軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

面接前に

書類仕事につきあって数日が経った。

その間アルベルトたちは、それぞれ訓練をしたり、買い物をしたりしているようだった。獣人は肉体的な戦闘を行うものが多く、訓練相手には事欠かないらしい。

仕事を終えて夜に合流すると、アルベルトが毎回違う獣人の戦士と訓練しているのを見かける。肉体言語で語り合っているからなのか、友人もどんどん増えており、仲間の中では一番ここに馴染んでいるように見えた。

一方でモンタナは、子供達に絡まれている姿は見かけるものの、大人たちと話している姿はあまり見かけない。そもそもモンタナが談笑している姿はみたことないのだが、それにしても獣人たちの態度にも遠慮が見られるような気がした。

モンタナはそうした雰囲気に敏感だから、自分から獣人たちに近づいたりはしない。街に着いて三日目には、執務室の床に座り込んで、宝石をゴリゴリと削る作業を始めてしまった。

おかげでトーチも執務室を駆け回ることになって、ナギは嬉しそうにしている。トーチは疲れると、モンタナの頭の上まで逃げていくことにしているようで、無理なく遊んでくれているように見えた。

ハルカとしては獣人の国へきたのに、モンタナが人とあまり関わらずにいるのは、なんだか寂しく思えた。血のつながった両親を探す手がかりがあるかもしれないのに、それを調べている様子もない。

どうしたものかとモンタナのことをじっとみていると、この部屋の主人から声をかけられる。

「ハルカさん、治癒魔法おねがいしまぁす」

「……いいですけど」

初日は夕暮れ時に一回だったのに、二日目には数時間に一度、今日に至っては手が止まるたびに魔法をかけてやっている。手が止まらず、ものすごい速さで仕事が片付いていっているので、別に構わないのだが。

ただ、自分が仕事をしていた頃にも、この魔法があれば、もっと仕事が捗ったのにと思うくらいだった。

街に来て一週間。

書類仕事が大まかに片付いた。残っている大きな仕事は、仮メンバーの面接だけになっていた。

途中でおふれを出していたらしく、当日の朝はこの館の前にたくさんの獣人、それにちらほらと普通の人間の列ができていた。

ハルカはこの街に来てから仕事につきあってばかりで外には出ていない。そのため気づいていなかったが、街の人口の三割くらいは普通の人間なのだ。

作られた列の中に人間が混じっていてもなんらおかしくない。

ハルカは執務室の窓から列を見下ろして、リオルの姿を探した。ほかのものがワイワイと何人かで集まって話をしている中、一人だけ難しい顔をして突っ立っているので、すぐに見つけることができた。

ほかの獣人に話しかけられているようだったが、めんどくさそうに手を振ってあしらっている。ハルカ達といる間は、気位の高い犬のような性格だったのに、こうして離れてみていると、もっと大人っぽく見えるのが不思議だった。

今日の面接は、ノクトとダグラス、それにハルカが同席することになっている。屋敷に詰めている獣人たちは、特に反対もなく受け入れているようだったが、面接に来る者たちがそうだとは限らない。

気はあまり進まなかった。

面接をする部屋に入り、年配の二人がソファに座る。隣を空けてくれているようだったが、ハルカは座らずにその後ろに待機した。

「座っていいですよぉ?」

「いいえ、ここに立っています」

「いいから座りなさいな、ほれ、二人だとバランスが悪いからのう」

ノクトのすすめは断ったものの、ダグラスにそう言われると断りづらい。年寄りの配慮を跳ね除けるほど、ハルカは肝が大きくなかった。

「では……、失礼します」

ノクトを真ん中に挟むようにして座り背筋を伸ばすと、隣からじっと視線を感じる。首を少し傾けてそちらを見てみる。

「なんでしょうか、師匠」

「なんで僕のすすめは聞かないのに、ダグラスの言うことは聞くんですかねぇ?」

「……お年寄りの意見は敬わなければと思いまして」

「僕の方が年上ですが?」

「そうでしたね。えーと……、なぜでしょうか。すみません、特に意識していなかったのですが」

「まぁ、いいでしょう」

後ろ頭をソファにポンと投げ出したノクトは、笑う。ハルカの遠慮のなさは、自分のことを身内のように思っているからだと、ノクトは見抜いていた。ただからかうために尋ねただけであって、気分を害したわけではない。

「大将、わかってると思うが、面倒な奴らもたくさん来てるぞ。怒り出したりせんようにの」

「ダグラス、僕が怒り出すと思ってるんですか?」

「昔を知っとると、いつ噴火してもおかしくないとおもっちょる」

「私の知っている師匠はいつも穏やかですけれど」

「そうでしょうそうでしょう」

「騙されたらいかんぞ。儂は若い頃、大将が怒って血の雨降らせたのを何度も見たことあるんじゃ」

「誰でも若さゆえの過ちはあるじゃないですかぁ」

「その頃大将はもう四十を超えてたはずじゃぞ。何が若さか」

「ダグラス、やめましょうねぇ。昔の話ですからねぇ」

「……師匠が変なことしたら、止めますね」

「しませんってばぁ。ほら、ダグラスのせいで、弟子の信用がなくなったじゃないですか。どうしてくれるんです」

「五年も地元に帰ってこないお人に、信用もなんもあったもんじゃないわい」

「辛辣ですねぇ」

話していると扉がノックされて、外から声がかかる。

「ノクト様、そろそろ始めてもよろしいでしょうか?」

「はぁい、いつでもいいですよぉ」

ハルカは改めて姿勢を正す。

性格はともかく、顔さえキリッとさせとけば、この容姿はそれなりに見えるはずなのだ。ボロを出して師匠の評判を傷つけないためにもしっかりしよう。

そう思ったハルカは、表情を緊張させて扉をじっと見つめるのだった。