にありがとうございました。……何か困ったことがあれば、ぜひまた力をお貸しいただきたいです」

最後は笑ってみせたザクソンに、ハルカも頬を緩めて頷く。

「ええ、もちろん。私たちは冒険者ですからね、依頼をお待ちしてます」

その後はたわいもない雑談をしながら歩みを進める。主にザクソンの身の上話であったが、エリザヴェータの話が出るたび姿勢が少し正されるのが面白い。ザクソンにとっては本当に尊敬すべき主であることが伝わってきた。

ザクソンと別れて仲間たちの下へ戻ったハルカは、拠点へ戻ること、それから中型飛竜たちは連れていくことを伝える。分かっているのか分かっていないのか、飛竜たちもまじめな顔をして話を聞いている。

「小屋増設しなきゃね、今回の支払いもあるし、お出かけするのに便利になるかも」

「ナギ、仲間できてよかったね」

仲間というよりも子分のような雰囲気があるが、ユーリに言われたナギは嬉しそうにぺたんと尻尾を動かした。少し地面が揺れて、中型飛竜たちは一斉にそちらを見たが、ナギに悪気は全くない。

「んじゃ帰る準備するか」

慌ただしく準備を始めるアルベルトたち。荷物の少ないカーミラはそれをぼんやりと見つめながらあまり働く気はなさそうだ。もしかしたら何をしたらいいのかわからないというのが本当かもしれない。

日傘をさしたままハルカの隣まできて尋ねる。

「お姉様、拠点はどちらでしたっけ?」

「【独立商業都市国家プレイヌ】の〈オランズ〉という街の近くですよ。あとで地図を広げて見せてあげます」

「お願いするわ。私あまりこっちの大陸には詳しくないの」

「南方の出身でしたっけ?」

「ええ、そうなの。出てきてからあれこれと教えられたけど、あまり頭に入ってなくて」

「わかりました、ちょっと待っていてくださいね」

ハルカも荷造りを始めてしまって、手持無沙汰のカーミラの横にはユーリがやってくる。二人は一緒に地面に座って、忙しそうに動き回る仲間たちを眺めた。

「……今日はいい天気ね」

「天気がいいと辛いの?」

「日に当たるとだるいけど、雨が降っている日よりは憂鬱じゃないわ。雨が降って一人でボーっとしているのはつまらないもの」

「お家帰ったら、もっと人がいるよ」

「……私が行っても大丈夫かしら」

「だいじょぶ。カーミラ優しいもん」

「……そうかしら」

カーミラは手を伸ばすと、ユーリを持ち上げて膝の上へ乗せる。モンタナが一瞬チラリとカーミラを見るが、すぐに作業に戻る。普段から仲良くしている姿を見ているので、二人が一緒にいるからと言っていまさら何が起こるとも思っていなかった。

やがて荷造りが終わり、ハルカがふっと二人の方を見て笑う。

「仲良しですね、ユーリ。カーミラも、ユーリのことを見ててくれてありがとうございます」

「……暇だっただけよ?」

「そうですか、お待たせしました。それじゃ、そろそろ出発しますよ」

ナギに乗り込んでいく仲間たちを見ながら、ハルカは中型飛竜たちの前へ行って、声をかけながら障壁を張っていく。

「この辺りで自由に飛んでいると、兵士たちに攻撃されちゃうかもしれませんからね。窮屈で申し訳ないですが、自由に飛ぶのは少し離れてからにしましょう」

竜たちはハルカたちの言葉を全て理解しているわけではなかったが、この集団における力関係だけは、ナギからなんとなく伝えられている。自分を餌とするナギが従っている群れのボスに逆らおうとする愚かなものはいない。

やがて中型飛竜もきれいに梱包されると、ナギが空に浮き上がる。

ナギが先に飛び、その後ろをハルカがついていく形だ。

兵士たちは空を見上げる。

自分たちの戦いを助けてくれた竜に、空を自由に飛ぶ冒険者に、得体のしれない恐怖を持つのと同時に、わずかな敬意を込めた視線を送る。

これから王国は少しずつ変わっていくはずだ。

異種族である隣国との交流が増え、商人が入って流通が広がり、冒険者が街道の治安を守る。きっとこれまで以上の発展を見せていくに違いない。

時代が変わっていく。

そのきっかけとなった冒険者は、空の上で暢気に今日の夕食は何にしようかと考えるのであった。