軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第62話 今後の相談

俺がレアルザッドへと無事に辿り着いた二日後の夜。

予定では今日二人が戻ってくるはずなのだが、夜となった今もまだ帰ってきていない。

段々と心配になってくるが、王都からレアルザッドまでの距離を考えれば明日まではかかってもおかしくない。

そう自分を言い聞かせたところで――ガチャリと部屋の扉が開いた。

「クリス、無事に帰ってきたぜ!」

「良かったです。クリスさんも無事に帰ってこられていたんですね」

部屋に入ってきたのは、荷物を抱えて戻ってきたラルフとヘスター。

…………ふぅー。良かった。

どうやら元気そうだし、何事もなく帰ってこれたみたいだ。

「二人共、無事でよかった。ラルフ、足の方はどうなんだ?」

「バッチリ問題ねぇぜ! さっき抜糸してもらったし、帰りは馬車に揺られて休みながら帰ってこられたしな。後はリハビリしていけば問題なく動けるってブラッドは言ってた」

「それじゃ、まずはしっかり歩けるところまで戻すのが目標だな」

「ちゃんと動けるようになったら、バリバリ働くからコキ使ってくれな」

「ふっ、期待してる」

メラメラとした炎が錯覚で見えるほど、熱くなっているラルフ。

ケチって危ない医者に頼んだが、無事に成功して本当に良かった。

「それでなんですけど、明日からはどうしますか? ラルフはしばらく依頼をこなせないので、私一人になってしまうんですけど……」

「確かにそうだな。まぁヘスターの実力なら、一人でもブロンズランクの依頼ならこなせると思うが……。しばらくは俺とヘスターの二人で依頼をこなしていくか」

「えっ!? 一緒に依頼をこなしてくれるんですか?」

「ああ。パーティとしてではなく、俺とヘスターで各々依頼を受けて指定あり依頼を二ヶ所を回ろう。俺の受けた依頼は俺がメインで戦って、ヘスターはサポートに回る。ヘスターの受けた依頼はヘスターがメインで戦って、俺がサポートに回る。これで問題ないはずだ」

「分かりました! よろしくお願いします!」

ということで、ラルフがしっかり動けるようになるまでは、俺とヘスターの二人で依頼に臨むことに決めた。

ブロンズランクの依頼で金を稼ぐのに最効率であろうはぐれ牛鳥狩りが行えないのは痛いが、魔法を覚えたばかりのヘスターを一人で挑ませる訳にもいかないしな。

「あー、俺も早くバンバン依頼をこなしたい!」

「そう焦るな。手術して治したんだから、順序を踏んで動けるようにしていけ。無理したところで何も良いことないぞ」

「分かってるよ。でも、素振りくらいならやってもいいだろ? 体が疼いて仕方ねぇ」

「足を使わないならいいんじゃないか?」

「そんじゃ、ちょっと行ってくるわ」

「いや、流石に今日は止めておけ。明日からのリハビリの合間にって話だろうが。……それより、二人に伝えておかなければいけない情報がある」

すぐに木剣を振ろうとし始めたラルフを止めてから、改めて二人に座り直させる。

一足先にレアルザッドに戻ってきてからずっと考えていたことを、ここで二人にも伝えることにした。

「なんだよ、改まって」

「……何か悪い情報ですか?」

「二人にとっては悪い情報だな。――実は、王都からレアルザッドへ戻る道中にクラウスの知り合いに襲われた。なんとか傷一つなく逃げることはできたんだが、下手すればここに俺が居ることがクラウスにバレるかもしれない」

「は? クリス襲われたのかよ! それでどうするんだ?」

「一応、レアルザッドに住んでいることはバレていないから、時間には猶予がある。だから、ラルフの怪我が治った段階で拠点を移したいと考えてるんだ」

「えーっと……悪い情報というのは、クリスさんが襲われたことについてでしょうか?」

「いや、レアルザッドを離れることだな。二人にとってはここが生まれ故郷な訳だろ?」

故郷を離れることを強要されてしまうことになる。

知り合いも多いだろうし、慣れ親しんだ街から離れるというのは嫌な話なはず。

「生まれ故郷って言ってもなぁ……。良い思い出なんてほとんどないし、それこそクリスと出会ってからの方が良い思い出が多いぐらいだ」

「私もラルフと同じですね。知り合いと別れるのは少し寂しいですが、別に抵抗なんてありませんよ。心機一転、新しい街でのリスタートもいいと思います」

「……そうか。そう言ってくれると助かる」

「タイミングとしてもバッチリなんじゃないか? パーティとしてちゃんと動くってタイミングだったし、新しい街で新しい生活を始めるにはさ」

「そうだね! 私もいいタイミングだったと思います!」

一切の反対がないのはありがたい。

二人の言う通り、ラルフの足が元に戻るまでに準備を進め、新しい街に移ったところでパーティとして動き出せるようにするのがベスト。

ヘスターの魔導書に、ラルフの怪我の治療。

両方終えて、一息つけそうってタイミングだったが、ここからさらに忙しくなるかもしれないな。

「それじゃ、その方向で動くことになるから頭には入れておいてくれ」

「分かりました」

「了解。それで移る場所はもう決めているのか?」

「ああ、おおよその目途は立てている」

これまた俺本位になってしまうが、移動先は有毒植物の情報が多い場所から選びたいと思っている。

『植物学者オットーの放浪記』に記載されてある、解明できなかった新種の植物が多い森の近くに移りたい。

レイゼン草、ゲンペイ茸、リザーフの実の三種類も発見できるかもしれないし、他の能力を底上げできる植物が見つかる可能性だってある。

その上で栄えている街があればベストなんだが、それはこの期間で探っていくしかない。

「ならいいや。全部クリスに任せるから頼むぜ。俺は自分の足を治すことだけ考える」

「私は相談に乗りますので、いつでも声を掛けてください。調べることとかがあれば、調べますので!」

「ああ、助かる。とりあえず場所が決まり次第、すぐに二人には伝える」

こうして、各々のひとまずの報告を終え、話し合いはお開きとなった。

ラルフがどれくらいで完治するのか分からないが、回復薬も併用していく予定のため、一ヶ月ほどで完治に至ると思う。

この一ヶ月の間でヘスターの面倒を見ながら依頼をこなして金を稼ぎつつ、ペイシャの森に行って三種の植物を採取しまくり、これから向かう目的地決めをやらなければならない。

できればペイシャの森の熊型魔物との決着もつけたいところだが、これはまだ先の話になりそうだな。

怒涛の一ヶ月を覚悟し、俺は明日に備えて眠りについたのだった。