軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第382話 プラウズ

背後からの一撃は手ごたえ十分。

ただ背中に刃が触れた瞬間に前へと転がるように避けたのか、両断とまではいかなかった。

それでも深々と斬り裂いたため、思うように体を動かせないはず。

【黒霧】の状態でもまだプラウズを見失っていないため、追撃をかけようとしたのだが……。

「【豪吸吐】」

プラウズは【黒霧】ごと大きく息を吸い込み、その後【ウインドボール】のようなものを口から飛ばしてきた。

風属性攻撃は見えづらいという特徴があるのだが、【黒霧】を吸い込んだもののためハッキリと風の球体を確認することができ、攻撃自体は楽に躱すことができた。

ただ部屋を覆っていた【黒霧】は晴れてしまい、目を血走らせて怒った様子のプラウズが俺を睨みつけている姿が見える。

背中の傷からは大量の血が流れているためダメージはかなり大きいと思うのだが、表情を窺う限りはまだ戦意を失ってはいないようだ。

「……不意打ちとはよくも舐めた真似をしてくれたなァ! ぐっちゃぐちゃに潰して球体にしてやる!」

「まだ喋る余裕があるのは驚いたな」

「殺す。絶対に殺してやる!」

メリケンを外し、手を広げて熊のようなポーズを取ったプラウズ。

もう一度、【黒霧】を使って不意打ちを狙ってもいいのだが、もう真正面からでも余裕で倒すことができるはずだ。

ヴァンデッタテインを構え、魔力を流し込んでいく。

俺の魔力を吸ったことでルーンが起動し、ヴァンデッタテインの刀身は真っ赤に染め上がった。

背中の傷のせいもあってか、プラウズは一歩も動こうとはせずに、目を瞑ったまま両腕を上げて俺が近づくのをジッと待っている。

【粘糸操作】に【硬質化】の合わせ技で離れた位置から攻撃し、深手を負っているプラウズを無理やり動かすというのが一番安全な方法なのは分かっているが……。

体力の問題もあるし、ちまちまとした戦いはこちらとしても避けたい。

正面から向かって行って、プラウズの攻撃が届く前に斬ってしまえばおしまいだ。

動かないプラウズにゆっくりと近づいていき、目標地点に入った瞬間に思い切り踏み込み――【脚力強化】と【疾風】を発動。

「【領域】【金剛】」

俺のスキルの発動と同タイミングでプラウズも何やらスキルを発動をさせ、プラウズの周辺に球状のオーラのようなものが張られた。

一瞬だけ警戒し、攻撃を止めるか迷ったが……そのまま突っ込むことに決める。

踏み込んだ足に全ての力を注ぎ、爆発させるように俺はプラウズの下へと突っ込んでいった。

俺が球状のオーラの中に踏み込んだ瞬間にプラウズの目が開き、捕まえようと右腕を振り下ろしてきた。

球体のオーラの影響があるのかプラウズの動きが異様に速く、先にプラウズの腕が俺の肩を掴んだ。

――が、俺は掴まれたことも構わずにそのまま剣を振り下ろす。

プラウズは俺の一撃をガードしようと、振り下ろさなかった左腕でガードをしたが、俺が握っている剣はただの剣ではなくヴァンデッタテイン。

丸太のように太く、鉄のような筋肉の鎧を纏っている左腕だが……感触すらないままスッとプラウズの左腕を斬り落とすと、そのまま勢いが止まることなく左肩から腰までをぶった斬った。

背中を斬った時とは違って胴と下半身が完全に切り離されており、体部分は前のめりに下半身は後ろへと倒れながら大量の血が噴き出る。

目の前にいた俺にももちろん浴びるようにかかったが、既に血だらけだったこともあり特に気にはならない。

「……お、お前は…………何、者なんだ?」

「俺は――って、もう答える必要もないか」

冥土の土産に質問に答えてやろうと思ったのだが、質問が終わると同時に掴んでいた手の力が緩み息絶えたため、俺は途中で言葉を呑み込んだ。

流石に幹部なだけあって相当な力を持っていたが、ミルウォークとの戦闘後だったからか温く感じたな。

ただ、肩を掴まれずに勢いそのままに殴られてたらダメージを負っていただろうし、あの【領域】というスキルはかなり気になるところ。

倒した幹部とミルウォークを全てオンガニールの宿主としたい気持ちに駆られるが、こんな目立った状態でそんなことはできないし、そもそも近くにオンガニールがない。

特殊スキルだったはずと自分に諦めをつけさせてから、俺は死んだプラウズから目線を切ってアレクサンドラの下へと向かう。

血だらけの鎧を身に纏った状態で、片膝をついたまま動かないアレクサンドラ。

その動かなさから力尽きたのかとも思ったが、どうやらまだ息はあるようだ。

「大丈夫か?」

「……ああ。……ギルモア、たすかった」

俺の問いに、ギリギリ聞こえるぐらいのか細い声量で返事をした。

どうやら俺と認識することができておらず、目も虚ろで今にも気を失いそうな感じだな。

アレクサンドラはポーションをぶっかけてから外へ運び出すとして、血だらけで倒れているブルースとギルモアの生存確認も一応行うか。

一人は俺を殺しにかかってきた奴で、もう一人は糞生意気な態度を取ってきた奴。

この二人は死んでいて何とも思わないのだが、念のため息をしているかを確認してみると……僅かながらにまだ息があるようだ。

気に入らなくとも見殺しにするほど落ちぶれてはいないため、三人まとめて外へ運び出すとしよう。

「俺はこの三人を外へと運び出す。……ミエルはどうする?」

「え? 私も一緒に外へついて行く――って、何よその顔! ……分かってるわよ。残党の捕縛を手伝ってくるわよ!」

別に何も言っていないのだが、何かを察したのかそう怒鳴りながら叫んだミエル。

ミエルに限ってはまだまだ余力がありそうだし、残っている敵の中で力のあるものはもういない。

ラルフとヘスターもそろそろ駆けつけてくるだろうし、これで『アンダーアイ』の拠点は全て潰すことができたと言っても過言ではないだろう。

そう思った瞬間にドッと力が抜ける感覚に襲われるが、反応自体はないがまだ手を下していない幹部もいる訳だし、外に出るまではまだ油断できない。

【身体能力向上】のスキルだけ発動し、王国騎士団の瀕死の三人を担ぎ上げた俺は、ミエルを建物に残して一人建物の外へと出たのだった。