軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第39話 報酬

はぐれ牛鳥の討伐から約半日。

魔物の気配を感じては遠回りをしていたため、帰還までに相当な時間を要してしまったが、無事にはぐれ牛鳥を丸々持ち帰ることに成功した。

血まみれの男がはぐれ牛鳥を背負う姿はかなり異様な光景だっただろうが、持ち運ぶのに時間を要したため日が落ち、暗くなっていたお陰で最低限の悪目立ちは避けることができた。

入門検査も突破し、俺はそのままの足で依頼されている精肉店へと足を運ぶ。

「いらっしゃい。すまないねぇ、入口は向こう――ってうおっ! な、なんだその魔物は!」

「はぐれ牛鳥討伐の依頼を受けた冒険者だ。もったいないから丸々持ってきたんだよ。中へ入れてくれ」

「い、依頼を受けてくれた冒険者か。扉を開けたら角の生えた牛の顔が飛び込んできたからビックリしちまったぜ!」

俺は店主に中へと招かれ、指示通り肉を吊るすフックにはぐれ牛鳥を引っ掛けた。

吊るされたはぐれ牛鳥を見て、我ながら良く一人で持ち運んだなと心の中で自賛する。

「それにしてもかなりの大きさだな。とりあえずこれで体を拭いてくれ」

「ありがとう」

渡された濡れタオルで、全身にこびりついたはぐれ牛鳥の血を拭きとる。

本当に重労働だったな。体がかなり重く感じる。

「血抜きも完璧で、内臓も綺麗に取り出されてるな。そのお陰で鮮度も落ちていない……これは今までで一番のはぐれ牛鳥かもしれねぇな」

「そこまでいうのか?」

「そもそも丸々持ち込む奴なんてそうそういないからな。その上で処理を完璧にやる奴なんざぁ、冒険者には一人もいない」

そういうものなのか。

確かに腹を掻っ捌いて内臓を取り出すと、今の俺のように持ち運ぶのに汚れてしまう。

金のために全て度外視で丸々持ち込む奴なんか、俺ぐらいしかいないって訳か。

「それじゃ高値で買い取ってくれるのか?」

「そうだな。期待してくれて構わねぇ。ちょっと切り分けてみるから待っててくれ。……おーい、ナサニエル! この冒険者に何か肉焼いてやってくれ」

「いいのか? 金払わないぞ」

「構わねぇよ。手間賃だと思ってくれ。んじゃ、切り分けて査定したら呼ぶから、肉食って待っててくれ」

俺は店主が解体するのを待つ間、何故か店員が焼いてくれた肉を振舞ってもらった。

それも安い肉ではなく、霜の降っている如何にも高そうな肉。

ラルフとヘスターの二人にも食わせて反応が見てみたいなんて思いつつ、焼いてくれた肉を全て平らげたところで、丁度切り分け終えたのか店主が俺を呼んだ。

「肉美味かった。ありがとう」

「さっきも言ったが、上物持ってきてくれた礼だから気にすんな。それより査定額なんだが、金貨五枚ってところでどうだ?」

「金貨五枚!? そんなに貰えるのか? 依頼を見た限りでは最高で金貨三枚だったはずだが」

「これは状態が良い上にサイズも大きいからな。金貨五枚までなら払える」

「そういうことなら是非売らせてくれ」

「よしっ! 交渉成立だな! それじゃ金の方は、明日冒険者ギルドに渡しておくから受け取ってくれ。依頼報告も明日にならねぇと出来ないから気をつけろよ」

「ああ、今回は助かった。次回もあったらよろしく頼む」

「こちらこそよろしく頼むぜ。限度を超えない限りは買い取らせてもらうからよ」

こうして、破格の金貨五枚という報酬を得ることができた。

通常のブロンズクエストが銀貨四枚だから、今回のクエスト報酬は十二倍以上だ。

情報集めも含めて大変だったとはいえ、依頼自体は丸一日で達成できているからな。

指定あり依頼なんかよりも、圧倒的に効率が良い。

一日で半月分の金を稼ぐことのできた俺は、血生臭い体の不快感も忘れて、上機嫌で宿屋へと戻ったのだった。