作品タイトル不明
後日譚 第21話
魔法専門店を後にした俺は、予定通り闇市に訪れることに決めた。
『アンダーアイ』の拠点を攻め込んで以来だが、中が一体どんな風になっているのかは分からない。
大規模な戦闘が行われた影響で廃れ始めているのか、それとも変わらず営業し続けているのか。
王国騎士団の介入もあったことだし、少しは鳴りを潜めていると予想していたのだが……闇市の入口には前にも見た門番が立っていた。
門番がいるということは、闇市は変わらず栄えているということ。
前回は無理やり突入した訳だし、顔を覚えられていたら入れてもらえない可能性もある。
あれだけ大量に人がいた訳だし覚えている可能性はほぼゼロに近いが、入場料を払って闇市に金を落とすのも嫌だし侵入するとしよう。
久しぶりのスキルを発動。
【隠密】【消音歩行】を発動させ、見つからないように気配を消しながら近づく。
そして物陰に隠れ、門番が見ていない一瞬の隙を突いて【疾風】で闇市の中に侵入した。
後ろを振り返ったが、二人の門番は俺が通ったことに全く気が付いていない様子。
人数を揃えているだけで、ガバガバな門番で助かるな。
問題なく中に入れたことだし、早速闇市の中を見ていくとしよう。
今回見ようと思っているのは闇市の商品と、無理やり働かされているであろう奴隷達。
それから『アンダーアイ』の拠点も見に行きたい。
何も言わずに出て来ているため、二人に心配をかけないためにも早めに帰りたいからサッと見るだけに留める。
そう心の中で決めてから、栄えている闇市の中心部に向かった。
門番がいたことで勘付いてはいたが、前回訪れた時と変わらない賑わいを見せている。
乱雑に建てられた露店には色々な物が売られており、その値段の安さは目を見張る。
店主も様々で子供が売っていたりもするが、やはり一番目がいくのは初めて訪れた時もいた奴隷の姿。
奴隷のほとんどが獣人族であり、亜人であることからこの制度に対して国も取り締まっていない。
『アンダーアイ』を攻め込んだ時も、王国騎士団は見向きもしなかったからな。
正義感の強そうなアレクサンドラですら、興味を持ってすらいなかったことから、王都にとっては既に根付いている文化なのだと思う。
この光景を見た時に誓ったようにクラウスとの戦いが終わった今、俺はこの奴隷を全て解放するつもりでいる。
今日は変わりないことを確認するためにやってきた。
できることであれば、俺が手を下すことなく解決していてくれれば良かったのだが、そう上手くはいかないのが現実。
数多く存在する獣人族の奴隷達をこの目に焼き付けながら、俺は闇市を練り歩いた。
一時間ほど中心部を歩き大体の事情は把握できたため、そろそろ『アンダーアイ』の元拠点を見に行くとしよう。
ここに関しては王国騎士団が既に片付けてしまったと聞いているため、何か新しいものが見つかるとは思えないが……改めて一度見に来たいと思っていた。
【狂戦士化】を発動していたため、記憶が曖昧な部分もある。
微かに残っている記憶を頼りに、俺は『アンダーアイ』の拠点に向かった。
ラルフとヘスターに任せた建物は外から眺める程度にし、俺がミエルと共に乗り込んだ建物に入る。
【生命感知】と【魔力感知】を発動させたが、当たり前だが生物の気配は一切しない。
王国騎士団の調査は既に終わり、完全な廃墟と化しているようだ。
建物を見て色々と思い出しながら探索し、最後にミルウォークがいた上の階層の一室にやってきた。
他の部屋は想像通り何も残っておらず、残すはこの一室のみ。
何か残っているとしたら、ミルウォークがいたこの部屋だと思う。
他の部屋同様に何も見当たらないが、隅々まで調べていると……不自然に置かれた観葉植物が目に止まる。
この建物内のどこにも観葉植物なんてなかったし、『アンダーアイ』自体が観葉植物とはかけ離れた組織。
違法薬物の元になる植物ならまだしも、本当にただの観葉植物だもんな。
非常に怪しく感じたため、俺はその観葉植物を徹底的に調べることにした。
一番怪しい植木鉢の下には特に何もなく、こうなったら床にぶち撒けてみるか。
すぐに元に戻すことを誓ってから、俺は植木鉢をひっくり返して土を床にぶち撒けた。
「やっぱりあった」
俺は小さく独り言を呟いてから、植木鉢の中に埋まっていたであろう透明の袋を拾う。
その透明の袋の中には鍵が入っていた。
何かを求めてきた訳ではないし何かあればいいな程度で調べたため、もちろんのことこの鍵が何の鍵なのか検討もつかない。
ただ、植木鉢の中に隠してあるということは重要な場所の鍵であるはず。
無駄足で終わらず成果を挙げられた訳だし、そろそろ帰るとしようか。
この鍵については……シャーロットにプレゼントを渡す時にでも聞いてみるとしよう。
ふらっと立ち寄った闇市だったが、想定していた以上に得られるものは大きかった。
人生の目的が失われかけていたところで新たな目標もできたことだし、ゆっくりながらも動き出すとしよう。
そう心の中で決め、俺は『アンダーアイ』のアジトを後にし、二人とスノーが待つ宿屋に帰ったのだった。