作品タイトル不明
後日譚 第5話
結局互いに一言も発しないまま、王都にそびえる王城に辿り着いた。
シャーロットとは何度も会話をしたが、実際に王城に来るのは初めて。
そもそも俺が立ち入っていいのかも分からないが、クラウスがいなくなった今なら入っても何も問題がないはず。
「……ドレークは王城には来たことがあるのか?」
重い沈黙の中、俺はドレークに話を振った。
一度でも来たことがあるのであれば、ドレークに案内にしてもらうのがてっとり早いからな。
「ああ、何度も来たことがあるぞ。ほとんどがクラウスに付いてきたってだけだったが、城の中は大抵把握できているぜ」
「なら案内してくれ。俺は一度も来たことがないから、城のどこに何があるのかさっぱりだ」
「王女のサポートを受けていたのに、王城に一度も来たことがなかったのか?」
「クラウスに警戒されたら終わりだからな。『フォロ・ニーム』で襲ったから分かると思うが確実に手薄なところを攻め込みたかった」
「そういう理由でか。確かにクラウスはお前……クリスを必死に探していたが、戦うとなったら正面からサシで戦っていたと思うぞ」
クラウスについてを聞かされたが、俺は未だにそうは思えない。
既に終わったことだしクラウス本人がもういない以上、この話は全て無駄な会話。
「たらればのことはもういい。とにかく案内してくれ」
「……分かった。どこに行きたいんだ?」
「シャーロットがいる場所もしくは、シャーロットと連絡が取れる人物のところ。案内できるか?」
「王女の部屋は入れないから、執事室に行くのがいいと思う。案内は可能だ」
「なら、よろしく頼む」
そこからは再び無言となり、ドレークの後を追って王城の中に入った。
思っていた以上に兵士の数が多く、大多数がアレクサンドラと同じ王国騎士団の団員。
視線を集めている気がするが、ドレークの顔が知られているようで呼び止められることはないまま、例の執事室とやらに辿り着いた。
「ちょっといいか? 執事長がいれば話を伺いたい」
ノックをしてから扉を開け、部屋に入るなりそう声を出した。
中にいた複数の執事らしき人物が一斉に俺の方を向き、一人の清潔感のある老人が俺の方に歩いてきた。
年齢は六十を超えているだろうが、生命力魔力量共に非常に高い。
俺に対して若干の敵意を含んでおり、今の満身創痍の状態では敵わないぐらいの強さを持っているのが少し怖い。
「私が執事長のセバスです。何か御用でしょうか?」
「王女のシャーロットと話がしたい。話を通してもらえると助かる」
「申し訳ございません。シャーロット様は今王都にいないのです」
綺麗なお辞儀をしてから、淡々とそう答えたセバスと名乗った執事長。
俺が怪しい人物だと悟って嘘を言ったのだろうが、酷く疲れている今の状況で周りくどいことをされるとイラッとくる。
「分かった。なら、王国騎士団三番隊隊長のアレクサンドラを呼んでくれ。こっちなら大丈夫だろう?」
「……かしこまりました。アレクサンドラ様ですね。お呼びしてきますので少々お待ちください」
少々回りくどいが、アレクサンドラからシャーロットに繋ぐのがベスト。
何やら一人の執事に指示を出したセバスと共に、執事室で待つこと約十分――アレクサンドラが部屋に入ってきた。
「あっ! クリスさん!」
「忙しいところ悪いな。ちょっと話があって呼んでしまった」
「構いません! 王城に来たということは――そういうことですよね?」
特に何も伝えていないのに、全てを察してくれたアレクサンドラ。
セバスで一度引っかかったため、ここまで話が分かってくれると女神のように思える。
「ああ、そういうことだ」
「分かりました。すぐに案内させて頂きます! ……セバスさんもお呼びして頂きありがとうございました」
「忙しいところ本当に助かった」
「いえいえ。それでは私は失礼致します」
俺が本当にアレクサンドラの知り合いだったことに、セバスは心底驚いた表情を一瞬見せたが、俺は気づかないフリをして別れた。
激闘後そのまま来たということもあって見た目がアレだし、怪しまない方が不自然だからな。
そんなことを頭に過らせつつ、俺とドレークはアレクサンドラの後を追ってシャーロットの自室を目指した。
部屋は三階にあるようで、執事室のあった一階とは雰囲気が全く別のもののように感じる。
異様な空気感に若干呑まれつつも、綺麗な装飾が施された扉の前で立ち止まる。
どうやらこの部屋がシャーロットの部屋のようで、アレクサンドラはノックをして声を掛け、中からの反応を待った。
「入っていいわよ」
中からシャーロットの返事があったため、扉を開けて中に入る。
いつもの冒険者のような服装ではなく、王女様らしいドレスを着たシャーロットが座っていた。
いつものとギャップで一瞬言葉を失ったが、すぐにシャーロット本人であると認識して服装には一切触れないようにする。
「えっ? クリスじゃない! もう戻ってきたの?」
「ああ、全て終わらせて戻って来た」
「無事っていうことは、クラウスは……?」
「シャーロットが思い浮かんでいる通りだ」
「それは良かった――で言葉は合っている? 何やら浮かない表情に見えるわ」
「ただ疲れているだけだ」
「ラルフやヘスターは無事なの? 姿が見えないけど」
「先に帰って休ませている。本当に死闘だったからな。その代わりと言ったらアレだが、一人違う人物を連れて来た」
俺はシャーロットにそう告げてから、外で待機させていたドレークを部屋の中へと招き入れる。
中に入ってきたドレークの顔を見て、シャーロットは酷く驚いた表情を見せたが、ドレークに敵意がないことを悟ると一度頷いて話を聞く体勢を整えた。