軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第418話 圧倒

二人の死体が転がっており、少し離れた場所に瀕死の司教が二人。

司教にトドメを刺すかどうかも迷ったが、色々なことの証人として生かしておくことに決めた。

司教は恐らく枢機卿に無理やり連れ出されただけだろうし、この状況となった今ならペラペラと情報を話してくれるはず。

【粘糸操作】でぐるぐる巻きにした後、【硬質化】で粘糸を硬くさせて身動きが取れないようにしてから、更に奥を目指して進むことに決めた。

「思っていたよりも楽に倒すことができたな! 王国騎士団の副団長を名乗っていたからもっと強いのかと思ったが、正直拍子抜けしたぜ!」

「それだけ俺達が強くなっている証明だろう。まぁスノーが生物相手には無類の強さを誇るからな。近距離戦を得意とする剣士タイプはまず勝てない」

「俺もスノーと一対一で戦ったら勝つ自信がない! 攻撃を防いでも冷気ダメージを受けるってズルすぎるからな!」

「ラルフ自身は副団長の攻撃を受けてどうだったんだ?」

「さっきも言ったけど、こんなもんかってのが正直な感想! 『アンダーアイ』の拠点で構成員と戦った時も拍子抜けしたし、クリスの言う通り俺も強くなっているかもしれない!」

「だから、ずっとそう言っているだろ。模擬戦を何度も行っている俺だから分かるんだよ」

本当に忖度なしでラルフは強い。

守備に全特化している時はスキルを全開で使用しても防がれるし、【黒霧】の闇打ちも【粘糸操作】と【硬質化】のコンビも余裕で対応される。

なんなら【広域化】の範囲も体で覚えられており、毒での範囲攻撃すらも効かない。

様々な人がラルフを褒めちぎっていたが、守備だけを見たら本物の天才だと俺も思っている。

「いまいち実感がないんだよな! クリスが言ってる模擬戦だって、俺の勝率は三割がいいところ。大半はクリスの勝ちだし、自慢にしか聞こえないんだよ!」

「それは俺が強いからだろ。俺相手に三割勝てることを自慢してもらいたいぐらいだ」

「クリスは……相変わらず凄い自信だな! 俺は意外と色々考えちまうからそこまで割り切れないわ」

自分自身に自信がなければ、クラウスに挑まないからな。

奥へと進みながらラルフとそんな会話をしつつ、ヘスターにも話を振る。

「ヘスターは手ごたえどうだった? 【ツイストエアレイド】は会心の一発だったと思ったが」

「私も良い場面で最高の魔法を放てたと思います。手ごたえも完璧でしたからね」

「ラルフと違って、ヘスターは自信満々なままか。俺がタンクを担っていたとはいえ、三対一でも魔法の打ち合いを制していたしな」

「ええ。三人ともかなり使い手でしたし、枢機卿に至っては指折りの魔法使いだったと思います。そんな相手に打ちあえたのは良かったと思います。色々と私が恵まれていましたけど」

「つうか、俺も自信なくした訳じゃねぇぞ! クリスほど圧倒的な自信を持てないってだけで、ドレークに勝つ自信は満々だ!」

ラルフの訂正に軽く笑いながら、非常に雰囲気の良い状態で俺達は『フォロ・ニーム』を進めている。

一つ懸念点があるとすれば、予想通り奥に進むにつれてエリファスに操られている元人間の強さが増しているのが分かること。

戦っても絶対に負けないと断言できるが、道中の無駄な戦闘を如何に減らせるかが肝になってくるこの場面で、極力戦いたくはないぐらいの強さは持っている。

それに迷路のように狭かった通路も道幅が広くなり始めており、回避が難しくなってきた。

闘技場に近づいている証拠でもあるのだが、まだクラウス達の生命反応を捉えられていないということは道はもう少しだけ長い。

スノーと俺で慎重に索敵しながら、造りも段々と牢獄のような感じからメインフロアのようになっていくの感じつつ、先にいるクラウス達の背中を追って前へと進んで行く。

枢機卿や副団長と戦闘を行った場所から、数十体のアンデッドと戦闘を行いながら約三十分ほどを更に進むと、周囲がようやく闘技場らしくなってきた。

ここまで闘技者達の居住エリアが延々と続いていたのだが、控え室のような場所や様々な武器が置かれた武器庫。

それから闘技場で死んだ闘技者を処理する場所なんてのも見える。

「長年使われていないのは分かるけど、異様に生々しくないか? 来る前までは闘技場にちょっと憧れの気持ちがあったけど、なんか色々と怖すぎるわ!」

死体処理場を見て、ラルフがそんな一言を発したのだが……。

かくいう俺は既に死体処理場から意識が外れており、この先にいるクラウスの反応を僅かに感じ取っていた。

【生命感知】や【魔力感知】には引っかかっていないが、確実にもうすぐ近くにいる。

「立ち止まってどうした? 何か感じ取ったのか?」

「ああ、すぐ近くにクラウスがいる。この通路の先だな」

「……いよいよですか。スノーも何か感じ取っているみたいですね」

先ほどと同じように毛を逆立てており、スノーもクラウス達の反応を捉えたようだ。

もっと道中での戦闘を覚悟していたが、消耗が少ない状態で挑むことができそうだな。

ここまで一切緊張していなかったのだが、クラウスの反応を感じ取った瞬間に体が震えた。

ただ恐怖からくるものではなく、気持ちの昂りからくる武者震い。

ここまで随分と長かったようにも思えるし、あっという間な気もする。

震える体を抑えるために両腕を叩き、気合いを入れたところで再び歩みを進める。

更に通路を進んだところで、【生命反応】でもクラウス達の反応を捉えることに成功したのだが……。

その生命反応から、二手に分かれていることが判明した。

「ラルフ、ヘスター。もう一度止まってくれるか? 正面と左手側で反応が分かれている」

「反応が分かれている? ってことは、クラウス達は別々に行動しているってことか?」

「そうだと思う。左手側からはエリファスの反応と複数の魔力反応。正面からはクラウスとドレークの反応を感じる」

「てっきり一緒に行動しているとばかり思ってた! ここからどう動くんだ? 先にエリファスを仕留めにいった方が確実じゃないか?」

ラルフがそんな提案をしてきたが、俺自身もかなり迷っている。

数的有利の状況を作り出して一気に叩くのが正解なのか、それとも二手に分かれて行動するのが正解なのか。

「……クリスさん、エリファスは私に任せてくれませんか? 元々その予定でしたし、私一人で左側に進んだ先にいるエリファスを倒します」

ラルフの提案から間髪入れずにヘスターがそう宣言した。

俺は一瞬だけ迷ったが、王都を発つ前からエリファスはヘスターに任せると決めていた。

エリファスはヘスターに任せよう。

「分かった。エリファスはヘスターに任せた。恐らくアンデッドを率いているだろうから、スノーと共に向かってくれ。基本的にアンデッドはスノーに任せ、ヘスターがエリファスを相手取れば負けることはない」

「分かりました。――次に顔を合わせる時は笑顔で会いましょうね」

「ああ。絶対に負けるなよ」

「はい。超エリート様に雑草魂を見せつけてきます!」

胸をトンッと一つ叩いてから、ヘスターはスノーと共に左手側へと進んで行った。

残された俺とラルフも、クラウスとドレークがいる闘技場を目指して前へと進むことにした。