軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日譚 第43話

暴れウルフとの戦闘が開始され、前に出たのはエイミー。

どうやらエイミーは短剣使いらしく、体勢を低くしながら暴れウルフの一匹に突っ込んでいった。

動きは速いが、思っていたほどではないな。

基準がクラウスになっているせいもあるが、想像以下の動きに少しガッカリした気持ちになったその時――。

後方にいたルディがエイミーに魔法を飛ばした。

黄色い玉のような魔法がエイミーにぶつかった瞬間、エイミーが俺の視界からも消え、一瞬で正面にいた暴れウルフを斬り裂いていた。

初撃は緩急で俺も追うことができなかったが、速いと頭で分かれば目で追うことはできる。

速度だけで言うのであれば、1.5倍くらいは速くなっているだろうか。

俺が目で追うことができなかったのに暴れウルフが対応できるはずもなく、あっという間に暴れウルフの群れを討伐してみせた。

期待外れからの、期待以上の速度で殲滅したエイミー。

マイナスからのプラスだったこともあり、非常に良いものを見せてもらった気分だ。

「想像以上に凄かった。これがルディの補助魔法なのか」

「ありがとうございます。ただ、僕にはこれしか取り柄がありませんので、パーティの皆さんに助けられています」

「その魔法を扱えて、自分を卑下すると嫌味に聞こえるぞ。俺は今の魔法を見て、エイミーやイルダがルディのパーティに加わった理由が分かった」

戦闘が単純に楽しそうだったしな。

俺も恵まれたスキルを得た自覚はあるが、ルディの補助魔法も匹敵するものがあると思う。

「ふぅー、お疲れ様です。見るよりも体感する方が凄さが分かりますよ。クリスさんもかけてもらってはどうでしょうか?」

「エイミーもお疲れさん。ルディがいいなら是非かけてもらいたいな」

「もちろん大丈夫ですよ。魔力ならまだまだ余裕がありますので」

「それはありがたい。めちゃくちゃ楽しみだ」

敵がいない状態なのは少し残念だが、中途半端な魔物ならいてもいなくても変わらないしな。

俺は軽くジャンプをして動ける準備を整えてから、ルディに片手で丸のサインを出す。

その瞬間に先ほどと同じ黄色い玉のような魔法が放たれ、俺の体に触れた瞬間に――体が一気に軽くなった。

見ている分ではよく分からなかったが、こうして受けてみると本当に面白い。

羽のように軽くなった体を動かし、縦横無尽にカーライルの森の中を駆ける。

体を扱う感覚が違いすぎて、普通に走るのも大変ではあるが……これはいいな。

ただ効果時間もかなり短いようで、一分もしない内に切れてしまった。

ズシンと体が重く感じ、元の体に戻っただけのはずだがこれまた別の体になった感覚だ。

「やっぱりクリスさんは凄いですね! 動きがエイミーとは大違いです! 最初は走るのですら難しいはずなんですけど、一瞬で対応してしまいましたよ!」

「……悔しいですが、これが才能の差なんですね。私よりももう使いこなしている気さえします」

「そんなことはない。俺は自らを強化するスキルを持っているから、単純に慣れているだけだ。……ただ、本当に凄い魔法だな。実際に受けてみてより凄さが分かった」

性格も良いし、ルディがリーダーを務める限り【翡翠の銃弾】はどんどんと強くなっていくと思う。

正直ルディを引き抜きたいぐらいだが、せっかく築いた関係を壊したくないし引き抜くことはしないが。

「クリスさんに褒められると嬉しいですね! 卑下とかではなく本当に補助魔法しか取り柄がないので、僕はみんなに支えられているだけです!」

「そんなことはないと思うが、まぁルディの性格ならそう思うのか」

「ですから、変わっているイルダやカルビンもルディについていっているんだと思いますよ。もちろん私もです」

「ふっ、本当に良いパーティだな」

「な、なんか恥ずかしいですね! もう依頼の魔物は倒しましたし戻るとしましょう! イルダさんたちは大丈夫ですかね?」

ルディは話を誤魔化すために別パーティの心配をしたが……。

ヘスターがいるから大丈夫だとは思うが、普通に気になりはするな。

「ヘスターがいるから大丈夫だとは思うぞ。イルダやカルビンも変な性格なだけで戦えるんだろ?」

「はい! お二人とも強いですよ!」

「なら、大丈夫だ。ラルフも戦闘の実力だけは間違いないからな」

「なら、心配はいりませんね! 何か問題は起こっていそうですが……」

「それは考えないようにしよう。本当に問題が起こっていたら、全力でヘスターに謝罪だな」

「完全に嫌な役を任せてしまいましたからね。そのお陰で平和に楽しく依頼をこなせましたから、ヘスターさんには感謝しかありません!」

帰りに何か喜びそうなものを買っていこうか。

「なら、早めに戻りましょ……ってあれ? スノーが物欲しげに見てますよ?」

「あうっ!」

「……どうやら、スノーも補助魔法をかけてほしいみたいだな。帰りの道中にでもかけてやってくれるか?」

「もちろんです! それじゃ魔物と会敵したらかけますね!」

喜びで尻尾をブンブンと振っているスノーを見て、三人で朗らかに笑い合う。

こうして俺達は無事にカーライルの森での依頼を達成し、オックスターへと戻った。