軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

すぐに見つかるでしょう

もうすぐ城から出ようというところで、従者を三人連れた、しかめ面の男性が正面から歩いてきた。

薄い板の上に置かれた紙に目を通し終えると、右手をさっと従者に向け、印鑑を受け取り、書類に押した。

左側の従者が押印された紙を受け取り、新たな物を挟んでいる間に、印鑑を右手側の従者に戻し、書類に目を通す。その全てが歩きながら行われている様は、なかなか奇妙なものだった。

残り一人が常に三人を先導して、道の安全を確かめている。

先頭を歩く男は、エリザヴェータに気づくと、右手に持った鈴をチリンチリンと二回鳴らして足を止める。

すると後ろに続く三人も足を止めて、顔を上げた。

しかめ面の男はエリザヴェータを一度視界におさめて、それから横に並ぶハルカたちを見て、口を開いた。

「お出かけですかな、陛下。お連れは護衛ですか。ノクト殿はお久しぶりです、くれぐれも陛下のことをよろしくお願いいたします」

それだけ言うと、男はまた書類に目を落とす。陛下と呼ぶからには臣下であろうに、あまりそれらしくない対応のようにハルカには見えた。

「テスラ、お前もたまには仕事を休め」

「お気遣いありがとうございます。しかし御言葉ですが陛下、私は仕事が好きなのです。常に仕事をしていたいのです」

「頑固なやつめ。ほどほどにしておけよ、お前に突然倒れられては困る」

「過分なお言葉感謝致します。十分気をつけましょう」

歳は五十過ぎくらいに見えるテスラという男は、首がやや前に傾いてはいるが、体調が悪そうには見えない。

話の終わったエリザヴェータが歩き出して、城の小さな門へ向かいながら呟く。

「あいつはなんであんなに仕事が好きなんだろうな」

「……なんででしょうねぇ。でも先代の頃から国の財政を預かっていますから、真面目に越したことはないと思いますよ」

「三十年近くあの調子だぞ?」

「昔よりは柔らかくなったと思いますけどねぇ」

「ん? テスラの昔を知っているのか?」

「知ってますけど、話しませんよ。プライベートなことですからねぇ」

「……まぁ、別に詳しく知りたいわけでもないが」

エリザヴェータはそう言って、ハルカたちが城に入った時に通った、兵士の屯所へと断りもなく入っていく。

休憩中だったのかのんびりしていた兵士たちが慌てて立ち上がり敬礼するのに、適当に手を振って返したエリザヴェータはそのまま、外に繋がる扉へ進んでいく。

「陛下、護衛は入り用ですか?」

「いや、結構。今日はじいがいるからな」

「承知しました、ではお気をつけて」

扉を開けて送り出される。

来るときに城門前に並んでいた列は、なくなっていた。

「さて出かけるとするか。ところでハルカたちの仲間はどうやって探したらいいと思う?」

「……おそらく宿に近い場所にある商店街にいると思うのですが、向かっていけばモンタナの方から見つけてくれる気がします。そうでなければ、いそうな場所を総当りするしかないでしょう」

「たまには街に降りての散策も良かろう。急ぐ必要はない。ハルカから見た王国の様子を聞かせてくれ。ノクトじいのはきちんとした報告になりすぎていたからな」

「おや、僕の報告では不満がありましたかぁ?」

「いや、そんなことはない。でも、私のためにまとめられた情報ではなくて、冒険者から見た素直な国の様子が知りたいと思ったんだ。いけないか?」

「いいえ、為政者としてきちんと成長しているようで何よりです」

二人が仲良く雑談しているうちに、ハルカはここに来るまでのことを思い出す。女王の耳に入って気持ちのいいことばかりではない気がするが、おそらくその話を聞きたいのだろう。

「では、上手に話せるかはわかりませんが、仲間が見つかるまでお話しさせていただきましょう」

「よし、頼むぞ」

エリザヴェータは意外なことに話を聞くのがうまかった。話をしながら時折ちらりと様子を窺うと、うなずいたり、表情を変えたりしながら聞いてくれている。

興味を持って聞いてくれているのだなとわかると、どんどん話をしたい気分になるから不思議なものだ。

話をしているうちに、ユーリが目を覚ましたので、ベッドを作って下ろしてやった。まだうとうとしている様子だったので、横になるとすぐに眠りに落ちてしまう。

作ったベッドをそっと浮かして、横にピタリとつけるのを、エリザヴェータはじっと見ていた。

「それは、もしかして障壁で作ったのか?」

「ええ、そうですよ」

「ふむ……、歩くと勝手についてくるのだな。確かにこれはノクトじいの弟子だ。なんとも緻密な魔法のコントロールだな」

「僕、別にやり方とか教えてないですよ。さっきも言いましたけど、僕がハルカさんに伝えてるのは、冒険者とか人としての心構えくらいです」

「……最初からできたということか?」

「あ、いえ、一応師匠のを見て参考にさせてはいただきました」

「見ただけでできるのか。そうか、これは化け物だな」

「だから言ったじゃないですか」

褒められているのか貶されているのか微妙なところである。ハルカは二人の言葉に反応せずに、ユーリの寝顔を見下ろした。

むずむずと口を動かして、うっすらと目を開けると、ハルカの顔を見て、安心したように笑顔を浮かべ、また目を閉じる。

子供は素直で可愛い。

「だーっ、鬱陶しいなお前は! だから今は一緒にいねぇって言ってんだろ!!」

聞き慣れた大声が聞こえる。

そちらに目を向けると、武器屋の前にアルベルトと、以前ハルカが殺しかけた獣人の男が睨み合っていた。