軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第72話 カーライルの森

地図を頼りに東へと進んで行き、俺はカーライルの森へと辿り着いた。

シャンテルが言っていた通り、入口付近にはちらほらと冒険者の姿が見える。

そして、冒険者に魔物の討伐を依頼しているであろう木こりの方々も見え、ペイシャの森と違って随分と人の数が多い森だ。

あの冒険者の中に、昨日絡んできた冒険者がいたら面倒なのだが……まぁ気にしても仕方ないか。

入口に陣取っている冒険者なんてブロンズだろうし、絡んできたら軽く捻ってやればいい。

そんな強気な心構えで、俺は堂々とカーライルの森の正面から、森の中へと入って行く。

森の入口付近でうろちょろしていた冒険者の中に、昨日絡んできた冒険者はいなかったようだが、どうやら俺の噂は既に広まっているようで逃げるように去って行った。

全く以て酷い態度だが、絡まれるよりは全然マシだな。

避けられるのはレアルザッドでもそうだったし、もう慣れている。

森の入口付近にも生えているというリザーフの実を探しつつ、俺はカーライルの森へと足を踏み込んだ。

森に入って三十分となるが、未だにリザーフの実らしきものは見つからない。

シャンテルに偽の情報を掴まされたかと勘繰ってしまうが、決めつけるのはまだ早いよな。

……ただそれよりも、魔物の数が尋常じゃない。

入口付近はまだよかったのだが、この辺りから一気に魔物の数が増えてきた。

シャンテルが言っていた通り、ゴブリンにコボルト、たまにラウルフロッグと大した魔物はいないけど、ペイシャの森と比べて数が多すぎる。

……いや森といえば、これぐらい魔物や動物がいるのが普通なのか。

やっぱりペイシャの森は、あの熊型魔物の影響力が高かった可能性が出てきたな。

そんな考察をしながら、俺は道中の魔物を倒して森の奥へと進んで行く。

更に三十分ほど進んだところで、俺はようやくカーライルの森で初めてのリザーフの実を発見した。

紫の実に白い斑点。如何にも毒を持っていそうなこの植物は紛れもなく、リザーフの実だ。

全て採取して鞄の中に入れると、引き続き周囲を探索しながら、俺はどんどんと森の奥へと足を踏み入れていく。

森に入って約三時間。

かなりの数の魔物から襲われつつも、かなりの数のリザーフの実を採ることができた。

入口付近のものは、危険ということで意図的に伐採されていたのかもしれない

それと、シャンテルは分からないと言っていたが、レイゼン草も少なくはあるが見つけることができた。

やっぱり有毒植物図鑑を作ったのが大きく、森のどの場所に自生しやすいかが分かっているだけで、見つける速度が大幅に違う。

とりあえずもう少し奥に進んでから、拠点を作るのに良さそうな場所がないかを探して、拠点作りに移ろうと思っている。

ペイシャの森でも拠点にしていた岩の間や、崖下みたいな雨風が凌げる場所があればいいのだが、この森の立地的には見つかりそうにない。

一から拠点を作ることも視野に入れつつ、俺は森の奥を目指して歩を進めた。

拠点を探し始めてすぐのこと。

ここに来てやけにゴブリンの数が多いと思っていたが、どうやら近くに巣があったようだ。

小さな洞穴のような場所で、蠢くようにゴブリンがその洞穴を行き来しているのが見える。

近づかないようにして離れよう――一瞬、そう頭を過ったのだが、あの洞穴。

俺の探している拠点の立地と完璧に一致している。

「…………潰すか?」

俺はボソリとそう言葉を漏らす。

ここでやらなかったとしても、確実に植物採取の邪魔をしてくるだろうし、何ならすでに邪魔されている。

一人で殲滅できるかを調べるために木の陰に隠れ、ゴブリンの巣に出入りするゴブリンを確認。

通常種のゴブリンが大半で、ゴブリンウォリアーにゴブリンアーチャーが時折混じっている。

それから奥の方には、ホブゴブリンが二匹か……。

洞穴の全てが見えた訳ではないが、この程度の戦力なら大丈夫なはず。

拠点を潰すと決めた俺は、背負っていた鞄を下ろしてから、鋼の剣を引き抜いてゆっくりと近づいていく。

隠れる場所がなくなったところで、俺は一気に飛び出て奇襲をかけた。

まずは、巣の周りにうろちょろしているゴブリンから殲滅を図っていく。

一撃で殺すことを意識し、まずは唐突に現れた俺に対応ができていないゴブリンを、二匹連続で斬り伏せる。

次は唯一の遠距離攻撃持ちであるゴブリンアーチャーだけに狙いを絞り、他のゴブリンを無視し、俺は一直線で洞穴へと飛び込んだ。

通常種のゴブリンと比べてやはり一つ格上の存在なのか、他のゴブリンに目もくれずに飛び込んできた俺に対しても焦る様子はなく、冷静に弓を構えて射ろうとしてきている。

弓の照準は俺の心臓付近。

狙っている場所が分かるなら、あとは放つタイミングさえ見切れれば躱すことは可能。

俺は視線を力が込められている腕の部分だけに集中させる。

指が矢を離すタイミングを見逃さないように、パンパンに張った腕が脱力した瞬間――。

俺はステップを横に踏んで飛んできた矢を躱し、二射目の準備を図ろうとしているゴブリンアーチャーを両断した。

ふっ、と短い息を吐いてから、洞穴に他のゴブリンアーチャーの姿がないかを確認。

……どうやら、ゴブリンアーチャー自体はこの一匹だけのようだ。

ホブゴブリンは先ほど確認できた二匹だけ、ゴブリンウォリアーは洞穴の奥に二匹隠れていて合計五匹いる。

「んガぁ! グアぐガッ! ぐがガ!!」

二匹のホブゴブリンが何やら叫び声をあげ、俺を殺すようゴブリンに命じているようだが、近距離一辺倒のゴブリンが何匹集まったところでもう勝機はない。

襲い掛かってきた三匹のゴブリンを綺麗に斬り伏せ、この巣の主であるホブゴブリンに突っ込んでいく。

ホブゴブリンは、ゴブリンとオークの中間くらいの大きさの魔物。

姿は薄い緑色なこと以外は、ほとんどゴブリンと同じ。

手にはこん棒が持たれていて怪力が自慢のようだが、所詮はゴブリンの中ではって話だ。

動きも遅いため、冷静に振り下ろされるこん棒を避けてから、鋼の剣で心臓部分を突き刺す。

細身の剣故に両断は難しいが、突き刺すことに関しては長けている。

二匹目のホブゴブリンは、足を複数個所刺して動きを止めてから、崩れた体に合わせて眉間に剣を突き刺した。

残るは通常種とゴブリンウォリアーだけだが……。

一瞬にして親玉であるホブゴブリンが倒されたことで、他のゴブリン達は一斉に逃走を図りにかかった。

こうなってしまえば、後はもう作業感覚で倒すことができる。

残りのゴブリンたちも殲滅し、俺はゴブリンの巣を壊滅することに成功した。

「人型の魔物はやっぱり戦いやすいな。……さてと、ゴブリンの死体を片付けてから拠点作りを行うか」

ボソリと独り言をつぶやいてから、俺は拠点作りへと移行する。

元々がゴブリンの巣であっただけに、このまま使っても十分機能しそうな感じはするが、今後も使っていくことを考えたら手を加えておいて損はない。

今、巣を離れているゴブリンが、俺が眠っている間に戻ってくることもあるだろうし、軽い防護柵も作っておきたいな。

今日はもう植物採取を諦め、俺は拠点作りに専念することを決めたのだった。