軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

距離感

帰り道も順調だった。

行きよりも連携がうまくいっているのか、効率はむしろ良くなってさえいる。

レジーナの金棒は相変わらず力強く、鈍器であるのにもかかわらず、アンデッドたちの身体を千切るように弾き飛ばしていく。心配は何も無いように思えた。

障壁に戻り、周囲の敵を全て片付けてから中に入る。

三人と一匹が、その真ん中にくっついて座っていた。

外に出ていた者たちはずっと動いていたので気がつかなかったが、ただ座っているだけだと結構冷えるのだ。

「無事みたいですね。交代するです?」

「そうですね。同じくらいの時間で、もう一度出撃しましょうか」

「次はモンタナとコリンが入るとして、あと一人は……」

本当はアルベルトを先頭にして、いつものメンバーでと思った。しかしそうすると、ここにユーリとナギが残ることになってしまう。二人ともいい子だし、落ち着いているが、まだまだ小さな子供だ。馴染んでいない人たちと留守番させるのは流石に心配だった。

「レジーナさん、いけますか?」

「いける。休憩いらねぇ、どんどんやらせろ」

「ではお願いします。アルはこの子たちと一緒に休憩してください」

ナギとユーリの頭を撫でながら言うと、少し不満そうな顔をしていたアルベルトも頷いた。ハルカの言わんとすることを理解できたようだ。

「わかった、任せとけ」

「はい、お願いします」

第二陣の調子もそこまで悪くはない。

ただ、コリンのサポートをすることが少し多かったかな、くらいの感覚だ。拳で戦っているので、どうしても接近される可能性が上がる。勢いを利用して投げ飛ばしてもすぐ起き上がってしまうので、相手を戦闘不能にするのにどうしても手間取っていた。

殴った時は一動作、捌いて踏みつぶすときは二動作。

武器を持っている他の面々が一振りで一体、あるいは数体倒すことを考えれば、時間がかかってしまうのは仕方がなかった。単純に相性の問題になるだろう。

やはり一時間くらい経ったところで、一度休憩を取った。

コリンはぐったりしていたし、モンタナも珍しく手をプラプラとさせてストレッチのようなことをしている。限界とは言わないまでも、中々負担は大きかったようだ。

レジーナは黙ってその様子を見ている。何か言いたそうだが、きゅっと口を閉じて黙り込んでいた。『早く準備しろ』などと言わないあたり、気を使っているのかもしれない。

ハルカはアンデッドがどれくらい減ったのか観察するために、高く空に飛びあがる。

結構な音を立てていたからか、ゆらゆらとハルカ達の方に向けて集団がゆっくりと動いている。ハルカの目には、茜色に染まっているその群れの数が減ったようには見えなかった。

数千体は既に倒したはずなのだ。どうやら長い戦いになりそうだった。

夜の帳が下りる前に元居た場所まで戻ることができた。

連続で参加しているはずのレジーナが一番元気そうだ。ぶんぶんと金棒を振り回して、障壁の前にいるアンデッドを綺麗に掃除してくれた。

「うへぇ、疲れた。今日はご飯作る元気ないよ」

コリンがユーリを抱き込んでそのままナギの横に寝転がる。ユーリはそんなコリンの頭を小さな手で撫でてやっていた。微笑ましい光景に、一瞬ここがアンデッドの巣窟であることを忘れそうになる。

「どう、多少は減った感じする?」

シャフトの質問に、ハルカは首を振った。

「いいえ。残念ですが、まだ一割も減っていないと思います。一万というのは希望的な観測でしたね」

「……ま、僕が上から見た時もそんな感じしたもんね。じゃあどうする? 帰ってダメでしたって報告するの?」

「全部ぶっ殺すまでいる」

「えー……っと、今の発言はともかく、私もまだ粘るつもりです」

今日の活動に手応えを感じているのか、レジーナがぐっと拳を握って会話に入ってきた。それだけ言うと満足したようだったので、ハルカがその後を引き継ぐ。

「じゃあ報告しないと、死んだことにされちゃうかもよ。それにみんな避難を始めちゃう」

「あー……、そうなりますか。困りますね」

「だから、明日の朝一度全員で〈斜陽の森〉まで駆け抜けてみないかな? できたら僕が連絡役をしてあげるよ」

「いいんですか?」

「別に構わないよ。ただし報酬の交渉の時は口を利いてね」

「それはもちろん。しかしシャフトさんも戦いたかったのでは?」

「うーん……、そうだね」

シャフトは適当な返事をしながら、槍の石突で地面を何度か叩く。それからくるんとそれを回し、先端をハルカの方へ向けた。穏やかな表情で、攻撃的な意思も見えなかったので、誰もそれに反応できない。

ただ全員の視線が二人に集まった。

「……あまり動揺しないね。絶対に死なない自信でもあるのかな?」

「……いいえ、しかし、攻撃される理由もないと思っているので」

内心は胃が痛くなるほどに緊張していたが、ハルカは涼しい顔をして答える。頭の中では、何か悪いことでもしただろうかと、慌ただしく考えを巡らせていた。

「大したものだよね、ホント。僕はさ、ラルフの友人のつもりなんだよ。友人が気にかけてる人が死地に向かおうとしてるから、最悪その人くらいは助けてやろうと思っただけさ。でも、僕たちが思っているより、君たちはずっと強いみたいだからね。花形ではなくても、街のためにできることをやってやろうと思ったんだよ。僕は、オランズの冒険者だからね」

「……ありがとうございます」

「どういたしまして。今日はゆっくり休ませてもらうよ。僕の意見に賛同するのなら、明日の朝もう少し綿密な動きの作戦を立てよう。じゃ、おやすみ」

シャフトは大あくびをして、壁際に歩いていき、そのまま地面に座り込んだ。それきり黙り込んだが、槍を抱えたままで、本当に眠っているのか怪しいところだ。

ハルカは、シャフトが何を考えているのか分からず、少し警戒をしていた。しかし、話を聞いて納得してしまった。

明日の朝、彼の提案をこなすために、ハルカは夜のうちに仲間と意見を擦り合わせることにした。

ナギの周りに集まっている仲間たちと合流し、少し遠くで立っているレジーナに手招きをする。「なんだよ」とぶっきらぼうに言って近寄ってくるのが、ハルカには少し可愛く見え始めていた。