作品タイトル不明
3 婚約者ができました!
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約 一ヶ月(三十日) で、若い女性向けのお守りを作ることになった、マリアーナです。
これから魔術式の組み合わせを決め、デザインを考え、新しいタイプのお守りを製作しなければなりません。
しかも、そこそこ量産します。
お守りの術式はすでに定型化しているので、そこまで悩まないけど、形を一から作るとなると少々時間がかかる。
まあ、個別に何々に特化したお守りにすることは可能だけど、今回はそういうのはナシ。
あくまで試供品なので、術式は 能力(バフ) 向上のタリスマン型と悪いモノを除けるアミュレット型の二種類を、お互いに干渉せず、効果が最大限に発揮できるように設定。ただし試供品なので、持続期間は通常より少し短めにする。
気に入ったら効果を選んでもらって、設定するようにする。
でも若い女性向けなので、それなりに映える形にはしたい。
さて、どうするか。
今までのお守りは、紙に魔力石を溶いたインクで術式を書いた簡易的なもの、小さな金属に術式を彫金して魔力石を埋め込み、それをペンダントトップなどにしたものなどがある。
ちなみに紙のやつは一回限りの使い捨てだ。
アクセサリータイプのやつはどうしても形がゴツくなりやすいのだが、私が今まで作ってきたやつはエリアが私から買い取ったあと、騎士団などで使っているらしくそれでも問題はなかった。
女性が使う場合は、めちゃくちゃ小さな 巾着袋(ポーチ) に入れて持ち運んだりする。
しかし、どうもこのデザインは若い女性には不人気らしく、あまり需要がない。
だが、元々そういった層に受け入れられるデザインのお守りを作る予定ではあったので、一応案はある。
女性好みのアクセサリーや、扇子などの普段から身につけたり持ち運ぶ物にすれば、それなりの人気は出るだろう。
とりあえず今回はアクセサリーに絞るか。他のデザインも考えたいけど時間がない。
それにはまず若い女性に人気のデザインを知らなければならない。
「なら女性に人気のアクセサリーショップへ行くしかないか〜」
ララを呼んで出かける準備をしようとしたところで、部屋をノックされた。
「お嬢様、本日の午後にお客様がいらっしゃるとのことで、先触れが届きました」
「え? 誰?」
「エリア・モナルダ様です」
「ええっ!?」
昨日の今日だよ?
仕事が早いな〜。
「分かったわ。着替えるから準備を手伝ってちょうだい」
「かしこまりました」
◇
「エリア・モナルダと申します。本日はマリアーナ嬢にお願いがあって参りました」
「は、はあ。一体どのようなことでございましょう?」
同席しているお父様の顔が引きつっている。
なんか緊張してる?
まあ、私も少し緊張しているけど。
いつもの魔法使いローブではなく、黒の礼服に身を包んだエリアは普段と違い、イケメン度がマシマシになっている。
前髪も上げていて、私はこの時初めてエリアの目の色が赤であることを知った。
立ち振る舞いも、紳士っぽいし!
「はい。私と婚約をしていただきたいのです」
「こ、婚約ですか!? マリアーナが、モナルダ公爵様と!?」
ん? お父様、今、公爵って言った?
「ええ。マリアーナ嬢とは仕事で取引をさせていただいておりまして、
その、出会った頃から、彼女に惹かれておりまして……」
そう言って、顔を赤らめるエリアは、本当に私のことが好きみたいだ。
私まで少し照れてしまう。
いや、それより、今、公爵って言われてたよね?
「どうか、私と婚約していただけないだろうか?」
照れながら上目使いにこちらを見てくるエリア。
もしかして、エリアって女性にモテるのでは?
……なんか、モヤっとするな。なぜだ。
「マリアーナ?」
「あ、は、はい! 喜んでお受けいたします!!」
「よかった。それではこちらの書類にサインを──」
そんなわけで、エリアとの婚約はあっさりと整った。
書類は、エリアが連れてきた従者が、急いで神殿に提出しに行ったので、私とエリアは二人きりになった。
お父様はなんか色々限界だったので、退出してもらった。
「エリア。あなた、公爵様なの?」
「そうだよ? 知らなかった? 結構長い付き合いだと思ったけど?」
「そ、その、お守り作ることにしか興味がなくって、エリアのことは若くして魔法省に勤めている凄い魔法使いとしか認識していなかったというか……」
エリアの『懐具合にしか興味がありませんでした』とは言えない。
「あー、やっぱりそんな感じだったんだ。まあ、それがオレにとっては都合がよかったというか、身分を気にしない君と一緒にいるのは、居心地がよかったから別にいいんだけど」
「そうなの?」
「だってオレ、自分で言うのなんだけど、すごい魔法使いで公爵だよ? しかも若くてイケメン。
オレの顔と肩書きしか見ないで言い寄ってくる輩の多いこと! 辟易しちゃうでしょ、そういうの」
「まあ、そうかも?」
この人、自分でイケメンって言ったな。
「でもマリアーナはそうじゃなかったから」
「私はお得意さまとして、エリアの懐事情しか見てなかっただけだよ?」
つい、言ってしまった。
「でも、マリアーナとの会話はとても楽しかった!」
と、エリアは笑う。
いつものエリアだ。
「まあ、私もお守りについて熱く語れるのはエリアだけだったものねぇ」
お守り研究にのめり込みすぎて、学園では友人が出来なかったのだ。
一応、私は本人の魔力量は関係ない魔術科にはいたけど、お守りのことを話し合えたのはエリアだけだった。それぐらいお守りって不人気なのだ。作る方は。
だから、やり直しのことを真っ先にエリアに相談した。
これって、つまり──。
「エリアって、私にとっても大切な人だったのね」
「なっ──!?」
エリアは真っ赤になって、顔を両手で覆ってしまった。
「ちょっと、どうしたのよ?」
「そういう不意打ちヤメテ……」
「???」
何か不意打ちした?
「まあいいわ。そんなことよりエリア、 市井(しせい) に行くの付き合ってよ」
「市井?」
「お守りのデザインは、アクセサリーとか若い女の子が好きそうな形にしようと思うんだけど、流行りのデザインとか調べたいのよ。あいにくそういうのには疎くって」
「ああ、それなら協力しよう。明後日はどうだ?」
「いいわ。決まりね」
「……その、これってデートということでいいか?」
「そうねぇ。いいんじゃない? 私たちは婚約者同士になったんだし」
「そうか、ならしっかりエスコートはさせてもらうよ」
「楽しみにしているわ。あ、せっかくだから人気のカフェにも行きましょう!」
そんなわけで、デートの日取りが決まった。
なんだかすごく楽しみだ。
あ、私友人と一緒に放課後カフェ行ったりとかいう、青春っぽいことしたことないわ。
いや、前の人生では、バルド様と婚約していた時に、何度か行ったか。
でも、結婚前はバルド様は優しかったけど、一緒にいて楽しいとはならなかったな〜。
私、本当にバルド様のこと、マジでそこまで好きではなかったのね……。