軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後日譚 第34話

ラルフが先導し、副ギルド長と共に借家までやってきた。

外観は以前とほとんど変わらないが、変わらないからこそ誰か他の人が住んでいるのだとはっきり分かる。

「めちゃくちゃ懐かしいな! 庭とかも綺麗に手入れされている!」

「庭がしっかりと手入れされているってだけで、今住んでいる【翡翠の銃弾】って冒険者パーティがちゃんとしている人かよく分かるな」

「確かにそうですね。新しく植えられているものもありますし、ガーデニングが好きな方がいるんでしょうか?」

「そんなの直接聞けばいいだろ! 早速ベルを鳴らそうぜ!」

ラルフはそう言うと、間も空けずにすぐベルを鳴らした。

人が出てくるまで少し待っていると、家から出てきたのは俺達と同じ年齢くらいの女性。

綺麗な銀色の髪をした女性で、可愛らしいエプロンを身に着けている。

頭付近に耳があることから――どうやら獣人のようだ。

「んー? 見かけない顔だニャ!」

「どうも、ギルド長です。【翡翠の銃弾】さん達に紹介したい人がいまして、今日はお連れしてきたんです」

「あー! ギルド長だニャ! 地味な顔過ぎて気づかなかったニャ!」

可愛らしい顔であり、少し変わっているが愛嬌のある語尾だが、随分と酷いことを副ギルド長に言い放った獣人の女性。

会話から察するに、やはりこの獣人の女性も【翡翠の銃弾】の一人みたいだ。

「地味だったとしても、流石にそろそろ私の顔は覚えてくださいよ! ……じゃなくて、今日は紹介したい人を連れてきたんです。こちらは以前この家に住んでいた冒険者さんたちでして、私が昔に話したと思うのですが覚えていますか?」

「覚えていないニャ!」

ニコニコと花が咲くような笑顔でそう言い切った獣人の女性。

副ギルド長を大きくため息を吐き、どうやらこの女性に説明するのを諦めた様子。

「イルダさん、ルディさんは中にいますか?」

「いるニャ! 武器の手入れをしているニャ!」

「ちょっと呼んできてください。ルディさんにお話しがあります」

「分かったニャ!」

イルダと呼ばれた獣人の女性は可愛らしく敬礼をしてから、急いで家の中に入っていった。

行動の全てに愛嬌があったことからも、わざとやっていた訳じゃなくて素だったのだろう。

ただ、素だったからこそ副ギルド長が不憫に思える。

「ま、まぁそんな落ち込まなくてもいいと思うぜ! 俺もたまに名前を間違えられるしさ!」

「余計に惨めですので慰めないでください。名前を覚えられないのはいつものことですから慣れています。……というか、ラルフさんは私の名前を憶えていますか?」

「――えっ!? いやいや、副ギルド長は副ギルド長だろ! 俺にとってはそれ以上でもそれ以下でもないぜ!」

慰めたはずが急に矛先が向けられ露骨に焦ったラルフ。

ちなみにだが、俺も副ギルド長の名前が一切出てきていない。

確かマイ……なんとかだったような気がするが、それ以降が一切出てこない。

「ローレンさんだよ。ラルフ、流石に名前を憶えていないのは失礼すぎるから」

ヘスターが訂正したのを聞き、俺もようやく思い出した。

……いや嘘だ。マイなんとかですらなかった時点で、未だにローレンという名前にピンともきていない。

「おおっ、ヘスターさんは覚えていてくれたんですね! それだけ本当に嬉しいです」

「当たり前ですよ。副ギルド長さんには散々お世話になりましたから。クリスさんも覚えていてくれたと思いますよ」

「ああ、もちろんだ。ラルフはちょっとアレだから許してやってくれ」

「おい、クリス! アレって何だよ! アレって!」

「本当ですか! 嬉しいですね。以前は前ギルド長の名前と間違えられましたし、てっきり前ギルドの名前で覚えられていると思いました」

そうだ。

この発言で思い出したが、前ギルド長の名前がマイケルだったんだ。

適当に誤魔化してラルフに全責任を負わせつつ、一人勝手にスッキリしていると……家から誰かが出てきた。

爽やかで清潔感のある若い黒髪で眼鏡をかけた男性。

「あっ、ギルド長さんじゃないですか。イルダが誰か来たって言って出てきたんですけど、ギルド長さんだったんですね」

「ルディさんとバーメインさん、呼び出した申し訳ありませんでした。私が来たことはイルダさんに伝えたんですけどね……」

「そうだったんですか。すいません、イルダはちょっと抜けていますので。それよりも今日はどんな用件でお越しになったんですか? もしかして隣にいる人と何かご関係が?」

「ええ、そうなんです。この家を以前使っていた冒険者の方たちなんですが、ルディさんは覚えていますか?」

「もちろん覚えていますよ! ギルド長さんから何度も話を伺っていますし!」

俺達の紹介を受けた瞬間、ルディの声音が一段高くなった上に大きくなった気がした。

どうやら獣人のイルダとは違い、ルディという人は俺達のことを知っていてくれているらしい。

「覚えてくれていたのは良かったです。イルダさんは一切覚えてくれていなかったので」

「いや、本当にイルダについてはすいません。元々記憶力が悪い上に興味のないことは一切覚えようとしないので」

「ということは……イルダさんの中で、私のことは興味のないことに分類されているんですね」

「副ギルド長のそれはもういいっての! こっちで勝手に自己紹介するぞ! 俺は前にここの家に住んでたラルフ! で、こっちがヘスターで、こいつがリーダーのクリス!」

落ち込んでいる副ギルド長を他所に、自己紹介を始めたラルフ。

俺はラルフが始めた紹介に合わせて軽く会釈をした。

「ラルフさんにヘスターさんにクリスさんですね。よろしくお願いします。僕は今この家に住まわせてもらっている、【翡翠の銃弾】というパーティのリーダーをやっているルディと言います。三人のお話は何度も聞いていたので一度お話したいと思っていたんです。お会いできて本当に良かったですよ」

爽やかな笑顔を見せながら差し出して来たルディの手を握り、握手を交わしていく。

イルダという変わり者の上に立つだけあって、ルディはかなりしっかりした性格のようだ。

とりあえず仲良くできそうで良かったな。