軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

姉だった人のことと、後悔 ⑨

「ふぅ……」

シンフォイガ家に仕える者達の中には、両親や姉二人に賛同する考え方の者達もそれなりに多くいた。そのような使用人達に関しては紹介状を書いたり、解雇したりした。

そもそも我が家に仕えていた者達に関する評判はとてつもなく下がっている。だから紹介状を書いたところで次に貴族家で働くことは難しかったりするのだ。その点は申し訳ない気持ちにはなる。とはいえ、使用人達も……あの人への対応は同罪というか、仕える相手にする態度ではなかったので自業自得だとは言えるが。

あの人の噂が出回った当初に自分から別の場所で働き出した使用人に関しては要領がよかったというか、こんな未来を想像していたからこそだろう。

……考えれば考えるほど、私はどれだけ自分の視野が狭かったのかと落ち込んでしまう。もっと早くに行動が出来ていれば、此処まで面倒な事態にはならなかったのにとそう思ってならない。

しかしこんな風に後悔したところでどうしようもない。今は私は出来ることを進めるほかない。

私は領主として慌ただしく働くことになった。その間に私は……あの人の痕跡を調べてみることにした。

確かに血の繋がった家族ではあったけれども、私は二番目の姉であったクレヴァーナ・シンフォイガ……今の名はクレヴァーナ・スラファーとまともに喋ったことなんてなかった。年が離れていたからというのもあるけれども、関心を持っていなかったのは確かだった。

魔術が使えないのならば、そのような態度をされても当たり前だと我が家では思われていた。だから……何一つ関わろうとなんてしなかった。

「……生活感が、あまりないな」

あの人が嫁いで、かなりの年数が経つ。だけどこの……公爵令嬢が暮らすのには適さない部屋はほとんど放置されていた。

狭く、物もほとんどない。

二番目の姉はずっと、与えられたものをそのまま受け取っていただけだった。嫁ぎ先に持っていくものでさえも……ただ家が用意したものを持って行っただけ。だから嫁ぐ前のものが、残されている。

隣国で活躍しているあの人は、ちゃんと自我があるらしい。この屋敷に居た頃は……、それこそきっと嫁ぎ離縁された後も……流されるままだったのではないかと思う。

それが自分の意思で考え、動き、活躍しているなんて……いまだに信じられない気持ちになる。

私はあの人の最近を実際に見たことはない。

だけれども情報は幾らでも入ってくる。我が国の新聞でも、あの人の活躍は大々的に書かれている。

その活躍を見る度に、「この屋敷に居る時に活躍してくれていたら」とか、「どうして引き留められなかったんだ」とかそんな風に言う人はいる。

そのままあの人に我が家が優しくしていれば、理解をしていれば……違ったのではないかと。

そんなわけないのに。

あの人は花にたとえられている。……このロージュン王国では咲き誇ることのなかった花だと。

スラファー国の王弟殿下の元だからこそ、美しく咲き誇ったのだと。

それはその通りだとは思った。寧ろ植物というのは、土の中で栄養を蓄えてからこそ、十分な養分を得てこそ、美しく咲くものだと思う。

ロージュン国での暮らしがおそらく……あの人にとっては栄養を蓄えている期間だったのではないかと。

何か一つでも違えばきっとまた、今の未来にはならなかったはず。

私が幼いころからあの人に関わっていればとか、あの人とどこかで交流を持っていれば……とか、そんなたらればばかりを思考する。

でもきっと何か違えば……二番目の姉が隣国の王弟殿下に会うことがなければこんな風に『知識の花』として活躍することなんてなかったんだろうなとそんな気持ちにはなっている。

そもそもどこかで語られていた二番目の姉が頑張った理由が、『悪評があったから』だと書かれていたのだ。

――悪女として、公爵夫人に相応しくないと言われ、あることないこと噂され、それに踊らされた人たちが行動を起こしたから。

その結果、『王弟の愛する知識の花』として生きるまでになったのだと。

だからこそ、周りに「家族なのになぜ引き留められなかったのか」と言われてもどうしようもないことなのだとそんな風にしか思えない。

なので周りのどうのこうの言う連中のことは放っておこう。もちろん、何かしら対応が必要な時はあるかもしれないけれど。

……図らずも、二番目の姉であるあの人と同じような道を我がシンフォイガ家も歩むことになるのだ。

事実はあるものの、それ以外のことも過剰に噂をされながら……。

後悔はないと言えばうそになる。

ああしていればよかった、こうしていればよかったなんてことは山ほどある。

だけど前に進むしかないので、私は二番目の姉の情報を時折目にしながらも……当主として頑張っていくことになった。

当然、その評判が良くなるまでは長い年月がかかることになった。