軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

過去の私のことと、現在の私の決意 ②

その日は、いつも通りの朝のはずだった。

だけれども明確に、視線や雰囲気が違った。私は違和感を感じていたけれど、出勤した。

――そこも、普段と違った。

そして恐る恐るといった様子で、先ほどの言葉を問いかけられた。

私は驚いてしまった。

じっと見つめてくるゼッピアに、一瞬、逃げ出したい気持ちになった。

でも……私がクレヴァーナ・シンフォイガであった事は変えられない事実。

「本当よ」

これでゼッピアから友達と思われなくなったらどうしようとか、昔のことを知られた今これからどうしようかとか――そういうことが頭の中を駆け巡る。

「そうなのね。分かったわ」

ゼッピアはそう言ったかと思えば、がしっと私の手を掴む。

「クレヴァーナ、一旦、別室に行きましょう。このまま此処にいるよりもその方がいいわ」

「え?」

「ほら、周りが凄い目で見ているでしょう。私は貴方にじっくり話を聞きたいの。館長も呼ぶから、話しましょう」

「え、でも、仕事は……」

「それどころじゃないわ。貴方を守るためにもきちんと対応しなければならないもの」

ゼッピアは驚くことにそう言って、そのまま別室へと私を連れて行く。

「え、ええっと……、ゼッピアは私のことを嫌いになったりしていないの?」

館長を呼びに行こうとしているゼッピアに思わずと言うように声をかける。

「なんでよ?」

「だって、私がクレヴァーナ・シンフォイガだって分かったのに?」

「だからってクレヴァーナはクレヴァーナでしょう。そもそも貴方が悪評だらけのクレヴァーナ・シンフォイガだなんて信じられない! どれだけ周りは見る目がなかったのよ! ああ、もう考えただけで腹が立ってくるわ!」

ゼッピアはそう言って怒った様子を見せている。

そして「館長、呼んでくるから」と言って去っていき、私はゼッピアの態度に驚きしかなかった。

だって、他の職員達は私に対して冷たい目を向けている人が多かった。それは私がクレヴァーナ・シンフォイガであることを認めたから。私がそういう噂があったからこそ、そういう風に思われていたからこそ、私の話なんて聞こうともしていなかった。

私自身がゼッピアのことを信じ切れていなかったのかもしれない……。こんなによくしてもらっていたのに。

もっと早くに自分のことを言っていた方が、良かったのかも……なんて今更ながら思う。

それにしてもこれからどうなるのだろうか。

最悪の場合は働き口を失ってしまう可能性も高いだろう。

私はそれを考えると、心配になった。

そんなことを考えていると、ゼッピアが館長を連れてきた。

「館長……、私はどうなりますか?」

「どうなるとは?」

「だって……ここで働き続けていたらご迷惑をかけてしまいますよね?」

それが心配で、館長が話し出す前にそう問いかけてしまった。館長は笑っていた。

「いえ、私個人としても図書館としても……、貴方のような優秀な方にはいつまでも居て欲しいとは思うわ。だけどそれよりも重要なのは貴方の安全よ」

「……安全、ですか?」

「ええ。私は貴方がクレヴァーナ・シンフォイガであることを知っていたわ。それにカウディオ殿下からも話を聞いているし、採用した後に調べさせてももらったわ。貴方の過去を知った上でも雇う価値があると思って雇っていたのだもの。でも……それよりも優先しなければならないのはクレヴァーナ自身がどうしたいかと、貴方の安全のこと」

私は館長から言われた言葉がよく分かっていなかった。

館長は貴族の出だからこそ、やっぱり私のことを知っていたようだ。

「よく分かっていないという顔をしているわね? 私たちはクレヴァーナが実際にどういう子か知っているから問題ないけれど、世の中にはね、悪評がある相手ならば何をしてもいいと思っているような人もいるのよ? 貴方みたいに綺麗なのに悪評まみれの子なんてそういう連中からしてみれば恰好の的よ」

「そうなの……?」

「ええ。そうよ。特にクレヴァーナみたいな子なら、なおさらだわ。きっと変な連中が沢山寄ってくるわ」

ゼッピアはそんなことを言う。

……故郷にいた頃は、私はそもそも外に全然出なくて、人と関わることもなかった。だから問題がなかったのかもしれない。悪評だらけの存在がいるとそういうことが起こりうるのだろう。

ひとまず私はしばらくの間、安全のためにも自宅待機することになった。時間経過で周りが落ち着けば……ということらしい。その間に対応を進めてくれるらしい。

あとその流れで、ゼッピアに離縁されるまでのことを話した。

「本当に凄い環境にいたわね……。というかそこに残っている娘ちゃんが心配になるわ」

そう言って娘のことを心配してくれていた。

……本当に今の私は、周りに恵まれているなとそう実感した。

――だから、こういう状況下でも不思議と不安が払拭されていった。