軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

領都〈グルディグランド〉

領都までは、小さな村を幾つか経由してたどり着いた。他の領地よりも点在している村が多いのは、デザイア辺境伯領が冒険者を重宝しているおかげだ。

村をたくさん作り、それによって冒険者への依頼を増やす。人通りが多くなれば、商業も活性化する。初級冒険者が旅や戦いに慣れ等級が上がれば【ディグランド】で更に成り上がるための依頼が待っている。

一つの領地というよりは、まるで国のような発展具合だった。そのことについて感心していると、セブルスが知識を披露してくれる。

「別にこの領地はな、王国に所属してなくても十分やっていけるのさ。そんでも独立しねぇのは、領主が代々王と仲がいいとか、【ディグランド】と王国両方を相手するのが厳しいとか、そんな理由なんじゃねぇかって言われてるぜ」

そんな話をしていると、道案内している間は比較的静かだったネイブが割って入ってくる。

「冒険者さん、滅多なこと言うもんじゃないですよ。まるでうちが独立したがってるみたいじゃないですか」

「へいへい、すいませんねぇ。俺もこの人たちに土産話いっぱい聞いちまったから、市井の噂話を教えてやっただけだって。そう目くじら立てるなよ」

「目くじらなんか立ててません。ただ兵士としての一般論を述べただけです」

「へいへい、真面目なこった」

一瞬緊張した空気になったが、セブルスの気の抜けた返答のおかげでそれはすぐ霧散する。

セブルスにしてみれば、話しやすく実力のある冒険者一行であったが、ネイブからすれば雇い主の更に上の立場である女王からの使者だ。

多少神経質になっても仕方がない部分はある。

それにしたって急に張り詰めた雰囲気になったことにハルカは驚いたのだが、今はまぁ、落ち着いたようで一安心だ。

結局街が見えてくるまでの間に、異様な空気になったのはこの時だけで、他はハイキングのような穏やかな旅であった。

いくら整備されているとはいえ、野営をしていると野生の獣くらい出てもおかしくないのだが、現状だとそんなことはまずあり得ない。

大型飛竜がいる場所に近づいてくるような勘の悪い野生動物は、とても成体になどなり得ないからだ。

セブルスは不思議がっていたが、ハルカ達にしてみれば、そう言えば最近野生動物に襲撃されないな、程度の感想だった。

【領都グルディグランド】。山に挟まれたその街は、横に広く展開されており、遠目から見るとまるで巨大な関所のようであった。

建物や壁は洗練されていなかったが、とにかく丈夫に作られ、補修されており、この都が古くから巨人たちとの戦いの場であったことをありありと示していた。

立派な装いの迎えの兵士が整列し、出迎えてくれたが、そのうちの一人がネイブの下へ歩み寄り、いくつか耳打ちをする。

何度かうなずいたネイブは、困ったような表情を浮かべてハルカたちに向き直る。

「ええーっとですね、上からの指示で、ここから先の案内もさせていただくことになりました」

「ん、なんでだよ? お前、なんか端っこの分隊の副長かなんかだろ?」

「そうなんですけどね」

セブルスが怪訝な顔をしてツッコミを入れると、ネイブはそれを肯定しつつ続けた。

「そうではなく、現領主の八男として、女王陛下の使者様をご案内せよとのことです」

「はー、それでなんかあっちの隊長もあんたにへこへこしてたわけか」

「不本意ですが、まぁ、そういうことですね」

「ってことは、俺は領主様の息子を体張って守ろうとしたってわけだ!」

「まぁ、まぁまぁ、それは置いといて、ハルカ様。大変申し訳ないのですが、そちらの大型飛竜を街に入れるわけにいかないので、外で待機していただきたいのですが、可能ですか?」

「はぁ、それは……、仕方ないと思います」

「誤解しないでいただきたいのは、みなさまを軽んじているわけではないという点です。実はこの領都〈グルディグランド〉は基本的に道が狭く、中も入り組んでいるのです。万が一巨人に攻め入られたときに、自由に動きにくくするためにそうしているのですが、他所からいらした方からすると、雑然としていて狭苦しいかもしれません」

「いえ、気にしません。えーっと……、一応、ナギは一人でもお留守番ができるのですが……」

「……あの、どうしてもとは言いませんが、是非とも、お仲間の方が数人、ナギちゃんと一緒に待機していただきたいのですが」

気持ちはわかる。

もし日本にいるとき、家の前に土佐犬を放し飼いにされたら、どんなに噛まないよと言われようとも怖いものは怖い。

「……カーミラは、連れてくとして、他は」

「はーい、私行きたい!」

「じゃあ、コリンと……、他に行きたい人はいますか?」

偉い人に会うのにあまり興味がない面々は、誰も名乗りを上げない。ハルカとしてはモンタナが一緒に来てくれると頼りになるのだが、そんなに乗り気ではなさそうだ。

「……まぁ、三人でいいですかね。確かコリンもそれっぽい服は持ってましたよね?」

「もちろん! みんなでおしゃれしていこー」

遊びに行くわけじゃないのだが、コリンは随分と楽しそうだ。ナギの背中の上に着替えるためにさっさと登っていってしまった。

「あ、カーミラにも声をかけておいてください」

「わかったー」

「というわけで、私とコリン、あと上でずっと寝ているカーミラで行きます」

「一応言っておくけどよ、ここの領主は代々嫁さんがたくさんいるぜ。ナンパされないように気をつけろよな」

「冒険者さん、いくら父上でもそれくらいの分別は……。つきます、はい、つきますとも。失礼のないように私も気をつけますが、何かあったら申し訳ございません」

南のゲパルト辺境伯に続いて、こちらもそんな気質があるらしい。辺境伯とはそういうものなのかと色眼鏡で見てしまいそうになるが、仕事中毒のヴェルネリ辺境伯のことを思い出して首を振った。

あれはあれで変な人物だったが、他の二人のように好色ではない真面目な人物だった。

「何があってもお断りすることだけご了承いただければ、別に」

「大丈夫だとは思うのですが……」

自信なさげに言われると、こちら側も心配になる。

ハルカは一抹の不安を抱えたまま、ネイブと兵士たちに連れられ〈グルディグランド〉へと足を踏み入れるのであった。