軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第374話 策

部屋の中が真っ暗になった瞬間に、仕掛けた罠を一気に発動させていく。

まずは口に含んだ【毒液】を飲み干し、次に張り巡らせた粘糸を【硬質化】によって硬く変化させた。

これで部屋の中は【黒霧】で暗闇の中、張り巡らせた硬質化された糸で身動きが取れない状態。

飲み込んだ【毒液】によって、ミルウォークの体が徐々に蝕まれていくため俺は時間を稼ぐにつれてどんどんと有利になっていく。

「またこの暗闇かよ! スキルではなさそうだし、煙幕か何かか?」

音で位置がバレるとかの考えが頭にないのか、構わず叫んでいるミルウォーク。

スキルではないと断言しているのは……俺がスキル名を発さずにスキルを使っているからだろうか。

アルヤジさんからスキルの扱いを習って良かったと、強敵と戦う度に強く感じる。

それと気になるのが、ここまでミルウォークはスキルを口に出して言っていない。

ミルウォークのこの思考から考えると、ここまでスキルを使わずに戦っているということになるのだが……どうもそんな感じがしないんだよな。

暗闇での対応もそうだが、カウンターの我慢比べの時の動きが分かりやすく速度が上昇していた。

緩急を使い分けている可能性もなくはないが、ミルウォークも俺と同じでスキル名を発さずにスキルを扱うことができる人間だと思う。

ただこれは練習したからとかではなく、天才が故に最初からスキル名を発することなくスキルを扱えていた。

だからこそ、自分のみ使えると錯覚してのこの発言ではないかと俺は考えている。

「おーい、無視してねぇでなんとか言えや! 俺の声は聞こえてるんだろ?」

構わず喋り続けているミルウォークだが、まだこの部屋の中で起こったことに気がついていないのか?

【毒液】に関していえば、体調の変化ぐらいは既に効果として表れていてもおかしくないはずなんだがな。

もしかすると薬がキマりすぎていて、細かな体調の変化ぐらいじゃ気づかないのか?

そうだとすると非常に面倒くさいのだが、気にしたところで分からないことは考えるだけ無駄。

俺は張り巡らせた硬質化させた糸を搔い潜りながら、背後に回るように移動を開始した。

ミルウォークはこの暗闇の中でも目が利いている可能性が高いのだが、その事実を確定させるためにも……もう一度だけ闇に乗じて攻撃を仕掛ける。

【隠密】と【消音歩行】を駆使しながら、素早く背後へと回り込んだ。

まだミルウォークは俺がいた場所を向いた状態で構えており、回り込まれたことに気が付いていないように見える。

そのまま音を立てないように近づき、間合いに入った瞬間に斬りかかったのだが――。

「何度やっても無駄だぜ! この手は俺に通用しねぇんだわ!」

待っていたかのように俺の攻撃を躱すと、即座に返しで俺の脇腹を蹴り込んできた。

タイミング的には完璧な合わせで、しっかりと蹴り込めていれば俺にダメージを与えられていただろうが……。

ミルウォークの蹴りは俺が張り巡らせた硬質化させた糸に阻まれ、俺の元まで届かなかった。

その隙に俺は一度距離を取り、先ほどの位置に戻りながらミエルに指示を飛ばす。

「ミエル、風魔法を頼む」

今の一連の攻防でミルウォークに【黒霧】が一切通用しないことが判明したため、自分で自分の【黒霧】を晴らすことにした。

どういう原理かは分からないが、ミルウォークは【黒霧】が覆っているこの中でも完璧に目が見えている。

となってくると【黒霧】はミルウォークに有利にしか働かない上に、ミエルの視界が無駄に奪うだけの邪魔なものとなる。

俺の視界は奪われている訳だし、こっちには不利にしか働かないからな。

「上に放つからね。【ウインドボール】」

ミエルの放った風魔法により、【黒霧】は天井付近まで吹き上げられたあと綺麗に霧散した。

初めて斬りかかった時から思っていたが、ミルウォークとはとことん相性が悪い。

戦闘スタイルもそうだが、感覚で動き才能だけでゴリ押してくる厄介さ。

「あれ、もう暗いのはいいのかよ! ちょろちょろしてねぇで正面から戦おうや!」

少年のような無垢な笑顔を浮かべて余裕そうにしているミルウォーク。

蹴り込んできた右足は糸によって軽く裂けているが、大したダメージでもなさそう。

張り巡らせた糸の仕組みもバレたら即効で対応してきそうだし、【毒液】ぐらいしか残りの策はないのだが、その【毒液】も効いている様子がないからな……。

搦め手が通用しないのであれば、真っ向勝負するしか手がない。

スキルも一気に発動させているため、体力の消費がかなり激しいし、頼みの毒が効かないとなると、早めにケリをつけなければドンドンと不利になっていく。

策も講じているし、隙があれば殺しにかかるつもりで動いているのに一向に攻めきれない。

まだまともに斬り合えていなければ、俺の攻撃を綺麗に浴びせることすらできていないこの状況。

数多の修羅場を乗り越えてきたし、エデストルではバハムートらしき魔物も倒した。

圧倒的な自信をつけたことで、ミルウォークを心の何処かで舐めていたが……この男は本当に強い。

対クラウスとしてスキルを駆使して戦おうとしたが、才能でゴリ押してくるミルウォークには力でゴリ押すしか方法がないかもしれないな。

張り巡らせた硬質化させた糸を華麗な身のこなしで避けつつ、距離を詰めてくるミルウォークを見て覚悟を決めた俺は……。

なりふり構わず、力でねじ伏せることを決めた。