軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

里帰り?

スコットに挨拶を終えて、牧場から直接、王国に向けて飛び立つ準備をする。拠点には飛竜便で事情を綴った手紙を届けてもらうことにした。

門から出なければいけないと思っていたのだが、その辺の面倒なことはスコットの方で何とかしてくれるそうだ。

荷物を引き上げてナギの背に乗せていると、やけに畏まった様子のヒエロとジョゼが現れる。

「なぁ……」

「乗せないわよ」

ヒエロの言葉を遮るように、コリンが返事をする。

「あぁ、いや……。迷惑かけて悪かったと思ってんだよ。俺たちこの街で何とかやってこうかなと」

「そうそう。本当に狙われてるかなんてわかんないし、あたし達だって覚悟して冒険者になったんだから」

荷物の最終確認をしていたコリンはその手を止めて、二人に向き直る。なんだかんだ言ってついてくる気なんだろうと思っていたので、返ってきた答えが意外だった。

「……ふぅん、あ、そう。狙われてるのは多分本当だから気を付けた方がいいわよ。頼れる人がいるのなら、そこに逃げ込むべきだと思うけど」

「……俺たちこんなだけど、そうもいかねぇんだよな。ま、とにかく世話になった」

「そうそう、ありがとってことで!」

コリンは腰に手を当ててため息をついて苦笑する。

「じゃ、次会った時は街に入ってからの護衛代払うのよ」

「「……え?」」

「冗談よ」

コリンはそのままナギの上へあがる。それぞれが自分の手荷物を持って乗り込んでいく中、ハルカだけが最後にその場に残って二人に声をかける。

「……ついてこなくて大丈夫ですか?」

「大丈夫だってー、あんた優しいよな」

「そうそう、お金ないし! ただでさえ迷惑かけてるしぃ」

「くれぐれも気を付けて」

楽観的過ぎて、とても大丈夫そうには思えなかったけれど、これも彼らの選択と思い、ハルカもナギの背に乗り込んだ。

少しだけ翼をはばたかせて、ナギがゆっくりと浮かび上がる。

目元に腕をかざした二人が少しずつ小さくなっていくナギの姿を見送る。やがてその姿が豆粒ほどになった頃に、二人は大きなため息をついてその場に座り込んだ。

「……やっぱついていった方が良かったんじゃない?」

「そういうわけにもいかねぇだろー。冒険者になるって決めて出てきたんだぜ。今更おめおめと帰れるかよ」

芝生に座り込んでしばらくのんびりしていた二人に、スコットが近寄って声をかける。

「えーっと、中型飛竜を戻すからさっさと出てってもらえるかなぁ?」

「「……はい」」

二人は大商人の一言に、立ち上がってすごすごとその場を離れるのであった。

ナギの上で珍しくハルカが仲間たちの意見に反対していた。

「いえ、だって、一応依頼の途中ですし。あんまり寄り道するのもどうかなと」

「えー、でもナギの故郷だよ? 見せてあげたいじゃん」

「それは分かりますけど、他の大型飛竜と出会ったら危ないじゃないですか」

「次は負けねぇ」

「余計な危険は避けたいというか……」

「ハルカさん、風の真竜に会いたくない、とか?」

ハルカは黙り込んで目を泳がす。全員にじっと見られていることに気がつき、すぐに返事ができなかったことを後悔した。

大竜峰で仲間たちが死んでしまったと思って涙腺を崩壊させて大暴走したのは、今まで生きてきた中でも最上位に恥ずかしかったことだ。仲間達の無事を確認してからも、しばらくは情緒不安定だった記憶がある。

そのせいもあって、風の真竜に対しても少し苦手意識があった。見事にそれを見透かされてしまい、言い訳も思いつかない。

「……ヴァッツェゲラルドさん、寂しがってたから、顔出してあげてもいいと思うです」

モンタナの言葉に全員が一斉に首をかしげる。

「ば……、なんだって?」

「ヴァッツェゲラルドさんです。ノクトさんが言ってた、真竜の名前です」

「よく覚えてたわね、モン君」

ハルカは少し考えてから、ユーリを抱き上げて尋ねる。

「ユーリはどうです? ナギより大きくて強い竜がいるんですが、やっぱりちょっと怖いですよね?」

最後の手段だった。子供を利用するようで心が若干痛んだが、全員の意見はきちんと聞くべきだ。

ユーリはハルカが怖いと言ってほしいのだろうと察した上で少し悩む。ナギのことは大好きだし、その卵を預けてくれた竜にはお礼が言いたいと思っていた。会話のできる竜にも興味があったし、以前はついていくことができなかった場所だ。ハルカさえ気にしていないのであれば、大竜峰に行くことは大賛成だった。

ちらりとハルカの顔を見て、また目を伏せてどうしようかなと思っているうちに、ハルカにぎゅっと抱きしめられる。

「勝手なことを言ってすみません、行きましょう。どうやら反対しているのは私だけのようです……。ユーリも、変なことを聞いてごめんなさい」

「ママがその竜のこと嫌いなら、行かなくてもいいよ?」

「いいえ、嫌いなわけじゃないんです。それに会ってみたいでしょう、お話しできる竜に」

「……うん」

「よし、じゃあ行きましょう。ナギ! 進む方向を少し東に変更、あの山のてっぺんを目指してください。こっち、あの山の上です」

ハルカに声をかけられたナギは、振り返ってその指がさす方向にゆっくりと進路を変える。

大竜峰の頂上。

一行は人が近寄らないその秘境に向けて、まっすぐに進路を定めた。