軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日譚 第75話

『ペコペコ』にて、ワイバーンステーキとモーレンドラゴのステーキを食べた翌日の早朝。

昨日の内にボルスさん達とは別れの挨拶を済ませているため、今日はひっそりと出立する。

本当はフェシリアにも色々とお礼を伝えたかったのだが、向こうも向こうで攻略を行っており、時間が合わずに会うことができなかった。

まぁまたイバンの問題が解決次第、エデストルには来ることになるだろうし、その時に改めてお礼を伝えればいいだろう。

それと……昨日は結局、ボルスさんがステーキをご馳走してくれた。

俺達が奢るという話で集まったはずなのだが、予約した段階で既にお金を払ってくれており、俺が支払うことができない状態になっていたのだ。

なんでも見送りの餞別——と言っていたが、元から奢るつもりだったのだろう。

散々世話になったし、流石に今回は奢らせてほしかったのだが……またエデストルに来る際はとびきりのお土産を用意しないといけなさそうだな。

「ラルフ、ヘスター。準備はできているか?」

「もちろん! 昨日の内に済ませてあるから、もういつでも出発できるぜ!」

「私も大丈夫です」

「それじゃ……王都に帰るとしようか」

意外にも長かったお礼参りも、これでひとまず終わりとなる。

お世話になった皆の顔を改めて見ることができたし、新たな出会いも生まれたから非常に有意義で楽しい旅だった。

……ただ、まだ気を抜くことはできない。

最後に出会ったアイスワイバーンを連れて帰るまでがこの旅であり、この旅一番の鬼門になるといっても過言ではない。

トラブルになる可能性が大いにあるからな。

感傷に浸りかけた気持ちを引き締めながら、俺達はエデストルを出てバルバッド山へとやってきた。

【生命感知】で探った限りでは、言いつけておいた場所から移動していなそうではあるが……この目で見てみないと安心はできない。

「あー! あそこの洞窟だ! イバン、元気にしているかな?」

「生命反応はあるし、肉も大量に置いてきたから大丈夫……なはずだ」

急いで洞窟に向かうと、俺達が近づいてきたことに気がついたのか、イバンがひょっこりと洞窟から顔を覗かせた。

パッと見る限りは元気そうだし良かった。

「イバン! 大丈夫だったか?」

「おお、駆け寄ってきてくれてます。やっぱりこうして見ると可愛らしいですね」

前を進んでいたラルフとヘスターに撫でられ、ご満悦といった表情のイバン。

この洞窟に置いていかれたことに対し、拗ねている様子もなさそうだ。

「とりあえず出発する前にご飯だな。大量に肉を買っておいたから食べてくれ」

「おお! こんなにガツガツ食べているってことは、置いておいた肉は全部食べちゃったのかな? イバンは相当な大食漢だな!」

「あっ、スノー。そのお肉は食べちゃ駄目ですよ。スノー用のメロンがありますから」

スノーも肉を食べたそうにしていたところに、すかさずヘスターがメロンを与えた。

イバンは肉、スノーは肉とメロン。

食費がかなりかかりそうだし持ち運べる量にも限度があるから、王都に着くまでにいくつかの街や村を経由して、食材を買わないといけなそうだ。

金に関しては、ダンジョン攻略でかなりの額を貯めることができていたし、昨日の食事もボルスさんが奢ってくれたから心配ない。

……が、途中で街や村に寄らないといけないのが、かなりネックになってきそう。

近づいただけで怖がられることは確定だし、イバンの噂が広まってくれることを願うしかない。

「食べ終わったらすぐに出発しよう。ヘスターは地図で道のりを確認してくれると助かる。できれば人通りが少なくて、道中に街か村があるルート」

「昨日から調べてはいるのですが、人通りの少ないルートとなると街も村もない場所ばかりなんですよね。とりあえず山岳ルートを進もうと思っていますが、この山岳地帯にある村が今も存在しているのかが不安です」

「地図には載っていても、実際に行ってみたらなくなっているパターンもあるのか。それは困るが……かといって公道を進む訳にもいかないし、山岳ルートしかないもんな」

もし村が存在したとしても、イバン用の肉が買えないなんてことも大いに考えられる。

今のうちから狩りで肉の調達をすることも視野に入れつつ、道中で出会った獣や食べれそうな魔物には目を光らせるとしよう。

「スノーがいれば何とかなるでしょ! 山は大得意だし、獣なんかちょちょいのちょいで狩れるよな?」

「アウッ!」

「まぁいれば狩れるだろうけど、いなかった場合はどれだけ凄くても狩れないからな」

出発前から不安な点が多いが肉のストック自体はまだあるし、きっとなんとかなるはず。

何かしらトラブルになったら逃げることも考えつつ、イバンとスノーが食べ終わるのを待ってから、俺達は王都を目指してバルバット山を出発したのだった。